“かぜ”は風邪症候群といわれるように、一つの病原菌からなる感染症ではなくて、上気道炎から鼻炎、咽頭炎、喉頭炎、気管支炎などを総称した症候群です。最も狭義にはインフルエンザウイルスによって引き起こされた感染症を言います。
風邪といっても一つの病原菌からなる単一の病気ではありません。風邪の病原菌は細菌、ウィルス、マイコプラスマ(原虫の一種)など色々あり、有害ガスや煙草の煙、じんあいなどと共に空気中に浮かんでいます。これらを仮に外敵と呼んでおきましょう。
人間は生物としての生命維持のため1日約1万gの空気を呼吸運動で肺に取り込んでいます。当然これらの外敵は呼吸と共に鼻孔から人間の体内に侵入してきます。
これらの外敵に対して人間は自分の体を守るために防御機構を持っています。防御機構とは、
鼻孔の毛、鼻道の粘膜(異物<外敵>の侵入を防ぐー濾過ー)
入りくんだ鼻道(外気を加温、加湿して気道の粘膜や線毛運動を保護ー生体保護ー)、
咽頭・喉頭における扁桃腺・舌根扁桃・アデノイドなどのリンパ装置(白血球による細菌の貪食・リンパ球による微生物<外敵>の不活性化ー殺菌・免疫作用ー)、
気管、気管支の腺毛運動、粘液、せき(侵入した異物<外敵>を外界へ排出ークリーニング作用ー)等
この外敵と人間の防御機構との戦いの結果、鼻水が出たり、のどが痛くなったり、熱が出たり、せきやたんが出たりします。これらの症状を総称して風邪と言っているのです。
したがって外敵より、体の防御機構の方が強ければ、風邪はひきません。しかし、疲れていたり、寝不足だったり、ストレスが強かったり、無理を重ねたりして人間の防御機構の方が外敵の力より弱くなると、外敵が防御機構に勝って風邪をひきます。これを感染したと言います。
そして、咽頭、喉頭にあるリンパ装置を打ち破って更に奥まで進むと気管支炎や肺炎、感冒性の胃腸炎となって疾患が重症になって行きます。
だから、風邪を引かないようにするには人間の防御機構を強める事が一番大事で、そのためには昔から言われているように安静が第一です。よく薬に頼る人がいますが、薬は熱を下げたり、のどの痛みを和らげたり、細菌の増殖を妨げたり、せきを鎮めたり、鼻水の出るのを少なくしたりはしますが、根本の細菌やウィルスを直接やっつける特効薬はありません。ですから、仕事をしながら、学校に行きながら、薬を飲んで風邪を治そうというのは間違った考え方です。
流行性感冒とは風邪のうち、インフルエンザ・ウィルスによる呼吸器の感染症をいいます。4ー5年前には、学校で冬になると風邪の予防接種をしていました。これはその年にはやる流行性感冒のウィルスの株を厚生省が予測してそのワクチンを小学生や中学生に義務付けて、日本全体で集団防衛をしようという考えによって実施されていたものです。
御存知のように副作用が一部の人に出て、一部の父兄から行政機関に訴訟が起きて風邪の予防接種は学校での義務接種をやめ、個人の意志による個人防衛と変わりました。
学校での集団感染、学級閉鎖を防ぐには次の事を必ず守って下さい。