改正鑑定評価基準 始動
証券化不動産、詳細に 〜投資家の信頼確保へ〜

 不動産証券化市場の急速な進展を受けて、証券化対象不動産の鑑定評価のあり方についての考え方を示した「改正不動産鑑定評価基準」が7月、施行した。2002年(平成14年)の鑑定評価基準改正により、証券化不動産の鑑定評価に関する基準的考え方が位置づけられたが、その後の証券化実務の進展などを踏まえて06年8月から不動産鑑定評価部会での審議を再開、改正に至ったものだ。証券化関連業務に従事する不動産会社社員などにとって、不動産投資などを行う際の判断材料として、新基準による鑑定評価は極めて重要だ。更に、投資家の信頼を確保するものとしても注目されるところだ。

 不動産鑑定評価基準の大改正が行われた02年ごろから、不動産証券化市場ではJリートが急速に発展。同時に、建築物、設備などに関する専門家が行う証券化対象不動産の状況に関する調査報告書であるエンジニアリング・レポート(ER)の利用の動きが活発化した。
 こうした流れの中、不動産証券化市場の関係者や投資家に対して、利益相反の回避や取引の公平性を示す上で、不動産鑑定評価の果たす割合が増大。
 その結果、鑑定評価の担い手である不動産鑑定士にとっては、市場関係者やエンジニアリング・レポートを作成する専門家との連携の必要性や鑑定評価書における説明責任などが強く要請されることとなった。
 いわば、投資家に対して、鑑定評価報告書を通じ、リスクを認識させることにより、結果として投資家リスクを軽減することが求められているということになる。
 今回の改正ではこれを受けた形で、不動産鑑定評価基準に「各論第3章」そ新設。不動産証券化に伴う部分を1章にまとめ、統一的な対応を行う「基準」とした。
 改正の重要点は次の4点に集約される。
@証券化対象不動産として鑑定評価を行う適用範囲の明確化
Aエンジニアリング・レポートの活用
BDCF法(Discounted Cash Flow法)の精緻化
C収益費用項目の統一
 このうち、「エンジニアリング・レポートの取り扱いと不動産鑑定士が行う調査」につては、証券化対象不動産鑑定評価にあたって、不動産鑑定士は依頼者に対し、鑑定評価に必要なエンジニアリング・レポートの提出を求め、その内容を分析・判断し活用することが明記されている。
 また、鑑定評価におけるエンジニアリング・レポートの活用にあたっては、不動産鑑定士が主体的に責任を持って判断するとしている。
 エンジニアリング・レポートの提出がない場合や内容が不十分と判断する場合には、不動産鑑定士による調査などを実施し、内容が適切と判断した理由を鑑定評価報告書に記載する。
 一方、連続する複数期間に発生する純収益および復帰価格を発生時期に応じて現在価値に割り引いて合計する収益還元法の一手法・DCF法の適用についても新基準に明記。
 証券化対象不動産の収益価格を求めるにあたってはDCF法を適用することや鑑定評価報告書の記載で、賃料などの利益やプロパティマネジメントフィーなどの費用の額といったDCF法に活用した数値などの妥協性の判断根拠や積算内訳、DCF法の適用過程や相互の整合性を明確化することが示されている。
 更に、不動産鑑定によりばらつきのあったDCF法の収益費用項目の統一と項目の定義を明確化する。
 不動産証券化の関連業者の間からは、「鑑定評価に今後求められることは、評価のスピードだろう。精緻化した鑑定評価に加えて、証券化市場の迅速さに対応していくことがより求められてくるのではないか」という声が聞かれる。
 また、「鑑定評価基準というものがこれまで以上に時代に即したものにしていくという意味で、これまで以上に不動産鑑定士の力量が証券化市場で試されるのではないか」といった意見も聞かれる。


株式会社フジヤ
〒520−0046
滋賀県大津市長等2丁目3−28
TEL 077-525-2233 FAX 077-523-5392