薬の話

薬は誰のもの?くすりは毒にも薬にも


お爺さんの薬を貰って飲んでは駄目!

薬は飲み方次第では毒にも薬にもなります

ここでは処方せんや薬の飲み方や作用について学びます。副作用や相互作用についても学びます。


  1. 処方せんの話

    医薬分業をしている医療機関に行くと、帰りに窓口で薬の変わりに処方せんを受取り、「近くの調剤薬局と看板の出ている薬局へ行って薬を貰って下さい」と言われて戸惑っている患者さんを見かけます。
    処方せんは医師が薬を出す時に書くいわばさじ加減のさじに当たるもので、薬の名前と分量、服み方、服用日数など将に内科診察の集大成が書いてある重要な書類です。

    処方せんには院内処方せんと院外処方せんとあり、院内処方せんは病院や医院の内部だけで回り患者さんの目には触れませんが、院外処方せんは直接患者さんに渡されますので、内容を見る事が出来ます。

    まず薬には2種類あることを覚えて下さい。医師の処方せんが無いと出せない保険薬と薬剤師の判断で出せる一般薬の2種類です。例えば同じバッファリンでも、医師が処方するのと、薬局で自由に買えるのとは、違う薬なのです。
    処方せんにはこの保険薬の名前が書いてあります。
    芸能人に本名と芸名とあるように、薬の名前も成分名と商品名と2種類あって、同じ成分の薬でも製薬会社によって名前が変わるのでややこしいのです。中には一つの成分の薬に10以上の商品名が付けられて売られている薬もあります。
    また成分の分量を変えただけで保険薬と処方せん無しで買える一般薬を同じ名前で売っている薬もあって混乱させます。

    薬には内服薬と外用薬と頓服とあります。内服薬は水やお湯と一緒に口から服む薬、外用薬は皮膚や粘膜に塗ったり、目に入れたり、のどに噴霧したり、肛門から刺したりする薬です。
    頓服とは定期的に飲む薬ではなく、痛い時や発熱したりした時に服む薬です。
    分量は薬の剤形によって錠とかカプセル、J、N等と記載してあります。錠とは薬の成分を糖などに混ぜて固めたもの、カプセルとは昔苦い薬をオプラートに包んだように、成分をフイルム膜で包んだ薬です。散薬は粉薬です。
    また薬局や医院によっては薬を包装材料から出して一回分毎に分包してくれる所もあります。

    服み方や分量に対する質問は処方した医師にして下さい。

  2. 薬はだれのもの

    富山の薬の行商人は置き薬を置いて行きます。薬は胃腸薬、かぜ薬、頭痛薬、婦人病薬などとおおまかに分類してあって、年令や体重に関係なく胃腸の悪い時は胃腸薬を、かぜを引いた時はかぜ薬を服み、翌年薬の行商人は足りない分を補ってその分の費用を請求します。この場合薬は行商人のもので各家庭にミニ薬局を置き、家族が症状に合わせて薬を選んで服用します。

    医師の処方した薬を富山の薬と同じに考えている人を時々見かけます。母親に処方されたかぜの薬を子供が同じ症状だからと服ませたり、ご主人の服んでいる血圧の薬を今日は頭が重くて血圧が高そうだからと奥様が服んだり、祖父と同じ湿疹が出来たからと孫の湿疹に祖父に処方された軟膏を塗ったりした例を外来の診察時に良く耳にします。
    これらの薬は医師がその患者に処方したもので、その家族に処方したものではないのです。症状や年令、体重や糖尿病、喘息などの併発によって同じように見えるかぜや血圧の症状でも服めない薬があります。
    富山の薬と同じように考えて家族で回し服みするのは絶対止めて下さい。軟膏などの外用薬でもステロイドのあるなしによってウイルス性の皮膚病には塗ってはいけないものもあります。
    湿布薬も冷湿布と温湿布とあって使い方が違います。

    特に妊婦や乳幼児、高齢者が他人に処方された薬を服むと、新生児や乳幼児、高齢者に副作用が強く出て、危険な状態になる事もあるので注意が必要です。

    また薬には有効期限があります。
    同じ人に処方された薬でも、例えば1ー2年前のかぜの時に処方された抗生物質(化膿止め)等は服んでも効かない場合がありますから、古い薬は服まないで下さい。

    薬の保存は冷暗所、例えば冷蔵庫などが良いと思います。直射日光は避けて下さい。

    また病院等で「何かあった時に診てもらう」ための繋ぎに医師に薬を処方してもらい、実際は服んでいない老人がいると聞きます。
    年間20兆円を越す医療費の無駄遣いになりますので、不要な薬は貰わないようにしましょう。

  3. くすりは毒にも薬にも

    薬は用い方や量によって、同じ薬でも毒になったり、薬になったりします。
    薬ではありませんが、X線は浴び過ぎるとがんを作り、また線量によってはがんを治すのに使われます。同じ事が薬についても言えます。例えばがんを治す抗がん剤は、用い方によっては発がん剤になります。これと同じようなことがほとんど全ての薬について言えます。

    薬の副作用というのを聞いたことがあると思います。かぜ薬や痛み止めの長期、大量投与で胃潰瘍を作ったりするのが副作用です。もともと薬は体のいろいろな所に作用するのであって、病気に効く以外の作用を副作用と呼んでいるに過ぎないのです。かぜ薬にしても、解熱鎮痛剤、鎮咳剤、去痰剤、消炎剤、抗生剤とあり、その患者の症状に応じて、副作用を考慮して医師は処方するのです。

    良く外来で自分の診察が終った頃、「ついでに主人のかぜ薬も下さい」とか、「お祖父さんのかぜ薬が余っているから、子供に服ませて良いか」とか聞かれますが、どれも間違いです。

    血圧の薬の話をします。血圧を下げるには、循環血液量を減らすか、末梢血管の圧力を下げるかします。そのために、利尿剤と言って、尿をたくさん出して、循環血液量を減らしたり、いろいろな物質のやりとりを邪魔して末梢の血管を広げたりします。だから血圧を下げる薬は服み始めたら、医師の指示に従ってきちんと服まないと副作用が出ます。今日は調子良いから服まない、今日は高そうだから2倍服むという服み方は一番いけません。

    又、複数の薬を飲んでいる場合に、薬によっては、相互の薬の効き目が効きすぎたり、効かなくなったり、場合によっては違った効き目になったりすることがあります。これを薬の相互作用と言います。ですからある医院で薬を貰った時に、他の医院や病院でも薬を貰っている場合にはその旨必ず申し出て下さい。健康手帳などに、それぞれの医療機関で貰った薬を控えておくのが肝要です。

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