中間省略登記
事実上の禁止で税負担増 不動産取引にも影響



 オンライン化を進める新不動産登記法が今春施行されたが、法務省が「中間省略登記」の運用を事実上禁止したため、不動産取引に影響が出ている。

 登記をするメリットは、取り消し後の第三者に対抗力を持ち、その権利が保全される点にある。
 中間省略登記は、例えば、売買などでA→B→Cと所有権が移る場合、Bへの移転を省略して、AからCへ直接、所有権移転の登記をする方法だ。
 こうした方法は、AとBが夫婦だったり親会社・子会社だったりするなど、強い信頼関係にある場合に行われてきた。AがBに無断で第三者に売却するような不正行為を働く心配はない。登記は元来、任意が原則だ。そこで登記に伴って課税される登録免許税などの費用を節約するため、Bが登記しないまま転売するのが慣行だった。
 民法は、権利の変動は当事者の意思に基づいて決める「意思主義」を採っている。判例でも、三者の合意を条件に、中間省略登記ができるとしている。
 法務省は、「中間省略登記は厳密には実態を正確に表していないので、これまでも認めていない」としながらも、登記官は申請書類が整えば形式審査でそのまま受理してきた。従来は、登記義務者(所有権を手放す者)と権利者(新たな所有者)を、書類に表示するだけだった。
 しかし、106年ぶりに全面改正された新法は「登記原因証明情報」の添付を義務づけた。これに伴って法務省は、売り主や買い主など詳しい内容を明示させる運用に変えた。このため、真の売り主ではないAから、直接Cへ所有権移転の申請をすれば、「虚偽申請」とされる。
 同省民事局は「この措置で登記の精度が向上し、紛争予防にもなる」と意義を強調する。
 日本司法書士連合会は、法務省の指導を受けて、このほど「中間省略と知りつつ申請すれば、職責を問われる」と会員に厳しい内容の通達を出した。
 だが、最高裁判事等を歴任した登記法の権威、香川保一弁護士は「従来の方法は、三者の合意があれば、排除されるべきではない。そもそも登記所が売買実態を知る必要もない」と法務省の運用を疑問視している。
 今回の運用変更で、登記を必要としない所有者にも半ば登記が強制され、権利保全という法的サービスを受けないのに登録免許税を負担する形になる。
 不動産取引ではすでに影響が出ている。都内では、建売住宅販売業者が建築途中で突然、登記に伴う登録免許税の支払いを求められて販売に支障が生じ、金融機関からの追加融資が棚上げされた例がある。
 登録免許税は、不動産取引の活性化のため、税率が引き下げられ、売買による土地所有権の移転登記は現在1%だが、いずれ2%に戻される。土地評価額が大幅に引き上げられていることもあって、同税の負担は軽くはない。税収規模は2003年度で約6000億円だったが、今回の措置で年数百億円の増税になると、大手不動産は試算している。
 実態に即した登記制度を目指すなら、登記を義務づける抜本改正や、登記と課税を分離して考えるなど、さらなる検討が必要だ。手続きをあいまいにしたままでは、混乱を生むだけである。


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