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ラムサール条約事務局ホームページから知る
ラムサール文書

須川 恒

琵琶湖ラムサール研究会

1 スイスにある事務局のホームページ

 スイスのラムサール条約の事務局のホームページを覗いてみると、ラムサール条約に関しての文書が全て公開されています。日本語ではなくて英語(+フランス語・スペイン語)ですが、文書ができた流れがいろいろとわかります。

 締約国会議がらみの文書で、日本語に翻訳されている文書は全体の一部です。もちろん主要な文書は翻訳されていますが、翻訳出版作業には締約国会議終了後1年以上はかかります。はやく締約国会議で採択された文書を見たい人、あるいは、翻訳されている文書の原文を見たい人は、ラムサール条約事務局のホームページにアクセスしてください(第8回締約国会議のページ)

 決議文や勧告文の背景となった関連文書も読むことができます。また、締約国会議において決議文や勧告文がどのような議論を経て作成されているのかの雰囲気を、会議に参加しないでも味わうことができることでしょう。

2 英語は苦手だが雰囲気を知りたい人に

 英語は苦手だがどういった内容の情報かを知りたい人には、自動翻訳のサイトにアクセスして、ウェッブページ翻訳の英語→日本語の欄を指定して、翻訳して欲しいウェッブサイト名を入れると、おおよその雰囲気がわかる程度に訳された文書が出てきます。

3 ドラフト文書の掲載

 締約国会議開催が近づいてくると、締約国会議に向けて提出される文書(決議文や勧告文、それらの付属書(決議に含まれるアイデアについて詳細にまとめたもの)のドラフトが掲載されます。前回までの締約国会議の内容をフォローしていると、いくつかの文書は、宿題になっていたそれぞれの課題を満たすものだということが判ってきます。
 前回までは短く書かれた決議文であっても、その決議に含まれていた湿地保全にかかわるアイデアが、いくつものワークショップなどで、各国の事例を比較検討し、他の国際環境条約の動きとの連携もきちんと書き込まれた文書になっています。
 このようなドラフト文は、締約国会議に参加した各国代表やNGOの人々に配布され、締約国会議における議論を経た後に採択され、正式の決議文(勧告文)番号がついた形で、ホームページにアップされます。
 正式文書が採択された時点でドラフト文書は全てホームページから削除されますので、会議の議論を経てどのようにドラフトが変わったのかを知りたい人は、削除される前に保存しておく必要があります。

4 ドラフトと正式文書

 私は、スペイン・バレンシアで開催された第8回締約国会議には参加しませんでしたが、第8回締約国会議の目玉の一つである「湿地の文化的側面について」の決議文と付属書ドラフトをプリントして通読しました。今までラムサール条約にかかわる人々は、湿地生物の研究者や湿地保全運動を進める自然愛好家など、どちらかといえば自然系の人々が多かったのですが、付属書にかかれた考えは、湿地保全の流れに、広く文化系の人々の関心をひく多くのアイデアが含まれていると感じました。
 さて、締約国会議が終了して事務局のホームページに掲載された決議文「湿地の文化的側面」を見て驚きました。決議文本文の長さはあまり変わっていないようでしたが、長文の付属書はかなり短くなっていました。保存してあったドラフトと比較したろころ、決議本文の基本的な方向性は何とか採択されたようですが、きめ細かく説明してあった付属書は、ほとんど項目だけになっていました。

5 締約国会議の雰囲気をIISDのホームページで知る

 会議でどういった発言があったのかなど、会議の雰囲気は事務局の第8回締約国会議のページにリンクしてあるIISD(国際持続発展研究所)のホームページを通して知ることができます。きちんとした会議の議事録は事務局から出されますが時間がかかります。そこで、速報的な部分については、事務局はIISDの人たちに協力してもらっているようです。IISDは、このような地球規模の環境問題にかかわる国際会議の雰囲気や主要発言をインターネットで発信する活動をしており、ラムサール条約については第7回締約国会議からホームページに掲載されています。メンバーの写真が掲載されていますが、それぞれ専門分野を持った若い人々です。

 「湿地の文化的側面」の文書を巡って、締約国の代表からどのような意見がだされたのかの速報もあり、主要な発言もいくつか掲載されていました。湿地の文化的側面について注目しようという大枠の部分については、各国代表に異議はなかったようなのですが、付属書として細かく述べられている部分に関しては、「はたしてラムサール条約は、そのような分野まで扱っているのだろうか」とか「農産物の貿易自由化の考えと対立する部分が含まれていないか」とか言った異議がいくつか出され、付属書の細かい部分までは、合意を得る時間がなくて、次回の締約国会議へ積み残しとなったようです。

(2003年9月「ラムサール条約 琵琶湖登録 10周年記念 琵琶湖ラムサールシンポジウム」の際に資料として配布)


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