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勝手にコラム

No.1:マルチプロセッサーの憂鬱(その1)

マルチプロセッサー。ああ、なんて力強く、そして甘美な響きなんだろう。その言葉を冠することによって、ただの一個人のパソコンがまるでスーパーワークステーショ ンに進化したような感覚をオーナーに与える。そのCPUボードに秘められた未知なる 可能性、先進性、自己主張性。たとえどんな重たいアプリケーションであれ、マルチプロセッサーの暴力的とも言える圧倒的CPUパワーによってまるで赤子の手をひねる か如く動かしてしまうだろう。1000馬力のカスタムカーで渋滞だらけの日本の高速道 路を走るようなものだといわれようと、そのCPUパワーの優越感の前にはそんなささ いなことは無意味であり、当人は何も見えなくなってしまう。

「ほしい。」そう思った。ページ上のグラフィックイメージがすべて表示されるより 早く、そう思った。ふとみたWWWのページで「MaxPowr 400+ \59800」の文字が目 にとまったときである。

わたしはデジタルアーティスト(自称)として、死後に評価されるであろうビデオク リップやグラフィックを制作している。近頃フィルターの連続複合技で新たな手法を確立した(と確信している)ため、愛機のCPUパワーに憤りを感じはじめていた。愛 機はPower Macintosh 8500/120。なにも今のPPC604の120MHzは遅いとは思っていない 。実に快適である。SE/30のころよりMacを使いはじめた私は、 604の能力はもったい ないと思うことさえあった。しかし、今はたったひとつの不満があった。

ただ、惜しいのだ。時間が。CPUに処理を与えてから次の処理を与えるまでの時間が 。仕事の都合上ゆっくりとした時間がなかなかもてない私にとっては一分であろうと、一時間であろうと、永遠にも思える時間を待たなければならない。そんなとき、WWWの通販店で例の文字をみた。今までもCPUカードはほしいと思っていた。特に 604e/200クラスはとても値下がりしていたため、時期をみて購入しようと考えていた。 そんな折り、上の広告をみたのだ。天の啓示と行っても良いだろう。120MHzから200M Hzでも単純計算して1.6倍の差がある。それがマルチプロセッサーなら、その相乗効 果によって更に何倍にもふくれあがるだろう。そのとき私の目にはデュアルCPUの動 作状態が浮かんだ。ひとつでも有り余るパワーを持つPowerPCが、さらにもうひとつ 、眠れる獅子として待機している。その獅子を揺り起こしたとき、まさに修羅の如く能力を発揮して主人の命を果たしてくれるだろう。

気がついたときは電子メールの送信ボタンを押した後だった。

それから一週間後(まさに「無限」とも思える時間だった)、わが家にMPカードが到 着した。到着したパッケージを開けてカードをだしたとき、きっと、タイムマシンを手にしたような表情をしていただろう。そう、これは私にとってまさにタイムマシン だ。時空連続帯の隙間を飛び越え、圧縮し、新たなる時間を作り出してくれるタイムマシンなのだ。120MHzよ、さようなら。200MHz*2よ、こんにちは。これからは私がマ スターとなるのだ。わたしは心の中でそうつぶやいた。

(つづく)


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