Swan  琵琶湖水鳥・湿地センターラムサール条約ラムサール条約を活用しよう第8回締約国会議

ラムサール条約

決議.36:参加型環境管理

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「湿地:水、生命及び文化」
湿地条約(ラムサール,イラン,1971)
第8回締約国会議
バレンシア,スペイン,2002年11月18-26日


決議.36

湿地の管理及び賢明な利用のための手段としての参加型環境管理(PEM

1.湿地の持続可能な管理には、最重要問題の特定とその優先順位設定のため、またそのような問題への効率的解決策を提案するために、地方や地域、伝統や科学など多くの提供源からの知識を取り込んだ統合的アプローチが必要であることを認識し

2.湿地の持続可能な管理にあらゆる部門が参加すると人的資源、経済資源、環境資源を最大限に活用でき、このため、それが多くの地域で貧困の軽減と生活の質の向上に寄与しうるプロセスだとみなすことができることを考慮し

3.社会と湿地の密接な関係を認識し、また地域住民の生活の文化的、生態学的、社会的、政治的、経済的な面におけるこの生態系の重要性を考慮し;

4.条約湿地に指定された湿地に関する管理計画策定と意思決定プロセスへの、地域住民と先住民の参加を促進する「賢明な利用の概念実施のためのガイドライン」(勧告4.10)及び「賢明な利用の概念実施のための追加手引き」(決議5.6)を想起し

5.「湿地管理への地域社会及び先住民の参加を確立し強化するためのガイドライン」と題する決議.8も同じく想起し

6.持続可能な開発に関するヨハネスブルグ宣言の段落26が、持続可能な開発には、すべてのレベルにおける政策の策定、意思決定、実施への幅広い参加が必要であること、及び持続可能な開発に関する世界首脳会議の実施計画の段落 128が、環境と開発に関するリオ宣言原則10を推進するため、市民を確実に意思決定に参加させることの重要性を明確に示していることをさらに想起し

7.湿地の管理と持続可能な利用に、社会の多くの主体(特に、公共部門、民間部門、非政府組織、地域社会)を巻き込む必要性を同じく認識し

8.地域社会の参加を得るという戦略が、湿地の自然資源の持続可能な利用と活用を促す活動を実施するのに役立つことも同じく認識し

9.「参加型環境管理(PEM)」が、湿地保全に参加する全員の調査・行動能力の向上に役立つ学習のプロセスであることを十分に認識し

10.参加型環境管理を通して、湿地の利用と持続可能な管理に関する決定の採択と適用に、地域住民と先住民の積極的かつ全面的な参加が促進されることも同じく考慮し

11.生物多様性条約(CBD)第4回締約国会議(COP4)が締約国に対して、内水面の生物多様性に影響を及ぼす可能性のある管理計画の立案とプロジェクトに、必要に応じてできる限り多くの地域住民と先住民の参加を得るよう、締約国に勧告した「内水面生態系の生物多様性の現状と傾向及び保全と持続可能な利用のためのオプション」に関する決定/4の付属書、段落9(e)を想起し

12.参加型環境管理はコミュニケーションと情報交換を改善することから、環境上の争いの低減に役立ち、管理活動の継続性と持続可能性を高めることをさらに認識し

13.地域住民、先住民、民間部門、大学、非政府組織、公共部門を巻き込んだ参加型の湿地管理により、持続可能な方法で湿地内の資源を管理している望ましい経験例があることをさらに考慮し

14.ラムサール条約第7回締約国会議(COP7)の「湿地の保全と賢明な利用へのすべてのレベルの参加」に関する第3分科会で、世界中から紹介された経験とケーススタディに留意し

締約国会議は、

15.「参加型環境管理(PEM)」が、湿地の利用と管理の持続可能性を達成するうえで有効な手段であることを認識する

16.科学技術検討委員会(STRP)に対して、ケーススタディを集め、かつ本決議の付属書の内容を考慮して、参加型環境管理を効果的に実施するための方法論またはガイドラインをCOP9に向けて作成するよう求める

17.締約国に対して、参加型環境管理戦略の適用に関する進捗とその成功例についてCOP9に報告するよう要請する

18.また、多国間及び二国間の援助機関に対して、参加型環境管理という戦略の湿地管理への利用を推進するプロジェクトに対して資金を提供するよう要請する


付属書

はじめに

1.参加型環境管理(PEM)という手段は、特に伝統、科学、技術、行政など多くの提供源の知識を取り込むことにより、問題や優先的活動に対して統合的なアプローチが可能になる。これによって、生態系の管理、特に湿地の管理が社会的、環境的、経済的な意味で、いちだんと効率的、効果的で持続的となる。参加型環境管理は資源をもっとも効果的に利用し(最適化され)、いちだんと効果的に管理するので、今ではこれが多くの地域の貧困の克服に役立つプロセスだとみなされている。

参加型環境管理の利点

2.参加型環境管理は次のようなものである:

a)貧困軽減と生活の質の向上に役立つ手段である;
b)地域の状況と現実に即した必要性を一貫性をもって把握することを助ける;
c)あらゆる関係者(公共部門、民間、地域社会、大学など)を取り込むことができるので、強固な地域組織を作り上げるとともに、地域の組織の構築の仕方について学ぶ場となる;
d)経済的、社会的、環境的な意味でいちだんと効率的、効果的で持続的な解決策を明確にし、それによって付随的な利益を生む;
e)環境管理戦略に利用できる(技術的、資金的、文化的)資源を最大限に生かす;
f)知識と視点(特に、対象となる湿地に直接に関連するもの)を多くの提供源から取り込むことにより、知識の交換を促進する;
g)地域の底辺から能力を向上させ、その土地の文化を根付かせる;
h)関係者間のコミュニケーションと情報交換を改善することにより、信頼のおける環境を創出する;
i)環境上の争いの解決に用いることができる;
j)他の分野における参加の可能性を促す。

3.参加型環境管理は他のプロセス同様、時間がかかり、かつ土地利用の面でも必要な経済的資源の面でも、適切な計画を策定する必要があることを考慮しておかなければならない。

4.しかしながら、もし適切に「利用」すれば、外部から参加型環境管理戦略を強化できる要素もある。たとえば、自然地域の管理への社会的参加に関して法的な仕組みを開発または適用することに関わる要素などである。

5.短期的または中期的にプラスの成果をもたらすことのできるものとして次の2つがある。a)国際条約、すなわち、ラムサール条約、生物多様性条約(CBD)、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」(ワシントン条約・CITES)への調印、適用、遵守。b)経験の共有、情報へのアクセス及び普及、ならびに共同での決定と資源管理における地方の技術能力向上のための国際的ネットワークの強化。

6.一方以下を通して、長期的だがはっきりした形でこれと同じく重要な成果を得ることができる。a)国際的環境協力の仕組みで、環境プロジェクトの開発に参加型環境管理(PEM)手法を用いることを確約するという要件を盛り込んだもの、b)自然地域の管理戦略に組み込んだ社会的参加への奨励措置、c)PEMプロジェクトの開発に対する助言と技術的援助。

参加型環境管理戦略の策定と適用にあたって考慮すべき主な側面

7.参加型環境管理戦略の策定と適用に際して、あるいは既存の参加型環境管理戦略を強化するためには、主に次のような側面を考慮すべきである:

a)すべてのレベルでの教育と環境に関する啓発;
b)あらゆる参加者の研修;
c)PEMを強化する活動に対し、専用の資金を振り分ける必要性の確認;
d)情報への公平なアクセス;
e)地方や地域のリーダーを特定することを通して、参加型の仕組みを適用すること;
f)社会文化的な状況に関するモニタリングと参加型研究、及び優先課題と想定される活動内容の特定と対立関係の早期発見に関する総合的分析。


ラムサール条約第8回締約国会議の記録 [和訳:『ラムサール条約第8回締約国会議の記録』(環境省 2004)より了解を得て再録,2005年,琵琶湖ラムサール研究会.]
[レイアウト:条約事務局ウェブサイト所載の当該英語ページに従う.]

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