「イモウト」が消えた。
あの空恐ろしい建物の中で。
仕掛け人と奴と龍との契約者、三匹の目の前で。
ちりちりと滲み、消えてしまった。
不思議と静かに
日が沈み
夜が明け
また
繰り返して
羽をはやした同じ貌をしたやつらが
「向こう側」にあふれ出た。
飢えのためでなく
面白半分でもなく
殺すためにニンゲンを殺す。
何も伝わってこない薄気味悪いやつら。
奴と、赤い「ライダー」が「こちら側」に飛び込んできた。
ニンゲンの血の臭いがよぎった気がしたが、
じきに羽のはえた連中の臭いに混じってわからなくなる。
次から次へと湧き起こる連中。
緑の「ライダー」がいれば、もう少し楽なのに、と考えかけて
俺は自分に呆れる。
「ライダー」なんぞ、叩きつぶすべき相手…
獲物を奪い合う邪魔者でしかないのに。
まあ、二匹で喰らうには多すぎる獲物の数だ。
俺が青と金の乗り物となって、突っ込んでいっても、吹き飛ぶ相手はたかが知れている。
火の玉を吐き出せる龍のことがうらやましかった。
「向こう側」へ転げ出た二匹を「こちら側」から見つめる。
龍との契約者が口から血を流し、
奴がそれに寄り添った。
低い咆吼が響いたかと思うと遠ざかっていく。
じきに、あの同じ貌をしたやつらの断末魔の声が遠くから響いてきた。
龍との契約者が動かなくなった。
龍の咆吼が響き続けている。
枷を解かれても、あの同じ貌をしたやつらをただ屠り続けるのだろう。
龍との契約者と手を繋いだまま
奴は体を投げ出していた。
眠っているときよりもなお
無防備に。
虚ろな顔で。
ゲームの仕掛け人が奴のそばに立った。
戦え、と告げている。
無理だ。
今、奴は戦えない。
俺も本当は気付いていた。
奴にニンゲンは倒せない。
そして、龍との契約者がいなくなれば…
奴はまともでいられない、と……