O-157

0−157とは何か


法定伝染病になった

昨年大流行して死者まで出したO-157は法定伝染病に指定されました。食中毒であれば汚染された食物を食べた人だけに発症するのに対し、伝染病は感染した人の便だどから二次感染します。さて、今年もO-157の大流行はあるや否や?


  1. 発見は?

    1982年米国でハンバーガー食中毒事件があり、原因菌としてO157:H7の血清型を持つ腸管出血性大腸菌(HEHC)が発見されました。日本では1986年愛媛県松山市での、1990年埼玉県浦和市での集団発生によって注目されるようになりました。

  2. 昨年の発生は?

    昨年の発生は?発生は年毎に増え、1996年5月に岡山の邑久の小学校で集団発生、468人が発症して溶血性尿毒素症候群(HUS)で死者2人を出しました。7月に堺市で爆発的な集団発生を見て、5725人に発症、805人が入院、108名がHUSになりました。発生は全都道府県に及び、平成8年で9451人に発症、入院1808人、死者は12人に及んでいます。滋賀県では平成8年は30人に発症、死者はなしでした。

  3. O-157の分類は?

    大腸菌は元々人間の大腸の中に常在、寄生する菌で、食物残滓物等を分解、吸収したりして病原性はありませんが、腸管外に出て他の場所に寄生すると、尿路感染症(ぼうこう炎)、創感染症(おでき)、随膜炎、菌血症、肺炎などを引き起こします。しかし、ある種の大腸菌は人の下痢症の原因となることが知られており、これらの菌は病原性大腸菌と呼ばれて一般大腸菌と区別され、食中毒菌に位置付けられています。食中毒菌には、腸管病原性大腸菌、腸管毒素産生性大腸菌、組織侵入性大腸菌、腸管出血性大腸菌、腸管付着性大腸菌の5種類が知られており、今回の菌は4番目の腸管出血性大腸菌に分類されます。

  4. 名前の由来は?

    少しむずかしくなりますが、大腸菌はその菌体抗原(O)と鞭毛抗原(H)による血清型で表現され、今回の原因菌は米国で最初に分離されたO157:H7の血清型を持つ事からO157と呼ばれています。ちなみにOとHの組み合わせによる毒素型大腸菌の血清型は50種以上と報告されており、今回の一連の食中毒でも他にO26型なども見付かっています。

  5. 一般の大腸菌と何処が違うの?

    菌の種々の特徴は、ヒトの常在菌である大腸菌とほぼ同じですが、最大の特徴はVelo毒素を産生することです。Velo毒素は、培養細胞の一種であるVelo細胞(アフリカミドリザルの腎臓由来)にごく微量で致死的に働く事から名付けられました。

  6. 症状と下痢は?

    全く症状がでない人もいますが、普通は感染後4〜8日の潜伏期間で、腹痛や発熱などの感冒(かぜ)に似た初発症状に続いて、水様性下痢が始まります。嘔気(吐き気)や嘔吐(げろ)は半数位に見られます。ひどい人は激しい腹痛を伴う人もいます。その後の下痢の回数は次第に増加し、1〜2病日で下痢便に鮮血の混入が見られ、典型例では便成分をほとんど認めない血性下痢となります。

  7. Velo毒素産生は?

    大抵は発症後4〜8日で自然に治癒しますが、5歳以下の乳幼児や基礎疾患を持った老人では、本菌に対する感受性が強く、重症に至る例もあります。消化管に入ったO-157菌は、初発症状発現の数日から2週間後、増殖して腸管の絨毛内に定着、Velo毒素を産生して血球を破壊し、感染した有症状者の6〜7%は溶血性尿毒素症候群(HUS)又は脳症と呼ばれる重症型に移行します。この時期(初発症状発現から2週間後)になると、顔色不良、出血斑、血尿、浮腫などが著明になり、眠気に引き続く腦出血や喀血に引き続く肺出血などの臓器出血を起こして死に至ることもあります。

  8. 血性尿毒素症候群(HUS)の症状は?

    HUSは溶血性貧血、血小板減少、急性腎機能障害の3主徴が揃ったものを言います。随伴症状としては、乏尿、浮腫、出血斑、頭痛、傾眠、不穏、痙攣、血尿、蛋白尿、沈査で尿細管上皮がみられます。女児に圧倒的に多く、次いで老人。発熱がある場合は重症になりやすいので気を付けましょう。

  9. 感染経路は?

    大腸菌ですから、保菌者の便から、叉は菌に汚染された食物から、感染者の手や口に菌が移り、経口的に感染します。感染が成立する菌量は約100個とも言われ、従来報告されている食中毒菌の中では最も少ない菌数です

  10. 蝿からの伝染は?

    O157菌は蝿の体の中で4〜5日生きられます。そして、蝿は食事の時唾液を出しながら食べますので、蝿からの感染は十分に考えられます。調理後余り放置せずに食べるのが肝要です。

  11. 感染の予防は?

    まず、食事の前に手を石けんなどで充分に洗う事。そして菌に汚染されていると思われる食肉などを生で食べない事。そして食器や使用した器具を消毒すること。

  12. 消毒は?

    消毒剤に対する抵抗性は低く、ほとんど全ての消毒剤は常用濃度で有効です。叉60度以上の煮沸で短時間に死滅します。食品を供応する店舗では食品衛生法施行規則別表第7の

    *食品に直接接触する器具の表面は、洗浄の後常に76.5度以上の熱湯、蒸気叉は衛生的に無害且つ、有効な殺菌剤で消毒すること。

    を守れば問題ないといわれています

  13. 二次感染の予防は?

    汚染された食肉から他の食品への二次感染、並びにヒトからヒトへの二次感染の予防が大切になります。それにはその菌の性質を知って下さい。まず、低温には強いが高温には弱い(一般にO157菌はー180度位でも生き延びられ、70度の煮沸で死ぬと言われます)。叉、りんごジュース位の酸性の液中でも死滅しませんし、繁殖力は強く溜水の中に1個の菌が入ると短時間に増殖します。ですから、冷凍庫から解凍して長時間放置したものや、長時間室温に放置した弁当やジュース、未消毒のプールなどには菌が繁殖してる可能性があります。それらを充分理解した上で、食品の充分な加熱(薄い肉・ウェルダン)、調理後すぐ食す、飲料水の衛生管理(井戸水、受水槽)、手指の洗浄、まな板・包丁に至るまでの使用器具の消毒などに努めます。

  14. プールは?

    湖水浴での集団感染が欧米の学会報告であり、昨年の日本の大流行時には、その文献から大事を取って、小中学校のプールは閉鎖されました。普通の塩素濃度の殺菌法で殺菌できますのでプール内での感染は無いとされていますが、プールサイドや脱衣場で保菌者から直接感染することも考えられますので、かぜを引いているなどの抵抗力の弱い子供は「君子危うきに近寄らず」が無難でしょう。下痢をしている子供はプールに入らない事は当然の事です。

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