琵琶湖水鳥・湿地センターラムサール条約ラムサール条約を活用しよう第5回締約国会議

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ラムサール登録湿地及びその他の湿地の管理計画に関する指針

(第5回締約国会議,釧路,日本,1993年6月9-16日の決議 V.7 附属書として採択)

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序文

(i) 概論

湿地はダイナミックな地域であり、自然や人為的な要因からの影響を受け易い。それらの生物多様性と生産性を維持するため、また人類による資源のワイズユースを行うために、様々な所有者及び居住者と、利害関係のある団体との間で、何らかの総合的な合意が必要とされる。管理計画の策定はこの総合的な合意を提供する。

湿地保護区のみでなく全ての湿地に適用されうる管理計画を策定する場合には、以下の様な配慮がなされなければならない。

各湿地の状態は様々に異なってはいるが、この指針は全世界的に適用させることができるものであろう。指針はそれよりもずっと詳細にわたる内容の文書である管理計画とは、かなり異なったものであることを強調しておく。ラムサール事務局は指針に添付する、より詳細なハンドブックの作成にあたって、指針に関する締約国からの意見を歓迎する。

(ii) 形式

この指針において、管理計画の形式は前文に続いて以下の主要な3部門から成る。

(iii) 立案と採択

技術スタッフは計画に関する3項の全ての立案に参加する。個々の部分の原典、図書目録及び著者名は常に記載されねばならない。政策の決定者は通常、第3項の資金提供と実施に関する承認をする前に技術スタッフとの協議のもとでその前の第2項をレビューする。

前文

前文は政策の簡潔な声明文であり、それは超国家的組織、各国政府、地方自治体、又は管理計画の策定と執行に関心を持つその他の団体(例えば自然保護に関係のある非政府組織又は私的所有者)の政策を広く反映する。前文はまたラムサールの三大責務を想起させるものでなければならない。それは登録湿地における生態学的特徴を維持すること、全ての湿地のワイズユースを行うこと、その湿地がラムサール湿地登録簿に登録されているかどうかに係わり無く湿地自然保護区の設立を行うことである。

第1−(湿地に関する詳細な)記述

これは入手可能な情報を用い、現状との相違の確認作業を含めた各湿地の基本的な記述である。現状との相違があれば適宜書き加えられると共に、その記述は定期的にレビュー、修正される。それは湿地で次々に起こる変化を確認するモニタリングプログラムの基本的な情報となる。「ラムサール登録湿地のインフォメーションシート」の項目は記述内容に関する形式の参考となるが、ほとんどの場合はさらに詳細な情報を必要とする。その計画内容が出版される場合、希少種に関する微妙な情報は極秘にされる。

第2−評価と目標−何をすべきか

2.1 評価

ここでの評価とは湿地の主要な特徴の評価を意味し、上記の記述に適用される。(ラムサール湿地登録簿に登録の可能性のある湿地を特定するために使われるラムサール基準とこれとを混同してはならない。)その評価過程には以下のような項目を用い、(優先順位で並べられてはおらず、それぞれの湿地で様々に異なるものである。)それらは個別に又は全体として用いられる。

2.2 長期の管理目標

これらは意図するところを簡潔に表現したものであり、評価過程に基づくもので、他の要件からの影響は受けない。これらは一般的な言葉でも、又はより専門的な言葉でも記述される。通常は、序文に略述されている広範な政策に対応している。

2.3 長期の管理目標の達成に影響を与えている要因

一度長期の目標が決定されると、その達成に影響を与えるまたはその達成を妨げるおそれのある全ての重大な要因が見極められていなければならない。これらの要因は以下のように分類される。

2.4 作業上の目標の設定

この段階では、長期目標の達成について述べた上記2.3の下に特定された要因の影響に配慮し、作業上の(或いは達成可能な)目標の設定を目指す。これらは長期的目標からはかなりかけ離れることがあるが、そうした場合でも、長期の目標に向かっての方向性を示す必要がある(*変化についての許容できる限界に関する注参照)

*許容できる変化の限界 「許容できる変化の限界」の概念は、許容され得る変化の限界を明確にし、またそれを設定するのに広く使われている有効な道具である。それは長期の或いは作業上の目標に適用される。(湿地に関しての例としては、湿地の最高または最低水位や、植物の最高或いは最低の広がりにみられよう。)これらの限界を超えると、たちまち再生のための対処をする必要性が生じる。許容できる変化の限界という点からは、自然資源の持続的な収穫が考慮されていなければならず、その結果収穫率や漁獲量が決定されることになる。モニタリングは必須かつ最も重要である。

第3部−活動計画/規定−どのようにすべきか

3.1 活動計画

作業上の目標は行動計画の策定につながる。複雑な湿地では、所有者並びにそこでの活動は様々であり、自然資源利用の管理や生物学的多様性の維持のための全体的な「すべてを傘下に治ある(umbrella)」計画が全ての利用者及び利害関係のある団体の協力に基づいて策定されねばならない。この総括的な計画においては、地域内の異なった場所での活動を統制するのにゾーニングが適切かもしれない。それぞれの地域が独自の補助的な計画を持つことも有り得る。

3.2 プロジェクト

作業上の目標の実施をはかるために要求される業務(「処方」)の一般的な領域は、「プロジェクト」と呼ばれる明確に規定きれた個別の業務単位に細分化される。それぞれのプロジェクトにおいては、各々のプロジェクトの業務遂行担当者が業務を貫徹できるように充分な情報が既にあるか、そういった情報の参考となるものが提供されている。またその業務に責任のあるスタッフについて、並びにそれがいつ実行されねばならないか、それにどれだけ時間がかかって、費用はいくらかかるかといった詳細が記載される。それぞれのプロジェクトにはその優先順位がきめられ、実施される年に割り振られる。また各プロジェクトは以下のような3つの主な項目、記録、管理、庶務のもとで分類される。

3.3 業務プログラム

プロジェクトを詳細に説明したものは、集合的に、広範囲な活動プログラムを広い枠で準備するためのベースとして使用される。これには毎年の事業プログラム、メンバーの各職員の事業プログラムと財政的プログラムが含まれる。

3.4 及び 3.5 レビュー

最後に、プロジェクトに関する同様な細目を基にして、既に完了した業務及びそのモニタリングと調査の結果を詳細に記載したレビューがなされる。この情報は短期の、普通は年毎の又はより長い期間のそして主要なレビューの基礎となる。短期のレビューの目的は、単に湿地がその計画の必要条件に従って管理されているかを確認することである。主要なレビューでは作業上の目標が遂行され、それらが現在も適切なものかを確認するために適用される。主要なレビュー間の期間は、広範な要因、主として対象となる湿地のダイナミクスと影響の受けやすさとによって異なる。それは一年以内であることはほとんど無いが、10年を越えてはならない。


付図

mgt-chart2_j.jpg (32KB)


[和訳:『ラムサール条約第5回締約国会議の記録』(環境庁 1994)より了解を得て再録]
[レイアウト:条約事務局ウェブサイト所載の当該英語ページに従う]

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