小児成人病

成人病と小児成人病


成人病って何、子供にも成人病ってあるの?

まず、成人病の勉強をします。更に、最近の子供達の食事は、ファーストフード、インスタントラーメン、ポテトチップ、マクドナルド、ケンタッキーチキンなど、脂肪の多い食事が多く、小児成人病が問題になっております。その実態を調べましょう。


  1. 成人病とは何か

    3大成人病:1+2+3+(付録)


    1. がん(癌):肉腫や白血病を含みます。→悪性腫瘍
    2. 心疾患(心筋梗塞、狭心症、虚血性心疾患、伝導障害) 
    3. 脳血管障害(脳卒中、脳梗塞、脳軟化症、脳出血)

    (付録)+糖尿病・高血圧症・高脂血症(コレステロールや中性脂肪が血液中に増える病気)

    成人病は一種の老化現象→車は車検時に古くなったバーツを代えられますが、人間の体は古くなったからとバーツを代える事は出来ません。成人病はバーツの老化現象による病気と言えます。

    1. 老化とは何か

      ストレーラーらのまとめ


      1. 第一に内因性である事→老化の原因は先天的因子(遺伝子)によって規定される部分が重要
      2. 第二に老化は非可逆的事象としての性格を有する→長期的には逆戻りして完全に回復する事はない
      3. 第三の特長は老化は進行性に起きる→進行に遅速の差はあっても、長い間停止することがないのが原則
      4. 第四には、老化現象で現れる機能変化は多くの場合に、生体にとって有害であり、脆弱化をもたらす

      これら四つの基本的な特徴が老化個体に出現する場合には、内部恒常性を保つ能力(ホメオスターシス)の低下という形でとらえられます。別の表現では、正常から異常へ傾いた時に、元の戻ろうとする予備力が減少するという事もできます。

      老化4原側が比較的純粋な形で観察される場合→生理的老化現象
      主として外因性の侵襲(環境因子)によって生理的老化にとどまらず、より広範かつ進行した老化現象を認める場合→病的老化現象
      病的老化現象+過渡的かつ過大な侵襲=疾病に進行

    がん

    細胞が無目的に限りなく増殖する腫瘍。遂には臓器の清浄細胞の働きを阻害し、肺や肝臓に転移して人間を死に至らしめる病気。
    日本人は消化器のがんが多かったが、最近肺癌、特に若い女の人の肺癌が増えています。 

    心疾患と脳血管障害
    いづれも組織を養う終動脈が詰まったり、破裂したりして組織壊死(組織の一部が死ぬ病気)を起こし、組織の一部の働きが失われる循環器の病気。
    心臓や脳の中心的役割をしている部分の壊死が起きると一瞬にして死亡することがある。
    終動脈の破裂→脳低動脈に多い動脈瘤が原因→くも膜下出血

    動脈がなぜ詰まるか


    1. 異物が内腔につまる→塞栓、血栓、気泡、癌細胞
    2. 内腔が狭くなる
      原因→コレステロールの沈着、繊維化→動脈硬化
    3. 血流が遅くなり、細動脈で血流が停滞する
      原因→動脈硬化、高血圧、心臓機能の低下
      →動脈硬化をすすめる危険因子である
    4. 外部からの圧迫
      原因→肥満・腫瘍による圧迫

  2. 脂質とは何か

    生体には水に溶けずに、非極性の溶媒に溶ける物質があり、これを脂質といいます。常温で液体状のものを油、個体状のものを脂と言います。
    脂質は、単純脂質、複合脂質、誘導脂質に分類されます。

    脂質の分類
    単純脂質 脂肪グリセリンと脂肪酸のエステル
    ろう高級脂肪族アルコールと脂肪酸のエステル
    コレステロール
    エステル
    コレステロールと脂肪酸のエステル
    複合脂質 リン脂質グリセリンと脂肪酸のエステルにリン酸と窒素化合物を含む
    糖脂質脂肪酸、糖質および窒素化合物からなる。人体ではスフィンゴシンをアルコールとする
    誘導脂質 脂肪酸特に遊離脂肪酸と呼んでエステル型と区別する
    コレステロール遊離コレステロールと呼んでエステル型と区別する

  3. 脂質の働き

    脂質は生体の中での最大のエネルギー貯蔵庫であり、外から食べ物によりエネルギー補給がされない時、活性組織を影響を与えずにエネルギーを供給して、生命機能及び生命活動を保つように働きます。
    脂肪は三大栄養素の内で単位当たり最も大きなエネルギー供給源です。

    リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸の3つの不飽和脂肪酸を複数以上持つ脂肪酸を不可欠脂肪酸と言いますが、これらが不足すると発育障害、皮膚炎の原因になります。

  4. 中性脂肪とは何か→TG(トリグルセライド)

    1. 肝で合成されるTG:脂肪組織より動員された脂肪酸や解糖反応により生じたアセチルCoA、グルセロアルデヒド-3-リン酸などからTGを合成します。リボ蛋白の型で血中に放出されますが、蛋白とTGの結合にはリン脂質が必要で、原料であるコリンの欠乏は脂肪肝の原因になります。
    2. 食事由来のTG:食後の血清中に出現するカイミクロンも大量のTGを含みます。
    3. 脂肪細胞に蓄えられた中性脂肪は、エネルギーの不足時には、ホルモン感受性リパーゼにより脂肪酸とグリセロールに分解して、血中に出され、グリセロールは肝臓でエネルギーとして利用され、脂肪酸は全身の臓器でエネルギーとして利用されます。 

      過剰摂取が続くとどうなるか→肥満になり、肥満に伴う成人病を合併します。

  5. 高脂血症とはなにか

    血液中にコレステロールや中性脂肪が基準値より越えて存在する状態。
    食事によりコレステロール値や中性脂肪値は増えるので注意

  6. コレステロールとは何か

    ステロールの17位に炭素8〜10からなる側鎖と5、6の間に二重結合、3に水酸基(-OH)のついた構造式の化合物をステロールと言い、この内で生体に一番多く、代表的なものがコレステロールです。
    コレステロールは体内で重要な働きをしており、脳神経細胞、内分泌器官、胆汁、卵黄に多く含まれています。

  7. コレステロールの働き

    コレステロールはリン脂質と共に、全身の細胞膜成分として重要な働きをしています。じゃたコレステロールにはステロイドホルモン、性ホルモン、胆汁酸、ビタミンDの材料になり、生命維持機構の大切な役割をしています。

  8. コレステロールの合成

    コレステロールは肝臓で合成されます。肝臓で合成されたコレステロールはVLDL(very low density lipoprotein)中の脂質成分になり血中に放出されます。VLDLは血中を流れている内に、脂肪組や筋肉組織に中性脂肪を与えながらm」LDL(low density lipoprotein)になります。従ってLDLの脂質成分はコレステロールになります。LDLになる過程で表層が引き千切られた副産物からHDL(high density lipoprotein)が作られます。

  9. コレステロールの種類

    LDLコレステロールは、末梢の臓器にコレステロールを渡すので、コレステロールを末梢へ転送する働きを持ちます。LDLコレステロールが多すぎると血管壁にコレステロールを沈着させますので、動脈硬化の原因になります。それゆえLDLコレステロールは悪玉のコレステロールといわれます。

    HDLコレステロールは、コレステロールが余った末梢臓器からコレステロールを取り、肝臓に逆転送します。そのため、血管壁からもコレステロールを拾って歩くので、HDLコレステロールは善玉のコレステロールと言われます。ですからコレステロールは動脈硬化のリスクファクターとしては最も大きな因子です。

    過剰摂取が続くとどうなるか→動脈硬化促進の恐れがあります。

  10. コレステロールを多く含む食品

    食品名常用量
    目安量
    ( )内はg数
    常用量
    エネルギー
    (kcal)
    常用量
    コレステロール含有量(mg)
    100g中
    コレステロール
    含有量(mg)
    主菜鶏レバー
    豚レバー
    牛レバー
    鶏手羽肉
    鶏もも肉(皮つき)
    鶏むね肉(皮つき)
    いか
    すじこ
    わかさぎ
    うなぎ(蒲焼き)
    たらこ
    ししゃも
    あなご(生)
    しゃこ(茹)
    うに(生)
    きす
    たこ(茹)くるまえび
    しらす干し
    ほたるいか
    どじょう
    あわび
    塩辛
    鶏卵
    卵黄
    うずら卵
    1人前(60)
    1人前(60)
    1人前(60)
    1人前(100)
    1人前(100)
    1人前(100)
    1杯(250)
    1人前(30)
    5~6尾(80)
    1串(60)
    ½腹(40)
    2尾(50)
    1尾(60)
    3尾(60)
    2~3個(30)
    小2尾(80)
    1本(80)
    中2尾(40)
    1人前(30)
    5~6尾(30)
    5~6尾(40)
    1人前(50)
    1人前(30)
    中1個(60)
    中1個(18)
    2~3個(30)
    67
    77
    79
    254
    182
    239
    190
    75
    80
    203
    46
    91
    101
    56
    44
    77
    79
    37
    53
    53
    35
    31
    30
    97
    65
    52
    222
    150
    144
    111
    95
    80
    750
    153
    152
    144
    136
    130
    96
    90
    87
    80
    80
    76
    75
    75
    72
    70
    69
    282
    234
    141
    370
    250
    240
    110
    95
    80
    300
    510
    190
    240
    340
    260
    160
    150
    290
    100
    100
    190
    250
    250
    180
    140
    230
    470
    1,300
    470
    副菜プロセスチーズ
    チェダーチーズ
    生クリーム
    2枚(40)
    1枚(20)
    大さじ1杯(15)
    136
    85
    65
    32
    20
    18
    80
    100
    120
    調味料バター
    牛脂
    ラード
    大さじ1杯(10)
    大さじ1杯(10)
    大さじ1杯(10)
    75
    94
    94
    21
    10
    10
    210
    100
    100
    嗜好品カステラ
    ケーキドーナッツ
    1切れ(60)
    1個(60)
    190
    258
    114
    66
    190
    110

  11. 肥満

    過食あるいは運動不足などにより摂取エネルギーの絶対的・相対的過剰のために、体脂肪が異常に増加した状態で、単純肥満といい、別に内分泌疾患による肥満の症候性肥満があります。
    要するに、一日に体を動かすのに必要なエネルギーより、摂取するエネルギーの方が多いので、生体は余ったエネルギーを皮下脂肪の形で蓄えて置いて、飢餓などの非常時に使用できるように対処しているのです。

    肥満度=(実測体重ー標準体重)/標準体重×100(%)

    標準体重:性別・年令別・身長別標準体重 滋賀県では昭和62年に滋賀県児童生徒の25%について調査、地域別も含めて報告。
    成人の目安 標準体重=(身長ー50)÷2又は標準体重=身長2(m)×22

    小児の肥満の原因


    1. 肥満度が30%以内であり、2年以上の経過で肥満度の増加が10%以内のもの→良性肥満
    2. 肥満度のいかんにかかわらず、2年以内の経過で肥満度が10%以上増加したもの→悪性肥満
    3. 身長の伸びの悪化に伴い肥満度が増加傾向を示しているもの→症候性肥満

      良性肥満と悪性肥満の特徴

      検討項目良性肥満悪性肥満
      発症年齢2歳以下、多くは生後6か月以内2歳以後、多くは5〜10歳
      肥満の程度著しい肥満になることは少なく、肥満度は30%未満著しい肥満になりやすい
      運動活発に体を動かす体を動かさない
      情緒安定している不安定
      脂質代謝異常がない異常を伴うことが多い

  12. 高血圧

    高血圧を決める因子


    1. 体内循環血液量の増加
    2. 末梢血管抵抗の増加(動脈硬化)

      血圧を下げる→体内循環血液量の減少→利尿剤
      →末梢血管抵抗を下げる→動脈硬化の予防・末梢血管拡張剤

    3. 糖尿病

      1. 代謝性:インスリンの分泌不全、あるいは末梢組織のインスリン感受性の低下により、血糖値が上昇し、尿中にブドウ糖のでる状態を言います。
        最終的には白内障、網膜剥離による視力障害、腎不全、肝不全、脳血管障害、血管障害による末梢組織の壊死などの重篤な障害を起こします。
        幼児期から罹り、1型、インスリン依存型(IDDM)と呼ばれます。

      2. 中学生位から罹るのは2型、インスリン非依存型(NIDDM)と呼ばれます。
        肥満による末梢組織のインスリン抵抗性が原因です。

        腎性糖尿→腎臓における血糖のろ過装置の異常により低血糖でも尿中に糖が放出される病気を言います。血中の糖は高くありません。

      3. 小児成人病とは何か

        原則的には大人の成人病と同じ疾病を言います。→1。成人病とは何かの項参照

        癌は小児成人病に入れない

        小児成人病の分類
        第1群いわゆる成人病が小児期にすでに顕在化しているもの糖尿病の増加。消化器潰瘍の増加、若年性虚血性心疾患など
        第2群大人の主な死因になる病気で、その原因が子供の時にあると考えられるもの動脈硬化の原因となる肥満や高血圧、糖尿病など
        第3群子供の時の病気(成人病)が大人になっても続くもの慢性の腎臓病や先天性心臓病

      4. 小児成人病の食事療法

        1. 問題点の把握と認識

          肥満及び肥満を誘因とする小児成人病の食生活の問題点:食べすぎていないかのチェック
          嗜好偏重の食事内容、間食の量または質の不適性(嗜好飲料、スナック菓子の過食、主食物の摂取)
          (鶏卵1個は80キロカロリーで1単位とすると、スナック菓子は7単位で卵7個分、インスタントラーメンは5単位で卵5個分のカロリーとなる。
          →食品80キロカロリーガイドブック:女子栄養大学出版部 900円)、朝食の欠食、夕食偏重の食事内容

        2. 成長、発達に必要な栄養素はバランスよく取る

          1. 蛋白質は不足しないようにする
            魚、肉、卵などの動物性蛋白質と大豆、大豆製品の植物性蛋白質
          2. 糖質は多くならないようにする
            御飯、パン、めん類等の主食→毎食一定量を食べるように心掛ける
            いも類(ポテト)、はす、かぼちゃ、とうもろこし等の糖質を多く含む食品→1日どれか1品以内
            総摂取エネルギー量に対し糖質の占める割合は50%程度
          3. ミネラル、ビタミン類が不足しないように、十分摂取する
            牛乳、ヨーグルトは子供の発育に大切なミネラル、ビタミン類を多く含む
            →どれか1日に1ー2本摂取
            果物はリンゴ小1個程度を目安に毎日平均して食べる
            野菜、海草、きのこ類は偏ることなく摂取
          4. 脂質は植物性の油を用い取り過ぎない
            脂質は高エネルギーなので多く取らないよう注意
            中等度、高度肥満の場合は揚げ物類、マヨネーズ、ドレッシングなどの油料理を1日の内に重複して食べないことが必要
            高脂血症のある場合は→飽和脂肪酸を多く含む肉類および肉類の加工品、動物性脂肪は控え、多価不飽和脂肪酸を多く含む植物性油、魚油、青みの魚などの割合を多くする
          5. 砂糖を多く含む菓子類、ジュース類の間食は控える
            ジュース、甘い菓子類には砂糖が、スナック菓子類には飽和脂肪酸が多く含まれる→高エネルギー
            これらの過剰摂取→栄養のバランスの崩れ、肥満促進、高脂血症、脂肪肝の誘因
          6. 食物繊維を多く取る
            食物繊維は糖質や脂質の吸収を遅延、抑制する
            →肥満、高脂血症、糖尿病、脂肪肝の予防
            野菜、海草、キノコ。果物などよく噛んで食べる

        3. 正しい食べ方を習慣付ける

          1. 味付けは薄味を心掛ける
          2. 三食を欠かさず、規則正しく食べる
          3. よく噛んでゆっくり楽しく食べる
          4. 夜食は避ける
          5. まとめ買いや多く作る事は避ける
          6. 見える所に食べ物を置かない

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