中間省略登記を実現する「直接移転売買」

〜第三者のためにする契約を用いた登記〜

弁護士 吉田 修平 氏


 中間省略登記を実質的に行う方法が、政府の規制改革で公認された。注意しなければならないのは、従来と同じ方法が認められたわけではないということだ。単に売買を2回しただけではできない。「直接移転登記」という特殊な売買を行うことになる。「特約条項」にどのような記載をしたら登記申請が可能になり、今まで同様に宅建業法上適法に取引できるのだろうか。中間省略登記を公認させるために、政府のアドバイザーを務めた弁護士・吉田修平氏に、この取引について、詳しい解説を加えてもらう。


 このたび、内閣府規制改革・民間開放推進会議と法務省との間で、従来の中間省略登記と同様の登記申請ができる方法があることが確認された。「第三者のためにする契約」により、権利を最終取得者に直接移転させる売買契約がそれだ。
そこで、通常目にすることの少ない「第三者のためにする契約」を用いた申請について、基本的な内容を整理し、宅建業者がこの方式を用いた場合の契約内容や特約の付け方・書式などについて、検討してみたい。

諾約者から移転 要約者がカナメ

 第三者のためにする契約とは、契約の当事者が、自己の名において結んだ契約により、第三者に直接権利を取得させることを内容とする契約のことをいう。
例えば、不動産の売主Aと買主Bとの間で、Aに対してBが売買代金を支払う債務を負い、Aがその対価として不動産を移転する債務を直接Cに対して負担する場合などである。
 この場合のAを諾約者、Bを要約者といい、第三者であるCを受益者という。

2つの契約あり 補償と対価関係

 第三者が権利を取得する関係を実質的にみると、二重の原因となる関係がある。第一は、諾約者(A)と要約者(B)との関係(Aに対してBが不動産の売買代金を支払うこと)であり、これを「補償関係」という。第二は、要約者(B)と受益者(C)との関係が(Bが自ら不動産の移転を受けずにCに取得させる理由に当たるものであり、売買や贈与の履行・金銭債権の取得など様々であろう)であり、これを「対価関係」という。
 BC間の対価関係はAB間の契約の内容とならず、従って、その欠如・瑕疵(錯誤・詐欺・強迫)などは、AB間の契約の効力に影響しない。

売買契約などのバリエーション

 「第三者のためにする契約」は、独立した契約ではなく、基本契約である売買契約などの一部が、第三者の権利取得に向けられているに過ぎず、この第三者に権利を取得させることに関する部分を「第三者約款」という。
 従って、@契約は要約者(B)と諾約者(A)が自己の名において行うのであり、Bが第三者(C)の代理人となるのではない。
 A第三者(C)は、諾約者(A)に対する権利を取得するのであり、単に利益を得るだけではない。
 B第三者(C)が取得する権利は債権に限らず、所有権などの物権でもよい。

第三者の指定は後日でもOK

@ 諾約者(A)と要約者(B)との間に有効な契約(例・売買)が成立しなければならない。
A 直接第三者(C)に権利(例・所有権)を取得させる趣旨が契約の内容とされなければならない(民法537条1項)。
B 第三者(C)は、必ずしも契約締結の時に現存することを要しない(最判昭37.6.26)。胎児や成立前の法人のためにする契約も有効である。第三者はいまだ特定していなくても、特定し得るものであれば有効である(大判大7.11.5)。

受益の意思表示 権利取得に必要

@ 第三者の地位
 第三者の権利は、債務者(諾約者)に対して契約による利益を享受する意思(受益の意思表示)を表示したときに発生する(民法537条2項)。第三者はAB間の契約の当事者ではない。
A 要約者の地位
 要約者(B)は、諾約者(A)に対して、第三者(C)に対する債務を履行するよう請求する権利を有する。
B 諾約者の地位
 契約の債務者として、債務の履行をする義務を負うが、第三者(C)に対して履行する。



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