不動産FP講座
〜とっておきの銀行対処法〜

Q.私が管理を依頼されている不動産のオーナーが、借入をしている銀行から追加担保を求められました。今までに一度も返済が滞ったことがなかったので、いったいどうしてなのかと当方に理由を尋ねられました。こういうことはよくあることなのでしょうか。また、追加担保を逃れる方法があれば教えてください。

A.私は、某県のある地方銀行に8年間勤めた元銀行マンです。企業融資、個人住宅ローン、それから融資の回収もやりました。銀行が行け行けでやる姿勢と、それがおかしくなってきたときの回収など、すべてを経験しました。今回はその経験に基づいた銀行対処法をお伝えします。


銀行の担保評価とは

 平成14年6月に金融庁の金融検査マニュアルができました。これは平成16年2月に改訂されましたが、この影響はいまだに大きいと思います。当然、銀行はお金を貸したい事業体です。ところが、国の制度にのっとって貸せば貸すほど赤字になるという状態が起こっているので、仕方がなく貸し渋りをしたり、貸し剥がしをしたりという事態になっています。その他いろいろな要因はありますが、簡単にいえばそうなります。
 では、銀行はどうして貸し渋りや貸し剥がしを行うかを説明します。路線価で計算すると、1,000万円の価値がある土地を、銀行が担保評価するときの目安を示します。

 土地の場合・・・1,000万円×80%×100/120=評価額
 建物の場合・・・1,000万円×60%×100/120=評価額

 銀行は1,000万円の評価が下がったときに担保が足りなくならないように、リスクヘッジをしています。この範囲内で下がった場合、高くてもこのくらいだろうとリスクを考えて、初めから下げた評価をしているのです。この範囲より下がった場合には、銀行マンは追加で土地を担保に入れろといってきます。銀行は一定のリスクを見て、下がってもいいように担保を取ったはずなのに、また追加で入れろという話をしてくるのです。これも道理から考えればおかしいので、追加担保に応じる必要はないのです。本来であれば、銀行は評価を間違ったというふうに言わなければなりません。このような評価をしているので、食い違いが出てくるのでしょう。


実効金利を計算してみましょう

 最近、銀行側の要求には金利を上げさせろというものがあります。既存の借入金の金利を0.5%上げさせてほしいと平気で言ってきます。銀行は営業にノルマを与えて交渉させているのです。銀行マンはサラリーマンですから、ノルマをこなすために必死で追いかけます。
 では、「金利を上げさせてください」と言われたときに、どうすればいいでしょうか。実は「銀行が金利を上げさせろ」と言ってこなくなるノウハウがあります。
 そのためにまず覚えていただきたいことがあります。実効金利です。決算書から簡単に計算できますので、ぜひ自分の会社の計算をしてみてください。

 [公式]借入金金利×(借入額+預金額)/借入額=実効金利

 これは銀行がすべての取引先に対して出している数字です。例えば、2%の金利でお金を借りてくれる会社は銀行を2%儲けさせてくれているとは銀行は見ません。預金も預かっていますが、預金は次の会社に貸付ができる原資になります。それを貸付に回したら預かった預金がいくら儲けさせてくれているか、という計算も加味して計算するのがこの数字です。融資金利は2%ですが、実効金利を計算すると5%とか8%という会社もたくさん出てきます。なかには10%を超える会社もあると思います。ということは、預金も一緒にしている会社というのは、実際には2%ではなくて、8%銀行に儲けさせていると言えるのです。
 銀行は貸付金の金利だけを見て、今2%の金利を2.5%に上げさせてくれといってきます。その場合は、ウチの実効金利はいくつになっているんだと、銀行マンに聞いてみてください。ただし、聞く前に自分の決算書から計算しておいて、ウチは8%ぐらいだろいうということは知っておいてください。銀行マンは社長の口から実効金利と言われると、「何でこの人は実効金利を知っているのだろう」と驚き、それだけで「この社長は手強いぞ」という印象を持つことになるわけです。「ウチは実効金利8%であんたの所に儲けさせてあげているんだから0.5%金利を上げるとは何事だ」と言ってください。そうすると、銀行マンはたいてい帰ります。なぜかというと、そいうふうにつっぱねられた場合は無理するなというマニュアルがあるからです。


銀行取引約定書の差し替えは要注意

 銀行取引約定書には、返済できなくなって延滞したら、銀行はこういうことをあなたの会社に対してやる権利があります、という銀行の権利が書いてあります。旧取引約定書には、「債務の保全を必要とする事由が生じたら、債務の期限の利益を失う」ということが書いてあります。期限の金利というのは5年返済の融資を借りたら5年間は返済猶予があります、ということです。期限の金利を失うということは、明日すぐ全部返しなさいということなのです。「債務保全を必要とする相当の事由が生じたとき」に銀行が判断して紀元の利益を失って、皆様に全額返してくださいと言っていいですよ、ということです。古い約定書には曖昧な書き方の文章しかありません。「銀行が必要としたとき」「相当な事由が生じたとき」などの書き方が多いのです。
 それを新しい約定書に差し替えるとどうなるかを紹介します。例えば、借入金返済ができなくなったというとき、以前の様々な条件も実はドサクサまぎれに書いてあるのですが、「金利は銀行の都合で変更できる」と書いてあるとか、「何時でも預金と借入金を相殺して構わない」とか、また「相続預金はどの借り入れの返済に充てても構わない」となり、銀行が勝手に相殺してしまいます。
 実は、このような事例はあちこちで起こっています。古い約定書そのままだったら、こういうことはできなかったのです。新しい約定書に差し替えて、契約文書として「相殺していい」「相続預金と借入金を相殺していい」とうたっているので、銀行がいろいろとできるようになるのです。金利も、「上げさせてくれ」と言われても、古い約定書であれば、駄目だといったら、それで通っていたのですが、新しい約定書では、銀行の都合で変更していいと書いてあるのでうから、「契約でうたっていますので上げさせていただきます」ということになります。
 今までにこうした取引約定書の差し替えの要求がなかったとしても、いつか必ずきます。どこの銀行も営業担当者にノルマを与えてやっています。担当者が来たときに、「いや、ウチは古いままでいいよ」と断りましょう。今のところは恐らくサインをしなくても済むはずです。いずれは担当者が変わるかもしれません。こんな知識を付けたうえで、銀行に対処していただきたいと思います。


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