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さっちゃんの作文               さちの生い立ち この4年間を書きました

                                             小学4年 5組   まるきさちこ


 私はテリアと何かの雑種です。私が産まれてまだ3ヶ月の時、東寺の北門で兄弟4匹それぞれ新たらしい飼主にもらわれていきました。私の新しい飼主はそこに露店を出したばかりの新米骨董屋さんでした。
 眼を真っ赤にしている元の飼い主からドックフードの小袋を受け取りながら、そのおやッさんは「いつでも会いたぁなったら、露店においでや。毎月つれてきているしな」と声をかけていました。私は離れ離れになる寂しさと秋風の冷たさでおかみさんの懐にただじーとうずくましていました。
 次の日、おかみさんが「この子なぁ、サチにしようか」と眠た眼で、ぼそっとつぶやきました。おやっさんは「わしもおんなじサチにしようとおもってたんや、みようやなぁ」という偶然で、私の名前はとうの昔からきまっていたとも感じています。 「サチの名前はなぁ、これから幸せな一生をおくれるようにという意味でつけたんやで、英語で言うたらハッピーや」と今でも、私の頭をなでながら、お客さんに同じことを何回もいうています。
 サッちゃんのお店は一口にいえば、みたまんまのガラクタそれも二流のガラばかり。本当に儲かっているのか?ちょっと心配。でも楽しそうにやっているから大丈夫。
 なんやかんやで、もう4年になります。私はこう見えても水泳、山登りは得意でおやっさんのあとについてどこでも行きます。そりゃあ、合わすのがしんどいくらいです。猿を追いかけて崖のてっぺんまで一気に駆け登ることもあります。「コウッー、コウッー」と猿のなき声を聞けば頭の上をきょろ、きょろさせながら野生の血が騒ぎます。川にいけばカラスやサギのとまっているのを見れば、全力疾走で川の中まで追いかけて一直線。ジャブ、ジャブ、ジャブ。獲物はいまだかってあらへんけど努力はかってほしいといつも思っています。
 露店の店番年季がはいり、ようやく人間の言葉と性格も少なからず理解できるようになり、落ち着きと色気がでてきました。もう引き綱のお世話になることもないほど成長してきました。向こう三軒両隣、時々たのまれもしないのに、店番のつもりで座って愛想をするときもあります。おやっさんも「最近は楽になった。ちょっとたのむで」とよその骨董屋さんと話しこみにいきますが、やっぱり一匹では心細くて、とことこと後を追っていくことになります。
 私が4年間に露店を休んだのは一回だけ、少し乳腺がはれて病院で診てもらった時ぐらい。それでもおやっさんは連れていくつもりでした。さすがにおやっさんの息子が怒って「かわいそうや、やめといたり」ととめました。私はおやっさんについていくつもりでしたが、結局お休みをさせてもらいました。
弘法さん、天神さん、がらくた市と毎月お供をすると、おやっさんの顔は忘れても、私の顔は少しずつ覚えて貰ってさっちゃん」と声がかかるとおもわず振りかえり「ああ、いつもの人や」とありがたくて耳がさがる思いです。これからも、おやっさんともどもよろしくね。
おしまい

また書きます



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