ユタ州にあるソルトレイクはその名の通り塩の湖である
琵琶湖の9倍も面積のある塩湖は塩分濃度が27%と海水の4倍もあり 生息
しているのは小エビだけである

ソルトレイク・シティの飛行場からサ
ンフランシスコへ向けて飛び立った飛行
機から下を見下ろすと 乾いた白い塩が
山間の平地のあちこちに広がり 雪で覆
われたようにまぶしい そのような光景
が飛び立ってから30分近く眺められた
かつては海中に沈んでいたであろう大地
塩に覆われた平原 は いまでも肥沃とは言えない
その昔 キリストが歩いたパレスチナの「死海」にも似たソルトレイクの近
くに19世紀半ばから街を築いたのは キリスト教の流れを汲み シオン(神
の国)の実現を信じるモルモン教の人々である ソルトレイク・シティの市民
の6割以上はモルモン教の信者だそうである そのせいか 人々は笑顔を絶や
さずフレンドリーである 以前バスを使った一人旅で立ち寄ったときの印象で
は ソルトレイクは治安のよい街だった 街を歩いても小銭をねだられなかっ
たのはソルトレイクだけだった
ホテルから見たモルモン教会
ソルトレイク市郊外の閑静な住宅街を妻と訪ねたことがある
かつて日本で妻にお茶を教えた先生は 30年余り前にこの地に移住した
レンタカーを使ってようやく探し当てた住居番号の家は閉まっていたので 隣
の家に声をかけてみた あきらめて帰りかけたとき 奥の方で人の気配がした
鍵束を鳴らしながら出てきたのは70才位の背の高い細身の白人男性だった
「市内で料理店を経営していた○○という日本人の家を探しているのですが」
と聞いてみた その老人曰く「xx番地は向かいの家に間違いない 隣の家が
○○という人かどうかは知らないし 料理店を経営していたかどうかも知らな
い 日本人だかどうかは私には関係ないことだ」
「..ん?!」意外な答えに戸惑っていると 派手な服装をした奥さんが車
のキーを手にして出てきた 奥さんは社交的な性格のようで お隣りの様子も
よく知っており 妻を相手にぺらぺらと話し出した
一段落したところで「ここはきれいな住宅街ですね」と水を向けてみた
すると ご主人は顔をしかめて「数年前から治安が悪くなって困っているんだ
ここから10キロほど南の方に黒人が沢山住みついたんだよ」と不快感をあら
わにした 奥さんも同感のようだった
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