「ライダー」との戦いは嫌いだ。
奴は結局相手を倒さないから、
俺の腹はふくれない。
あの緑のやつ相手に無駄な力を使う。
わからないやつだ。
が…ここしばらくに比べれば
少しはましな戦いぶりだったか。
そしてまた、
奴は「ライダー」同士の戦いの場に飛び込む。
俺に紫のやつを攻撃させておいて、
他の二匹を退場させる。
奴が一枚のカードを手にする。
凄まじい力が渦巻いている。
俺の身がすくむ。
あれを使えば…おそらく俺は
…今までの俺でいられなくなる。
俺という存在を変質させられてしまう。
…いや
たぶん俺は…
もう変わってしまっている。
あのとき、力に引きずられて、
「向こう側」に顔を出したその時から
こうなることは避けられなかった。
それでも、
目の前にあった奴の顔を見ながら、
面白半分にうなずかなければ、
少しは違っていただろうか。
溢れ出す力の奔流。
消耗し尽くした体の中に
無理矢理力を注ぎ込まれるおぞましさ。
俺という存在が歪められ、変えられていく。
これがお前の選択か。
ならば…。
さあ…。
《契約に従い、お前に力を授けよう。
戦う力を。
生き残るための力を》
戦いが終わり
俺は霞みはじめた目で己の姿を見る。
闇色の翼は、醜い青と金色に変わり果てていた。
…これは何の代償なのだろう。
初めて奴と遭ったとき、その喉笛を噛み切らなかったことか。
奴の背を襲える機会をむざむざ逃したことか。
かすかに残る力も何もかも、崩れ落ち、流れ出てゆく。
奴が命を失おうとも、
俺は生き延びて、その様を眺めてやるつもりだったのに
先に命を支払わさせられたのは俺の方だったらしい。
そして
かつての俺の翼と同じ漆黒の闇の中へ
俺の意識は落ち込んでいった。