壱良 勝の「馬名研究ファイル」−−−1.

 
 

プロローグ 

 国内で生産されるサラブレッドだけでも1万頭近くにのぼる。そのうちのどれぐらいが中央に登録されているかはよく知らないが、登録する以上は名前が必要となる。つまり、馬主になれば必ず自分の馬の名前を考えなければならない。馬名は「2文字以上9文字以内」と決められているので、よくもまあ、重ならずにこれだけの数がカバーできるもんだなぁと思う。あくまで机上の計算であるが、試算してみると2文字馬名馬ですら8330通りあってあとは1文字増える毎に119をかけた数字になるわけで、3文字なら991270通り4文字なら117961130通りにもなるわけで(もちろん、机上の計算であるから例えばコャとかヌィといったあり得ない小文字の組み合わせを減算せねばならないが、文系の僕には辛いので、そーゆー細かいことには気にしないで、まあ、すんごい数になることだけ感じていただければよろしい)、そうそう簡単には重ならないのである。いちおう、規程上でもGI競走の勝ち馬やその他有名な馬との同名馬もしくはまぎらわしい名前は許可されない。とは言ってもハイセイコーとまぎらわしいダイセイコー(多分大成功の意だろうが)なんて馬が現役で走っていることからして、その実あいまいな部分も多々あるようだ。
 そこで今回はそんないろいろな馬の名前について様々な観点から研究してみた。


 

短い馬名

 一番短い名前といえば、昔は「9文字以内」としか規定がなく、1文字の馬もいた。(矢の意か)などがそれであるが、今では規定が「2文字以上9文字以内」に変わっているので、どんなに短くても2文字である。2文字の馬名といえば、真っ先に思い浮かぶのは2冠牝馬ベガ(こと座のα星の名前)であろう。他には天皇賞馬レダ(古代ギリシアの王妃の名前)やサクラシンゲキの父ドン(英語で首領)などが有名。
 他に思い付くものといえば、中央アラブの末期に走っていたロボ(ロボットだろう)や関東の障害で走っていたコー(???)武豊騎乗で準オープンまでいったマヨ(馬主の娘の名前)、福島の未勝利でしゅっちゅう(←関西弁か?)出ていたプチ(プチケーキとかのプチだろう)、現役では注目の4歳馬ロロ(???)や宝来クンのお手馬にもトム(ネコじゃないよね?)やジル(ソ連の高級車か?)がいる。結構あるので、皆さんもいろいろご存じのことと思う。


 

達筆?

 馬主になると、毎年必ず1頭は馬を持たなければならない。そしてその馬名を決めて「馬名登録申請書」をJRAに提出しなければならない。これは所定の用紙に馬名・父・母・母父・所属厩舎を記入するものであるが、馬主の中には随分と達筆な方もいらっしゃるようで、JRAの係官が読み間違えることも時々あるようだ。
 有名なところでは有馬記念をレコード勝ちしたダイユウサクも馬主さんはダイコウサク(母父ダイアトムのダイと馬主の息子の名前コウサク)にするつもりだったらしいし、桜花賞2着馬ラフオンテースラフォンテーヌ(フランス語でラ・フォンテーヌ)とするつもりだったという。大女優・高峰三枝子さんの持ち馬でオークスに勝ったスウヰイスーも本当はスウィートスー(かわいいスーちゃん)にするつもりだったと聞くが、どこをどう読んだらこんな名前になるのだろうか?


 

宣伝

 馬名には商業目的が明らかなものや、本人の承諾のない個人名を付けてはいけないことになっている。昔は確かにマルマンガスライタなんてモロな広告馬もいたというから、こんな規律ができたのだろう。とはいうものの、焼き肉チェーン店と同名のテンダン(天壇)やくるくる寿司チェーン店と同名のスシボーイ(すしボーイだけど)というのもいたし、オープンまで上がったモンチッチも著作権に問題なかったのだろうか?ライズドラミチャンミッキーダンス(主戦松永幹夫というのも笑えるが)、トラストピカチュウも危ないのではなかろうか?
 また、冠名として使われている「アグネス」も馬主の娘が昔アグネス・チャンのファンだったことから付けられたものだが、アグネスのサイドが許可したかどうか知らないし、準オープンまで出世して3回も万馬券を出したサダマーサーもさだまさしさんが許可したとは聞いていない。大昔、大井にはタケユタカという馬もいたぞ。
 それよりも、JRAのレース名と同じクリスタルカップなんかはよくぞ審査を通ったものだ。


 

省略

 馬名の「9文字以内」に引っかかってどうしても希望する馬名が付けられない場合もある。それなら違うのを考えればいいのに、強引に枠の中に放り込む馬主さんもいる。
 ハイセイコー産駒のダービー馬カツラノハイセイコは最後の音引きを無理矢理取ってしまった。同様なものにパッシングレンチャビューチフルロマンシンコウスプレンダがいる。「忘れな草」を意味するForget-me-notはホゲットミーノット(胸がムカムカする訳じゃなし)なんて訳の分からん名前になったし、「大西洋」を意味するAtranticも冠号タニノをつけたがためにタニノアトラテックという強引な名前になった。どうしてそう冠号にこだわったんだろう?
 なお、マサラッキナイスネイチャのように外す必要のない音引きを外している馬もいるが、これは画数を凶数にしないためとかインパクトを与えるためとかいう理由だそうだ。


 

リピート馬名馬

 リピート馬名馬なる馬がいる。同じ言葉を2度3度と繰り返すものである。それにどんだけの意味があるか知らないけど、時折このパターンの馬を見かける。
 2度繰り返しパターンではドリームドリーム(I Dreamed a Dreamとは何の関係もない)やライズライズ(ライズって冠号じゃなかったっけ?)というのがいるが、よりインパクトの強いのは3度繰り返しパターンの方だろう。京都記念やきさらぎ賞を勝ったナイスナイスナイスや皐月賞で牝馬ながら5着と健闘したダンスダンスダンス(この2頭は実は全兄妹でともに父にナイスダンサーってんだから聞いて呆れる)、3歳時はオープンで入着を繰り返したラヴラヴラヴ(愛して愛して愛しちゃったのよって歌があるが、多分関係ないだろう)がいる。他にもテンリテンリテンリ(これも冠号やっちゅうの)とか何が楽しいのかランランラン(走れ走れ走れ!かも。自動車保険じゃあるまいし)などもいた。

 
 
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