黄檗宗慧日山永明寺HP 
 

檗 僧 遺 偈 集

 
 

黄檗僧遺偈 索引
   僧名(五十音順) 
あ~お 隠元隆琦慧極道明 
か~こ  
さ~そ 千呆性侒即非如一 
た~と 鉄牛道機鉄眼道光
は~ほ 梅嶺道雪 
や~わ 龍渓性潜
 

〔注〕 僧侶の配列は、死亡年次順である。

 
 


☆ 準世代・塔頭萬松院開山、萬松派祖 (元妙心寺住持)
  〔諡号〕大宗正統禅師
  臨済正伝第34世

 
龍谿性潜(りょうけいしょうせん)(1602~1670・世寿69才)

  
 

三十年前恨未消

幾回受窟爛藤条

今晨怒気向人


    喝一喝

却倒胥江八月潮



三十年前恨み未だ消せず

幾回
(たび)か窟を受く爛藤条

今晨怒気人に向かって
(は)
      喝一喝

却倒す胥江
(しょうこう)八月の潮

 
〔大意〕
  30年前の恨みは消そうと想っても今だに消せない
  どれ程屈辱を受けた事だろうか、まさに藤蔓が絡み合うような事だった
  今朝改めてその怒りを人々にぶちまけよう  喝 また喝
  入り江に寄せ来る八月の波も衲の怒りに呼応して逆巻いているワイ

〔注〕 すさまじい遺偈である。 この気迫が黄檗山萬福寺の造営を可能ならしめたといえる。
    「30年前の恨み」 が何を指すものかは明らかにされてはいない。 
    一般的には、寛永6(1629)年の紫衣事件に関係した龍渓禅師の師が流罪に処せられたことを指しているのではとする説が多い。 それは、この事件に関与した龍渓自身もその後不遇な目に遭っているからである。
    一方、言句だけを追うと解釈を誤るとして、 「30年前の恨み」 とは、往時の吾が国禅界の乱れた状況全般を指すとの説もある。


 


 
 
 
☆ 黄檗宗大本山萬福寺開山
  〔徽号〕大光普照国師
  〔諡号〕仏慈広鑑国師・径山首出国師・覚性円明国師・
      真空大師・華光大師
  臨済正伝第32世

 隠元隆琦
(いんげんりゅうき) (1592~1673・世寿82才)

  
 

西来即栗振雄風

幻出檗山不宰功

今日身心倶放下

頓超法界一真空




西来の即栗
(しつりつ)雄風を振う

檗山を幻出して功を宰せず

今日身心倶
(ともに)に放下して

頓に法界を超え一真空


〔大意〕
    中国から携えてきた杖を自在に使い臨済正宗の教えを説いていたら
    この日本にも黄檗山を開くことが出来たが、それは小衲だけの力ではない
    今日 身も心も放り出してしまおう
    まさに禅宗だの仏教だのという法界をこえ とらわれのない空の世界にひとっ飛びだ


〔注〕 【即栗】楖慄のこと。 禅僧が持つ拄杖をさす。


   
 

☆ 黄檗山準世代
  塔頭瑞光院・同宝惠院開山、広寿派祖
  臨済正伝第33世

 即非如一(そくひによいつ)(1616~1671・世寿56才)

 

生如是

死如是

坐断生死關

触破没巴鼻

 喝一喝


 

 
生 是(かく)の如し

死 是(かく)の如し

生死の關を坐断し

触破し巴鼻を没す

喝一喝
〔大意〕 
    生とはこのようなものだ
    死とはこのようなものだ
    生死に関などあろうはずかないのだ
    わからなければ鼻をへし折ってくれようか  喝また喝   


 
    

     
 

☆ 塔頭宝蔵院開基、紫雲派宝蔵下祖 並瑞龍寺開山
  〔諡号〕寳蔵國師
  臨済正伝第34世

 
鉄眼道光(てつげんどうこう)(1630~1682・世寿53才)

 

七転八倒五十三年

妄談般若罪犯彌天

優游華蔵海

踏破水中天

 

 
七転八倒すること五十三年

妄りに般若を談じ    
罪犯
(ざいぼん)天に彌(わた)る 

華蔵海を優游して


水中の天を踏破す

〔大意〕
    53年の教化活動はまさに七転八倒であった
    不立文字の禅宗で、経論を妄りに論じた罪は天にも及ぶほどだ
    しかし、大蔵経の開刻を成し得た今は蓮華の香りが満ちる香水の世界を優遊して
    その水中の天を踏破する気持ちだ


 
 
 
 

☆ 塔頭長松院開山、萬寿派長松下祖
  〔諡号〕大慈普應禅師
  臨済正伝第34世

 鉄牛道機(てつぎゅうどうき)(1628~1700・世寿73才)
 

殺父殺母七十三年

呵仏罵祖罪犯弥天

要知畢竟行李処

葉山石窟鉄牛眠

(一喝)

 

 
父を殺し母を殺して七十三年

仏を呵
(か)し祖を罵って
罪犯
(ざいぼん) 天に弥(わた)

知るを要す 畢竟 行李
(あんり)の処

葉山
(ようざん)石窟 鉄牛眠る

(一喝) 

〔大意〕 
     父を殺し母をも殺す思いで「智」も「情」も捨て去り73年が過ぎた
    仏をどなりつけ祖師をののしる思いで、自在に生き抜いたがその罪は天にも及ぼう
    知らねばならないのは詰まるところ人は何処に活かんとするかと言うことだ
    葉室山の石窟に鉄牛は眠っているぞ 知りたけりゃここに来い 喝

〔注〕  【葉山】葉室山浄住寺(京都市西京区山田開き町)のこと。 


  
 
 


 
☆ 黄檗山第6代、塔頭瑞光院開山
  臨済正
第34世

  千呆性侒(せんがいしようあん)(1636~1705・世寿70才)


来不居東土

去不住西天

坐断去来相

笑破威音前

 

来るも東土に居らず

去るも西天に住まわず

坐断す去来の相

笑破
(しょうは)す威音の前


 
〔大意〕 
    来たからと言ってこの東の国に居たわけではない
    去るからと言ってこの西側の国のどこかに住まうわけではない
    来るとか去る、あるいは東西という言葉全てを断ちきってしまったのだ
    ただ本来の真面目に立ち帰り笑い飛ばすだけだ

〔注〕 【威音前】 威音以前の意。 威音王仏出現以前の状態、即ち一切の差別がない世界、本来の真面目をいう。

     
 
 



 

 




 
 

☆ 東林院第2代
  臨済正伝第34世 

 
梅嶺道雪(ばいれいどうせつ)(1641~1717・世寿77才)

 
 

七十又七年

而今唱寂滅

不念乾屎


説甚弥陀仏



七十又七年

今寂滅を唱う

乾屎撅を念ぜず

甚だ弥陀仏をとけり

〔大意〕
    70年と7年
    今も 寂滅をといている
    つまらぬ事は思わず
    甚だ仏の心を説いてきた




 

 
 






 

 
  
 

☆ 塔頭聖林院開山、万寿派聖林下祖
  臨済
正伝第34世

 
慧極道明(えごくどうみよう)(1632~1721・世寿90才)

 

風顛手段

九十年来

虚空落地

大機現前
   



風顛を手段とし

九十年 来る

虚空落地

大機 現前す


 
〔大意〕
    気違い染みた生き方で
    90年ちかくも生きてきた
    今 天地が合体した気分だ
    宇宙の大きな働きが眼前に広がり手にとるようだワイ 

  
 
 



 
 
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