よく見る小児のヒフ病

外来でどんな小児のヒフ病をよく診るか


伝染する、汚い、ヒフ病の差別をやめよう!

この度伝染病の法律が改正され、昔から嫌われて隔離されて治療を受けていたハンセン氏病(癩病)も一般外来で通院で治療できるようになりました。とかく嫌われ勝ちでアトピー性皮膚炎などもいじめの対象となっています。ヒフ病に対する認識をこの際改めて下さい。

小児に良く見られる皮膚疾患と問題点

ー誤った知識で小児を差別しないためにー

皮膚病は昔癩病という隔離を要する伝染性の疾患があり、伝染すると一生施設に入らないといけない法律があり、しかも身体がぼろぼろになる死病であると一般には考えられ、私自身耳鼻科医の父から、終戦直後上野公園などにいた汚い浮浪児などは「さわってはいけない」と注意され、汚い子や皮膚病の子を差別していた時期がありました。現在、癩病は一般外来で通院治療されていますし、天然痘などの怖い皮膚病は殆ど絶滅され、伝染性の怖い皮膚病は無くなりました。それにもかかわらず学校ではアトピー性皮膚炎の子を「汚い」と差別したり、みずいぼやとびひの子と一緒にプールに入れるのを嫌がる父兄がいると聞きます。誤った皮膚病に対する考え方を替えて戴こうと思います。

一番関心のあるのは伝染するのかしないのかという事と思いますのでまずその話からします。


  1. 感染症

    伝染する皮膚病は感染症と言われます。
    原因としては目に見えないもので毛じらみやだに、南京虫などは寄生虫という範疇に入ります。
    目に見えないものといってもいろいろあって、電子顕微鏡でないと見えないウィルス、光学顕微鏡で見える細菌、真菌(かび、酵母)、原虫(スピロヘーター、マイコプラスマ、トリコモナス、リケッチア、つつが虫)等です。
    感染する媒体にもいろいろあって、空気中から鼻、のど、気管支、肺などの呼吸器を介するもの、食物や手指から口、胃、腸等の消化器を介するもの、輸血により血液に直接入るもの、皮膚と皮膚との接触によるもの、最近エイズなどで話題になった性交時に精器や口腔の粘膜より感染するものなどいろいろです。
    伝染する強さはウィルスや細菌そのものの強さにもよりますが、感染する方の免疫力の差にも拠ります。つまり同じ量のウィルスや細菌に侵入、接触されても免疫の強い人は感染しないし、免疫の弱い人には感染します。(風邪でも同じ事が言えます)

    治療面から見ますと、ウィルスには現在の所一部を除いて有効な治療はありません。安静にして二次感染を防ぐので手一杯です。
    細菌や真菌に関しては抗生物質が有効で注射、経口投与、局所塗布などが行われます。

    よく見られる感染症皮膚疾患の原因別分類

    1. ウィルスによるもの

      水痘(みずぼうそう)、麻疹(はしか)、風疹(三日ばしか?)、突発性発疹(三日ばしか?)
      これらは原則として一度かかると免疫ができて二度とかかりません。

      単純疱疹(ヘルペス性口内炎)、帯状疱疹、手足口病(コクサッキーウィルス)、伝染性紅斑(りんご病、第5病)
      これらは風邪と診断される場合が多くあります。以上は全身疾患の一部として皮膚に症状の表れた皮膚病です。

      ウィルス性皮膚疾患として尋常性疣贅(いぼ)と伝染性軟属腫(みずいぼ)
      どちらも再発が多いので放って置いても治りますが、どうしても取りたいという場合は前者は外科的切除、後者はピンセットでつまんで内容物を出します。みずいぼはプールの時期になると医師を受診する人が多いようですが、小児科医は放置する場合が多いようです。伝染力はさほど強くなく、添い寝している母親に伝染したという例はありますが、明らかにプールで感染したという例は未だ見ません。

    2. 細菌によるもの

      フルンケル・カルブンケル(節・癰)、化膿性アテローム、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群 (ssss)、 伝染性膿痂疹(とびひ)
      とびひの場合は見た目が汚らしいので医師を受診しプールに入って良いか聞くのが望ましい。原則は皮膚表面が濡れている状態ではプールは控えた方が良いと思います。原発巣を掻きむしった手であちこち掻くと病巣が転移するのでとびひといわれますが、ブドウ球菌が多くプールで他人から移ったという例はあまり聞きません。

    3. 混合型

      尋常性座瘡(にきび)、おむつ皮膚炎→接触性皮膚炎(尿によってかぶれたもの)
      にきびは放置しても構いませんが、混合感染して痛みの強いものや、あまり多すぎて醜い場合はヒフ科専門医師へ受診した方が良いでしょう。

    4. 真菌によるもの

      表在性皮膚カンジダ症、浅在性白癬。みずむし、しらくも、いんきん、たむしなどと言われるグループで、真菌と呼ばれるかびやこうじの仲間による皮膚病です。水を介して伝染しますが、プールなどより風呂場の湿ったスノコやじめじめしたスリッパなどから移る場合が多い。みずむしがあるからプールへ入れないというのは明らかに行き過ぎです。

    5. 寄生虫によるもの

      疥癬→疥癬虫による。

  2. アレルギーによるもの

    1. アトピー性皮膚炎

      近年罹患児が増え問題視されてきた疾患です。

      アトピーの語源はギリシャ語のatopos(奇妙な)で、奇妙な病気との意味。1923年コカArthur F.Cocaが、枯草熱(花粉症)、気管支喘息を中心とする遺伝傾向の強い一群のアレルギー疾患包括する疾患概念として提唱されました。

      病態は特種なアレルゲン(抗原)が人の免疫グロブリン(IgE) に反応して抗原抗体反応を起こし、皮膚に特種な皮膚炎を起こすものです。

      学会でもアトピー性皮膚炎が現在本当にアレルギーなのかどうか論議を呼んでいますが、混乱しているのは専門家内でも、治療に食事で蛋白質の摂取制限を必要とする小児科グループと、摂取制限の必要無しとする皮膚科グループとで対立していることです。どのみち個人差、遺伝性の強い病気ですからかかりつけの医師と家族と一体となって気長に治療することが必要と思います。

    2. 接触性皮膚炎

      いわゆる「うるしかぶれ」で、アレルゲンとなるものに触れることによって、ヒフ炎を起こします。アレルゲンとしては、金属、薬品、繊維、毛皮、動物、蛋白質など地球上に存在するものは殆どアレルゲンとなりますので、注意が肝要です。

    3. 血管性紫斑病

      免疫複合体の関与した毛細管の炎症性病変です。

  3. 先天性のもの

    血管腫(あかあざ) 母斑性細胞母斑(あざ)、尋常性白斑
    血管腫の苺状の赤いあざは放置しておいても自然治癒しますが、表面が平坦な黒いあざ(母斑性細胞母斑)や青いあざ、白いあざ(尋常性白斑)は治癒が難しいので専門医に相談して下さい。

  4. 原因不明

    川崎病
    高い熱が続いて、頚部のリンパ腺が張れ、抗生物質が効きません。
    中には心臓の冠動脈が細くなって、小児の狭心症や心筋梗塞を起こす患者がいることで有名になりました。

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