短賃保護廃止・今国会成立へ
〜「占有屋」排除で経済効果8千億円〜


一般借家人への説明必須

 短期賃貸借保護の廃止などを盛り込んだ民法の一部改正案はH15年5月13日、衆議院本会議で趣旨説明が行われ、法務委員会での本格審議に移った。民主党なども賛成しているため、今国会での成立が見込まれている。短賃保護は競売で物件が落札された後も、短期(3年以内の賃貸借契約)に限って契約残存期間は競落人に対して借家権や、敷金返還請求権を認めるというもの。バブル崩壊後、これを悪用して競売手続開始直前に短期賃貸借契約で入居し、落札者に法外な立退き料を要求するいわゆる占有屋が横行、不良債権処理を阻害していることから廃止することになった。しかし、善良な借家人も保護されなくなるため、契約期間が残っているにもかかわらず、立ち退きを迫られるケースも考えられる

競売期間短縮化で
早期立ち退き懸念拡大

 占有屋の排除などで競売制度を適正化することによる経済効果は毎年約8600億円と推測されている。学者などで構成する短期賃貸借研究会が推計した。
 それによると、占有屋などに支払う立退き料は物件市場価格の3割程度が相場、これまでの賃借権付競売物件の割合などから約5000億円と推計している。さらに賃借権の有無に関する調査費用が約2000億円、占有屋などの妨害による競売期間の長期化に伴う不動産の非有効利用分が約1600億円となっている。不良債権処理の加速が求められているだけに担保不動産の有効活用を促す競売制度の適正化が急がれることは確かだ。
 ただ、短賃制度の廃止により占有屋ではない一般の善良な賃借人も保護されなくなることを懸念する声が上がっている。競売は差押えから落札まで1年以上かかるため、期間2年の通常の借家契約なら落札時点で残余期間が残っていることはまずないというのがこれまでの常識だった。
 しかし、専門家によると「最近は競売手続きもスピード化されていて早いと10ヶ月程度で落札者が決まる」という。
 その場合だと、アパートなどの借家契約直後に競売手続きが開始されたとすると、競落人決定後も残存契約期間が1年近く残っているということが十分ありうる。現行だとその残余期間は保護されるため賃借権や敷金の返還請求を競落人に主張することができる。ところが、短新制度廃止後は3ヶ月の猶予期間が過ぎるとそうした主張ができなくなる。
 こうした懸念に対し、善良な借家人なら、競落人がすぐに追い出すことは考えられないという見方もある。しかし、最近の競売市場に詳しい専門家によると「そう、安心してもいられない」という。
 「競落人が自社の社宅として活用することもあれば、いま人気のマンスリーマンション、さらには同伴ホテルへの改築を計画していることもある」からだ。当然そうしたケースでは善良な借家人が退去を求められることがある。
 競売市場には最近さまざまな事業者が参入してきて土地活用のニーズが多様化してきているため油断はできない。
 とある専門家は、次のように語っている。
 「宅建業者としては、法を熟知していない善良な借家人に対し、抵当権が実行(差押え→競売→競落人決定)されると起こり得る事を想定し、当所の賃貸借契約時点で説明すべきである。占有屋が排除されることで今後は競売期間がさらに短縮かされる可能性も高い。」
 宅建業法上の重要事項説明義務としては、「従来通り抵当権設定の有無で足りる」との見解が今のところ一般的だが、「仲介業者としての説明責任は逃れられない。消費者契約法上も仲介業者は事業者ではないが、責任は問われる」と指摘している。



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