政府 「第三者のためにする契約」を推奨

不動産取得税も不要に

改革会議答申案文「費用の低減ニーズに応える」

内閣府規制改革・民間開放推進会議・最終答申案文の要旨(登記制度の運用改善・閣議決定対象部分)

 04年の不動産登記法の改正により、不動産の所有権の移転登記に際し登記原因証明情報を提供することが必須のものとされたため、中間省略登記が行われることはなくなった。
 しかし、所有権の登記の申請は民法上の義務とはなっておらず、また、ABCと順次売買したときに、三者の合意がある場合には、最高裁判例においても「A→C」への移転の登記請求権が認められている。多くの場合Bが登記をするときにはその費用を転売価格に上乗せしているため、Cの費用負担が増える。
 第三者のためにする契約など、一定の類型の契約により実体上も「A→C」と直接所有権が移転した場合には、現在の制度の下においても「A→C」と直接移転登記を申請できる。もっとも、「中間省略登記的だ」との理由から、Bに所有権移転をしないといけないのではないかとの疑義が生じるなど、現場の混乱も少なからず見受けられる。
 そこで、当会議は、不動産登記法改正前と実質的に同様の不動産登記の形態を実現し、現場の取引費用の低減ニーズに応えるとともに、不動産の流動化、土地の有効利用を促進する観点から、不動産登記制度を所管する法務省との間で、「第三者のためにする売買契約の移転登記」「買主の地位を譲渡した場合の移転登記」の各申請の可否につき、具体的な登記原因証明情報を明示した上で照会し可能である旨を確認した。
 ついては、現場における取扱について、誤解や不一致が生じないよう、各登記所や日本司法書士会連合会、不動産取引の関連団体を通じて、関係者に対して上記の照会回答の内容を周知すべきある。

優れた代替契約 広く活用を望む

福井秀夫・規制改革・民間開放推進会議専門委員(政策研究大学院大学教授)の話

 本来なら中間省略登記の申請を法務省が正面から受理すべきである。今年度の措置としては中間省略登記の代替契約の活用を中心に据え、実質的な問題解決を優先させた。引き続き中間省略登記の根本的な問題については検討していくことになる。ただ、第三者のためにする契約は、実害がないだけではく、不動産取得税が中間者にかからない点で、中間省略登記以上の実利がある。中間省略登記よりも優れた方式ともいえる。ひょうたんから駒のようなところもあるが、今回の騒ぎで、余分な課税を脱法的ではなく極めて合法的に節約できる方法が開発されたということだ。広く活用活用すれば不動産の流動化や、土地の有効利用が進む。住宅・土地政策の観点から、極めて好ましい成果であると思う。

第三者のためにする契約

<解説> 第三者のためにする契約を活用する取引は、2つの契約を組み合わせて行う。取引の実体は、売買契約を2回繰り返し、所有権と登記は、最初の売主から最後の買主に移転させるというシンプルなもの。所有権と登記以外の関係は基本的に通常の転売と同じ。
 例えば、次のような特約を付けて取引する。
 第1の売買では、AからBが不動産を購入する際に、「買主Bの指定する者に代金全額の支払いを条件として所有権を移転する」という特約を付ける(登記原因証明情報の書式参照)。後日、B自身を指定して買主自らが取得してもよい。
 第2の契約では、売買契約書に、「BはCに対し取得義務を負わない旨」「所有権の移転は、所有名義人Aから直接Cに移転する方法による旨」を特約として定める。
 そして、Bが、第1の売買の所有権の移転先にCを指定する。BがAに代金全額を支払った後、CがAに対して、所有権を取得するという意思表示(「受益の意思表示」という)をしたときにCが実際に所有権を取得する。
 Bは、あらかじめCの受益の意思表示を受ける委任状をAからもらっておけば、BがCから受益の意思表示を代理して受けたときに、所有権が移転する。
 法務省の見解では、BC間の関係は、実体上は不動産の売買契約ではなく、民法上の「無名契約」であるとされている。このように解釈すれば宅建業法の規制はかからず、BのCに対する重要事項説明義務はないことになる。内閣府も法務省に従い、そのように見ている。この立場でも、Bが宅建業者の場合は、通常の売買に準じて任意に重要事項の説明をすることが望ましい。
 しかし、BC間の関係を不動産の売買と見れば業法の規制がかかり重説義務が発生するが、他人物売買の規制の点で巍巍が出る。
 この点、技巧的ではあるが解釈論として、第三者のためにする契約で、買主が自らを指名すれば買主自身が取得可能であるため、取得する契約を締結している状態にあるといえ、宅建業法上、自ら売主となって自己の所有に属しない不動産の売買契約を締結できるといえないこともない。他人物売買の売主が所有権をいったん取得しなければならないという規定も宅建業法にはない。従って、売主の取得義務を免除して、現所有者から直接移転させる特約を宅建業法上適法と見ることも可能だ。


登記原因証明情報
1.登記の目的 所有権移転
2.登記の原因 平成18年11月1日 売買
3.当事者 権利者 A市B町1丁目2番3号
(丙) 丙 野 太 郎
義務者 C市D町2丁目3番4号
(甲) 甲 山 一 郎
5(1)の売買契約の買主 E市F町3丁目4番5号
(乙) 乙 川 花 子
4.不動産の表示 所 在   X市Y町Z丁目
地 番   7番9
地 目   宅地
地 積   123.45平方メートル
5.登記の原因となる事実または法律行為
(1)甲は、乙との間で、平成18年10月1日、その所有する上記不動産(以下
「本件不動産」という。)を売り渡す旨の契約を締結した。
(2)(1)の売買契約には、「乙は、売買代金全額の支払いまでに本件不動産の所有権の移転先となる者を指名するものとし、甲は、本件不動産の所有権を乙の指定する者に対し乙の指定および売買代金全額の支払いを条件として直接移転することとする」旨の所有権の移転先および移転時期に関する特約が付されている。
(3)所有権の移転先の指定
  平成18年11月1日、乙は、本件不動産の所有権の移転先として丙を指定した。
(4)受益の意思表示
  平成18年11月1日、丙は甲に対し、本件不動産の所有権の移転を受ける旨の意思表示をした。
(5)平成18年11月1日、乙は、甲に対し、(1)の売買代金全額を支払い、甲はこれを受領した。
(6)よって、本件不動産の所有権は、平成18年11月1日、甲から丙に移転した。
平成18年11月5日 ○○法務局●●出張所 御中
上記登記原因のとおり相違ありません。
権利者 A市B町1丁目2番3号
(丙) 丙 野 太 郎  印
義務者 C市D町2丁目3番4号
(甲) 甲 山 一 郎  印
5(1)の売買契約の買主 E市F町3丁目4番5号
(乙) 乙 川 花 子  印
第三者のためにする契約の登記原因証明情報。規制改革会議から、この内容で公文書により法務省に照会する。掲載した書式は、法務省の事前承認を得たもの。



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