戯事

離れたニンゲン同士が言葉を交わす小さな道具を耳に当て、
奴の表情がほどけたので、
あの雌が死に損ねたのだと知れた。

かろうじて俺もお前も、終わりにならずにすんだな。

だが…どうやら時間はあまりないようだ。


「こちら側」のやつに目をつけられた、幼いニンゲンを奴は巣に連れ帰る。
お前がトドメを刺し損ねたのが、すべて悪いのだからな。

こどもを龍との契約者に押しつけ、奴がひとり横たわるのを見届けて、俺はその場を離れた。
今は、奴を見ていたくなかった。



いったい何を考えたのだか知らないが、こどもがカードをつかんで逃げ出した。短い足で奴にかなうわけもないのだが。
奴が不意に俺を呼ぶ。
こどもを目で追いながら、あごをしゃくってみせる。
俺は「向こう側」に飛び出して、こどもの周りを回ってみせた。

馬鹿なやつだ。
俺が、こどもを襲うとは思わなかったのか。
カードで俺を押さえ込んだつもりで、
気を許しているというわけか。
…うかつなことだ。

しかも皮をかぶって戦い始めたはいいが、鮫野郎の攻撃をわざと受けている。
こういうのをなんと言ったか…
そう、猿芝居というやつか。
馬鹿なやつだ。
そしてそれに付き合う俺も…


しかし、そんなものは長くは続かず。
緑の「ライダー」の乱入で、奴は本気になる。
「疾風」のカードを取り出し、俺の姿を変え、鮫野郎を始末する。
俺は、宙に浮く力の固まりに食らいついた。
紫の「ライダー」まで加わって、泥試合になってきたが、悪いが構っていられない。
まずは…少しでも力を蓄えなければ。
お前がここでやられたりしない限りは、そのほうが先だ。
一度青い身体になって、元に戻るとしばらくは…正直俺は使い物にならない。
お前は気付いていなかったかもしれないが…。
これは、お前の戦術ミスだ。

せいぜい幸運を…

…あれは「何」だ?

あの…こんじ…き…の…

…ち、くしょ…う…

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RYUKI