実際何一つ状況が変わったわけではない。
それでも、戦いを否定し続けてきたあの男が
俺を見つめ、俺と戦うと口にしたことで
俺の心はずいぶんと軽くなっていた。
今、目の前であえぐ弁護士の
憎々しげな言葉にのぞく焦りと迷い。
前の俺なら気付かなかったかもしれない。
しかし、俺もずいぶんお節介になったものだ。
俺を迷いに誘い込み、
迷いから救い出した男たち。
戦いを快楽とする狂犬を前にして傷ついた彼らを、かばうようにして飛び込む。
ゲームの仕掛け人が、さらなる戦いを求めて用意したカードを手にする。
とたんに伝わる凄まじい力。
何が起こるのか、俺にも薄々としかわからなかった。
もともとの思惑は知らないが、
先へ進むためならば
何だって利用してみせる。
力の渦の中心に俺はあった。
逆巻く風と流れ込むパワー。
…小さくあいつの悲鳴が聞こえた気がした…
俺の…
ナイトの姿は一変していた。
漆黒の鎧は青と金に縁取られた。
《契約に従い、お前に力を授けよう。
戦う力を。
生き残るための力を》
不意にあいつの声が聞こえた。
契約の時以来、初めての言葉。
冷笑のかけらもない、
おごそかな声だった。