日々、在りしことども



雪待月三十日
日光が暖かい。
どうも今回の中国茶は香りが弱い。

『キャプテン・フューチャー』読書中。時代柄かなんでもかんでも『放射能(線)』で『原子力』。また西洋人の原住民、奴隷に対する感覚がかなりうかがえる。ついでに言えば悲鳴をあげるしか出来ない無脳ヒロインは、良く揶揄されるだけあって実在したのだな、と。
――いきなりぞっこんなようですが、キャプテン。あれの何処にそれだけの魅力があったのか、一つこの低脳な地球原住民にも教えて頂けませんかね? 

夜、潰れ寝る。やや健康。
雪待月二十九日
久方振りに  氏と会う。茶など啜り、雑談。彼は先日論文を上げたばかりだが、あともう一本、というより一年在学すれば無事卒院の運びとなるらしい。
後、加わった地方公務員の某氏も交え、取り留め無きことどもを話す。着実に人生を刻んでいる御二人から、駄目人間へ幾ばくかの説教。

夜、二氏共に帰宅。自分の情熱が干からびた蜜柑の皮ぐらいのものだと思い知る。
雪待月二十八日
鍋。

先に集った参加者の面々は何故かしら飢えに飢えており、酒を飲みつつ遅参者を待つ。
本日は有志持参の肉団子鍋を室内で――『カセットコンロないけど』『(電話して)持って来い』『応!』

で、何処で捻じれたか屋外バーベキュー用の足つきガスコンロ火口×2が、床の上に。
火力は流石。持参者は一仕事終えたかのように良い笑み。

結構な量を腹がくちくなるまで食す。ベトナム原付縦断などという無茶な番組DVDなどを鑑賞して、辞去。軽自動車の後部に人間二人と自転車一台を無理やり積み込んで、夜の街を走る。

なお、竹生島の吟醸を飲み損ねる。一升瓶を湖東辺りで探してみるか?
雪待月二十七日
寒い。心も、体も、震えて竦む。
何が足りないんだろう。何を求めているんだろう。無意識を必死に探る。……そうか……ああ、そうか――

辛さが足りないんだ。

『辛』の一文字この身に背負い、振るう片手に香辛料。赤さが旨さだ、辛さが旨さだ。
と、言う訳で野菜炒めの処理も兼ねた炒飯に、使いかねて封印していた豆板醤キロ瓶を開封、大匙でこれが開戦の狼煙だとばかりに景気良く投入する。来た来た来タア――

『惑星カレスの魔女』読了。

これも人助けなんだ、自分は巻き込まれただけなんだと呟きつつ、少女三人姉妹を奴隷として購入した船長が、宇宙の危機に次々目覚めていくスパーパワーで大活躍するお話。

最近のジュブナイル系、あるいは駄目小説と称されるものにありそうな設定。しかし萌え度が全く足りません、と思う自分が駄目人間。

書かれた時代や文化背景が違ったせいか、あまり面白う無し。残念。

雪待月二六五日

雪待月二十五日

雪待月二十四日
夜、電話で叩き起こされる。曰く、Y氏が久し振りに帰省しているので、ドライブにでも行かないか、と。

『……で、今何処?』
『君んちの前』

さらわれるままに北上。そのまま南彦根にて仕事が上がったばかりのスーツネクタイ姿のN氏を追加拉致。喫茶店にて他愛も無いことを口にし、ブックオフ、尼子駅前に何故か出来たロータリーを経由して帰宅。

なお、矯正されていた生活時間が見事に元に戻る。悪癖は強し。
雪待月二十三日
祝日
雪待月二十二日
寒い。そう感じるのは運動と唐辛子が足りていないのだろう。
雪待月二十一日
規則正しい逆転生活が、どうしても修正できない。
雪待月二十日
辛さは慣れである。ほんのしばらく食習慣を変えてみれば、それは用意に御理解いただけることだろう。
本日、『伊那にも辛味大根が――』と常の如く書に耽っていた私は、ふと福井土産の大根が残っていたことを思い出した。福井で蕎麦といえばおろし蕎麦。実際、使い切った前の一本は辛かった。
早速蕎麦を茹で、大根を大量におろし、食す。

敗因:量と場所。

……効く。しかも唐辛子と違い、舌先の本来甘味を感じるべき近辺にくる辛さ。
どちらかというと求めていた『辛』ではない。ただ、三日酔いの内臓には良かったように思う。

午後、出る。店など冷やかす。何かあったようにも思うが、特に記憶も無し。本日以上。
雪待月十九日
昨日解禁されたボンジョーレ・ヌーボーを飲む。
赤――しかない、とも聞くがそう甘くはなく、ワインを飲みなれぬ口には不味くも良くもない味。まあ、日本酒の地酒新酒をヨーロッパは片田舎のスーパー店頭まで運んで売ったと想像すれば、傷んでいないだけで賞賛ものか。

ワインは山梨や長野のコンビニで売っている、安い地物の方が旨かったと懐古する。
雪待月十八日
腐敗中。
大量飲酒が続くと、胃でも頭でもなく喉が痛くなるのは、さて一般的なのかどうか。
雪待月十七日
今頃になって先日の二冊も、取り寄せ本ではなく地元図書館の新規購入だったと知る。
雪待月十六日

雪待月十五日
蕎麦、旨し。天婦羅よりはおろした長芋や大根。
本。返却期限付きのものを一山、部屋隅から発掘する。どれもこれも借りてまだ半月過ぎていないのに、何故忘れてたんだ?
雪待月十四日
初めてのシュウマイ。敵、緑グルグル壺焼きサザエ。
調子、乗らず。本、楽しむ。腹、出る。多分、贅肉と肝臓。
雪待月十三日
前後の脈絡から切り取った発言を振りかざし、責めたり吊るし上げるのは古くから政治家と報道連中の十八番であり、情報過多の昨今、我々がすべきことはその発言を無視するのでも、一部に拘って喚くのでもなく、どのような状況で如何なる問答の末、背景と意図をもってなされたか、自分で確かめ、考えることではなかろうかと思う。
言葉は唐突にそこに生まれるものではなく、また、そこで終わるものでもない。

でも、今日の発言はあんまりじゃないだろうか、首相殿。『自衛隊の派遣先が非戦闘地域だぁー』って。

彼はアメリカのクリントン氏と友人だとか。最近、周囲でキャンキャン噛み付いているのは、奇矯な発言を売りとしている民主党。

『レベルの低い人間と付き合うと、こっちのレベルまで落ちるぞ』と昔、危険な教えを垂れてくれた某師。
『味方より、敵を選びなさい。尊敬できる、全身全霊で戦う価値のある敵は如何なる友人よりも素晴らしい』とか言ってたニーチェ。
『朱に交われば赤くなる』
『「汚れるよ」「わたしは構わないわ」』……ああ、これは違うか。

ともかく、何か一つの大切な真理を学んだ気がする冬間近。


本日、ぬくし。
甲田氏の『Missing』、図書館で借りてきた続きを早速読む。まだ七巻だが、ここまで面白くなるとは思わなかった。ホラー、オカルト小説いや怪奇小説と恐怖小説、ついでに伝奇小説と呼ぶべきか。そういった諸々に『スティーブン・キングは読んだ覚えが無いが、井上雅彦氏は崇拝している。嗚呼、伯爵殿』と自分でも大層気に入った歪み具合の嗜好を有している私としては、初刊購入以降、全く手をつけていなかった自分の嗅覚の鈍り具合に、老いを理由に自殺する気持ちが『理解出来ません』から『共感出来るかも』、ぐらいに変化したぐらいの読中感。
出版文庫の傾向か、それとも作者のあれこれか。思うところが全く無いわけでも無いのだが、それでも――
昔、自分が小野不由美氏の『悪霊シリーズ』で触れた冷たい芳醇な世界に。
この『Missing』で迷い込む少年少女達は決して少なくないのだろう。

一人の闇好む端の末として。心よりこの作者氏を歓迎する。
雪待月十二日
やる気がでない。

夕、後先考えずに図書館で大量に借り込む。
夜、風強し。雪夜をふと思う。
雪待月十一日

雪待月十日
素晴らしい本を見付ける。
『キャプテン・フューチャー全集1 恐怖の宇宙帝王/暗黒星大接近! 』
丁度、こういう『ソースに浸け込んだトンカツ』並みのものを読みたいと思っていたので、迷わず借りる。
……分かってやっているギャグじゃなかろう点は残念だが。

紅茶、茶葉と詫び状とついでに新作五十グラム缶入りが送られてくる。ヨロシ。
書店、見慣れぬ本がまた増えていたが、それ以前にそう分厚くも無い文庫本が一冊千円近いとは何事か。日本の物価上昇に愕然とする。きわめてヨロシカラズ。
雪待月九日
天気、良。

ウブカタトウ氏の偉大さを再確認する。昔にくらべ表層的な暴力性――ヤクザだの幼児誘拐臓器抜き取りだの剣だ決闘、戦争だ――は減っている。いや、実際にはマイルドな描写になっているだけで全然減ってはいないか、とにかく表記としての暴力は角が取れている。しかし、別の面で氏の作品は凶暴性を確実に増している。――人の魂を殴りつけ、衝撃を与えるというのなら何であれそれは暴力といえよう。

夕、再び器を割る。自分では調子が良いつもりだが、何の不思議も感じさせず手から皿は勢いよくすっぽ抜けた。一度、久々に山登りなどをして体調を整えるべきか?
雪待月八日
本日も天気ヨロシ。

再び紅茶屋より電話。説明と注文品発送済みの報告。記念日が絡んでくるメールを平気で一週間寝かす自分としては、何やら悪いことをしている気になってきた。――他の茶葉が尽きるまでに届けばそれでいいんだが。

夜。ディスプレイついに御臨終。黄色というか檸檬というか、一度画面をそのように着色して沈黙。男らしい無言の境地に達す。
雪待月七日
紅茶の件だが、早速電話が来る。案の定、ラベルの貼り間違えだとか。
迅速な対応に好感を持つ。
雪待月六日
パソコンのディスプレイを毎日叩いて使っている。虐待とか騒音問題という言葉がたまさか脳裏を過ぎる程度に。
本日、その堅そうな両角に罅を見つける。
――映らなくなるのが先か、殴られ砕けるのが先か。

この前、届いた中国紅茶を味わってみんとす。予想していた甘い香りではなく、またキーマンといった 燻製臭でもなく、むしろ日本の番茶や焙じ茶に似た味わい。少々、残念に思いながらもう一度、茶葉を眺める。茶葉はくすんだ色、香りは余り紅茶にない風味、炒ったような珍しい形の茶の実または豆。小さくたくさんの蕎麦の実。

どう考えても紅茶じゃない。

早速、紅茶会社に詰め間違え確認の電信を出す。
……他の茶葉も確認してみるべきだろうか?
雪待月五日
天気良し。布団を干す。

大皿を二枚ほど、久々に割る。片方は長く使い込み、もう片方はその使い勝手のよさに最近重宝していたもの。故にか、やや物寂しい。
雪待月四日

雪待月三日
天気良し、やや寝過ごす。

本日夕には信州まで蜻蛉返りするS口氏と共に、まずは多賀大社へ。七五三の微笑ましい光景を見ながら、糸切り餅を食す。
――南瓜や抹茶を餅に練り込んだ糸切り餅の存在や、ましてそれをその場で揚げて食べさせる店が あるなど、初めて知った。

後、雑談しつつ車で西へ。『左か右か!』と碌に説明もせず決断を迫り、湖岸道路をそのまま走る。
途中で降りもしたが、この光景が当り前な地元民とは違い、対岸が見えない湖というのは それなりに衝撃である模様。

長浜城をざっと眺め、やや道に迷い、彦根へ。丁度、御城祭りとぶつかり、昔風の装いをした 行列だの馬だの必殺仕事人だのを見る。
松吉にて遅めの昼食。疲れが出始めていた氏を引き摺って銀座の招き猫露天を冷やかし。残念ながら 昔ほど良き猫はおらず、まだしも気に入ったものも、目が合った一匹の他は、迷っている前で横合いから買い攫われる。ヲノレ。

彦根城へ登り、琵琶湖の遠景などを見などして、氏を駅まで送り、別れを告げる。
次に会うのは何時か。短いながら久々に真っ当な人間らしい時間を過ごす。
雪待月二日
夕、S口氏来たる。かれこれ五年振り程か。
老けた様子は余り見られず、意外と若々しかった。元気なようで何より。
電車を降りたその場から、長旅の疲れも無視し、彦根を引き摺りまわす。

――後々省みるに、ここ長らく真っ当な対人コミュニケーションをとった覚えがないので、 大分常識前後の言動を割愛したように思う。相手を慮る以前に、行動予定や意図、目的地の説明、そしてそれに対する是非を訊くといった辺り。

雑談し、ライトアップされた彦根城を横目に、閉店間際の『たねや』へ。ケーキを食し、ついでに少々買い物。次に夜、盃交わす酒を銀座にて求めるが、行き付けの店が軒先に木箱を積んでいた状態から、ワイン専門のお洒落な外観に変じていたので、暫しの間、一人呆ける。――幸い、昔通り良い地酒をきっちり扱ってくれていた。

そのまま夜の琵琶湖へ。台風のせいで上がっている水位と流木の山を一瞥し、腹を満たすため『たすとヴぁん』。近江牛などを肴に軽く食す。

帰宅後、氏とつらつら喋りながら遅くまで飲み交わす。
こちらは近江の地酒ということで先程購入したばかりの竹生嶋は『花嵐』と花伊吹の『楽』を。
S口氏は長野土産として最近浅間のコンビニが売り出した『○口』(一部伏字)を、一発ネタとして頂く
味は共に良く、他には数年前に私が絞って仕込んだ後、酷暑も冷夏も動くべきエアコンが壊れ続けている程度の温度管理で部屋の片隅に安置されてきた自家製ワインの小瓶を開ける。
アルコール度は無かったが、それでも傷んでなかったのは人類の叡智というものか。


へべれけになって朝も近く寝ようかという頃、テレビにて『ナインス・ゲート』をやっていることに 気付く。原作の『呪いのデュマ倶楽部』を読んでいるので、ついつい目で追っているうちに眠りについたS口氏を尻目に一人最後まで 見届ける。

久々に密度の濃い、あるいは在る一日。
雪待月一日
読書や掃除やらを為す。
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