Swan  琵琶湖水鳥・湿地センターラムサール条約ラムサール条約を活用しよう第8回締約国会議

ラムサール条約

決議.38:水鳥個体数推定

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「湿地:水、生命及び文化」
湿地条約(ラムサール,イラン,1971)
第8回締約国会議
バレンシア,スペイン,2002年11月18-26日


決議.38

水鳥個体数推定と国際的に重要な湿地の特定及び指定

1.「国際的に重要な湿地のリストを将来的に拡充するための戦略的枠組み及びガイドライン」(決議.11)で求められているように、国内外の渡りルート上にある保護された湿地のネットワーク設立など、水鳥個体群を保全し賢明に利用するために講じた措置の有効性を調べるうえで、渡り性水鳥の個体数推定値を定期的に見直し更新することが必要であると認識し

2.IWRB(現在は国際湿地保全連合)に対して、本条約の条約湿地選定基準3(c)(現在は基準6)を適用する根拠となるように、水鳥個体群の大きさに関する情報を提供するよう締約国が求めた決議5.9を想起し、さらに、この情報の適切な更新時期を示しながら、国際湿地保全連合に対して、その後の各締約国会議に更新情報を報告するよう求めた決議.4も想起し

3.「国際的に重要な湿地のリストを将来的に拡充するための戦略的枠組み及びガイドライン」(決議.11)の基準2、4、5、6に照らして湿地を評価するには、国際湿地保全連合が収集した国際水鳥センサスのデータが重要であることを再確認し

4.特に、国または地域の管理計画策定、環境影響評価、及び湿地政策評価という目的で、個々の湿地の生態学的特徴を効果的にモニタリングする手段として、湿地における定期的な水鳥個体数調査の意義に改めて留意し

5.今回の締約国会議に向けて公表された「水鳥個体数推定値(Waterbird Population Estimates)」第3版は、決議.4の構想に従って、水鳥の個体群の大きさに関する最新情報をとりまとめ、生物地理学上の 1,138個体群(50%)に関する個体数の1%基準値を特定したが、作成にあたって、国際湿地保全連合がデータや情報の比較検討に広く国際的な協議をしたことを認識しつつも、なお依然として 1,133の個体群については、条約湿地選定基準6を適用するための1%基準値が設定できるような信頼性の高い個体数推定値が得られていないことを認識し

6.バードライフ・インターナショナルによる「ヨーロッパの鳥類重要生息地と将来的な条約湿地候補」、「アフリカの鳥類重要生息地と将来的な条約湿地候補」の発行を歓迎するとともに、バードライフ・インターナショナルの鳥類重要生息地(IBA)プログラムは締約国を支援して国際的に重要な湿地の候補を特定するうえで意義あるものと認識し

7.世界の鳥類の現況を評価して、58種の水鳥に地球規模で絶滅のおそれがあり、その他6種についてはデータ不足で保全状況を判定できないとした、「絶滅に瀕する世界の鳥類(Threatened Birds of the World)」をバードライフ・インターナショナルが2000年に発行したことに留意し、かつ、同書が基準2に基づいて条約湿地を特定しまた指定するための情報を提供することを認識し

8.IUCN(国際自然保護連合)種の保存委員会の国際的な専門家グループ、ならびに国際湿地保全連合の専門家委員会が水鳥個体数データの収集、分析、解釈に果たす役割を認識し

9.諸管理対応に情報を提供するには、本来の生息域の外で個体群が急増している水鳥はもとより、外来種、非在来種及び侵入種の個体群と雑種形態に関するモニタリング情報が必要であることを認識し

10.国際湿地保全連合のアフリカ・ユーラシア地域水鳥渡りルートプロジェクトが展開されることで、「水鳥個体数推定値」の今後の改訂版は、元になるデータの収集範囲が広がり、かつその質が向上すること、また、水鳥の渡りルートに沿ってきわめて重要な湿地を特定することで将来的な条約湿地候補地が特定され、それらを調査、モニタリングする能力も向上することを重ねて認識し

11.国際的に重要な湿地を指定するにあたって基準6を適用するための1%基準値について、地球規模で一貫した情報源の利用が促進されるよう切望しつつ

締約国会議は、

12.今回の締約国会議に向けて作成された「水鳥個体数推定値」第3版の発行を歓迎するとともに、国際湿地保全連合に対して、湿地や水鳥の保全と賢明な利用のために重要なデータや情報の、この地球規模で一貫した情報源を拡充し、また個体数推定値と1%基準値が確認できる生物地理学的個体群の数を増やすために行ってきた活動を祝福する

13.すべての締約国に対して、条約湿地の指定にあたって、2003から2005年の3年間においては「国際的に重要な湿地のリストを将来的に拡充するための戦略的枠組み及びガイドライン」の基準6を適用する際は、公式かつ一貫性のある根拠として、「水鳥個体群推定値」第3版に記載された適切な1%基準値を利用するよう強く要請する

14.すべての締約国に対して、本条約「2003−2008年戦略計画」の行動12.2.2.にしたがって条約湿地を水鳥の渡りルート規模で緊密につなぐネットワークを特定し、指定するため相互に協力するよう同じく強く要請する。この協力には、本条約と移動性野生動物種の保全に関する条約(ボン条約・CMS)及びアフリカ−ユーラシア地域渡り性水鳥協定(AEWA)との間の共同作業計画を通じ、両者と協力することも含む;

15.さらに締約国に対して、本条約2003−2008年戦略計画の行動12.2.1を実施する際には、各国または各地域規模で絶滅のおそれのある水鳥の保全戦略を支えるために条約湿地を選定する意義にも留意しつつ、地球規模で絶滅のおそれのある水鳥のために条約湿地を選定するよう重ねて強く要請する

16.国際湿地保全連合に対して、ラムサール条約事務局の支援を得て、すべての締約国、非締約国、及び条約湿地の特定と指定に関わる他の組織が、電子形式などにより、「水鳥個体数推定値」第3版を広く利用できるようにすることを要請する

17.国際湿地保全連合に対して、今後も締約国会議ごとに継続して「水鳥個体数推定値」の改訂版を提出するよう要請する。これにあたっては、向こう3年間基準6を適用する根拠として利用できる個体数推定値と1%基準値を収載するよう、事前にその内容を国際的かつ科学的に協議することとする;

18.今後発行する「水鳥個体数推定値」では調査範囲を拡大し「国際的に重要な湿地のリストを将来的に拡充するための戦略的枠組み及びガイドライン」の用語集に記載された水鳥の分類群を網羅する、としている国際湿地保全連合の意向を歓迎する

19.国際水鳥調査の拡充に主眼を据える措置として国際湿地保全連合が提言する、世界水鳥モニタリング運営委員会の設立、そして特にこの委員会のラムサール条約湿地リストの戦略的拡充のための貢献を同じく歓迎し、当委員会の設立後は、締約国その他が条約湿地を特定し指定する際に役立つように、国際水鳥調査のデータや情報が入手しやすくなるような方策を明確に示すよう要請する

20.関連データ及び情報を有する締約国その他に対して、バードライフ・インターナショナルが「絶滅に瀕する世界の鳥類」で地球規模の絶滅危惧種やデータ不足とした種をはじめとする、水鳥の個体数に関するデータの継続的な収集と提供を通じて、国際湿地保全連合とバードライフ・インターナショナルを支援するよう奨励する

21.IUCN種の保存委員会と国際湿地保全連合に対して、現在、水鳥分類群の専門家のネットワークが存在しないが、基準6を適用するにあたって有効な水鳥個体数データの比較検討及び見識のある解釈に役立つ、新たな専門家委員会の設置を推進するよう奨励する

22.バードライフ・インターナショナルに対して、ヨーロッパとアフリカの将来的な条約湿地候補についての鳥類重要生息地(IBA)の分析も含め、締約国その他がIBAプログラムの情報を利用できるようにするとともに、他地域についても同様の分析書の作成を検討するよう奨励する

23.受給資格のある国々がアフリカ・ユーラシア地域水鳥渡りルートプロジェクトを実施するにあたって、それらの国々への地球環境ファシリティーの支援を要請する

24.各締約国に対して、湿地管理計画策定及び国または地域の湿地政策評価の際に客観的情報を提供する手段として、水鳥モニタリングデータとその分析結果を適宜活用するよう強く要請する


ラムサール条約第8回締約国会議の記録 [和訳:『ラムサール条約第8回締約国会議の記録』(環境省 2004)より了解を得て再録,2005年,琵琶湖ラムサール研究会.]
[レイアウト:条約事務局ウェブサイト所載の当該英語ページに従う.]

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