商品化するノウハウ生かせ
〜競売市場はビジネス機会〜


 バブル崩壊により不良債権が急増し、民事再生、会社更生、破産、不動産の証券化、バルクセールなど多くの選択肢の中で競売手続も不良債権処理の大きな役割を担い、多くの物件が競売市場に流通しています。
 そこで、これから競売物件を購入していこうという不動産業者の方々の参考のために、競売制度とは何かについて概観します。


(1)3点セット


 現況調査報告書とは執行官が作成するもので、差し押さえ物件の物的な現況と占有状況、そのほか買い受けの参考となる事項(例えば境界が不明確であるということ)などが記載され、物件の概況を知るうえにおいて重要な報告書です。
 評価書とは評価人が作成するもので、現況調査報告書に記載された事実に基づき作成された評価書です。従って、現況調査報告書記載の事実と評価の前提となった事実とは原則として一致しますし、物件の公法上の規制など重要な部分の情報が記載されます。
 物件明細書は執行裁判所が作成します。売却により成立する法定地上権の概要、買受人が負担することになる他人の権利、物件の占有状況等に関する特記事項、そのほか買い受けの参考となる事項などが記載されています。
 つまり、以上の3点セットによって、占有者、占有権原、物件の概要、評価の過程などを必ず閲覧し、どのような物件であるかを理解したうえで購入することが賢明です。
 なお、この3点セットは各地方裁判所の記録閲覧室で直接閲覧することができますし、ホームページアドレス (http://bit.sikkou.jp/)にアクセスしても見ることができます。


(2)競売制度とは


 債務の任意弁済がなされないとき、抵当権あるいは債務名義によって差し押さえ物件を強制的に売却し、売却代金を配当してほしいという申立(競売申立)に基づき、「3点セット」の作成を経て競売市場で公開入札によって売却され、売却代金を配当して終了するという一連の手続きが競売制度です。
 競売物件の特徴は、一般市場の取引とは異なり、所有者の意志に基づかない強制売却ですから、所有者の協力を期待することはできません。買受人は自らの手で強制的立ち退き(引渡し命令の申立)、実測などを行わなければなりません。
 それに、代金は一括弁済であることなどエンドユーザーが一般市場で購入する場合と異なり、購入者の負担が大きいのも特徴です。
 換言すると、競売物件は一般市場で流通している「完成された商品」ではなく、「半製品」「仕掛品」といえます。だからこそ、商品として完成させることのできる知識と経験、交渉力、経済力を併せ持つ専門業者が競売市場とエンドユーザーの間に介在する必要性と合理的理由があり、そこに専門家としてのビジネスが誕生する土壌が存在するといえましょう。
 従って、最低売却価額は競売物件を専門業者が買い取り、商品化してエンドユーザーに転売して利益が見込める「卸値」を指標として定めているのです。


(3)制度改正の動き


 最低売却価額制度は債権回収機能、私有財産制保障の観点から最低売却価額以下での売却は許さないとする制度ですが、最近では売却率の向上を目的として売却基準価額に改め、売却基準価額を20%下回る価額であっても売却を認める制度へと改正されようとしています。
 最低売却価額は地価公示、地価調査基準地価格などに代表される正常価格を基準とし、そこから、競売市場特有の減価要因に基づく競売市場修正を行って求めています。硬直的な最低売却価額からより柔軟な売却基準価額へと制度改正されることによって、より買いやすい制度へと生まれ変わることが予想されます。その意味で競売市場のビジネスチャンスは広がるといえましょう。



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