�ｂS８７３ 【 書 名 】 夜の周邊 【 著 者 】 平山三郎著 【 発 行 】 1956.6.30 【 価 格 】 \270 【 体 裁 】 [寸法] 19.6cm 四六判 [頁] 260p [重量] 375g 【発行社】 �且O笠書房 【 備 考 】 巻末に百�閧ｪ｢跋｣を記している。 小説の中で藤田氏として百�閧ｪ登場する(｢短日｣｢夜の町｣)。 【 参 考 】 『小説集 流れ』
【 参 考 】 長谷川四郎の書評(『法政』1957/1　『長谷川四郎全集 第五巻』)転載 この小説、はじめは退屈したが、だんだんひきいれられた。読み終わって気持のいい作品である。戦後すぐに出た多くの戦争を中心とした小説は、戦争及び軍隊に対する弾劾や批判が先に立って、なかなか激しいものがあったが、この作品はもっと静かな眼と心で戦争に対している。多くの平凡な人たちは外部からの巨大な運命を素直に受け入れると共に、あくまでも自分自身の生活を守ろうとする。この小説はなにもそういうことを言っているわけではないが、出てくる人物たちの個性と善意を通して、それを自然と感じさせるのである。黒い夜の周辺にただよっている明るいもの、それはまぶしい光ではないが、あたたかで、作者はそれを大切にし、終わりまで見失わない。新しい世界をうち開いて見せるような作品ではないが、改めて周囲の生活を見直させるようなものを持っている。一篇の主題は恋愛であるが、これが大へん地味で、見えがくれしつつ、読者をみちびいてゆく。戦争を中心として、その他のいろいろな生活上の障碍物をのりこえて、結局は結ばれる一組の男女といえば、いかにも陳腐な通俗小説のおもむきがあるが、この作品は少しもうわついたところがなく、誠実な生活態度によって裏打ちされ、情熱の昂揚などというものがないかわり、一貫した愛情の根強さがある。およそいまはやりの小説ではないが、多くの人から愛読されるものを持っていると思う。文章はいささか平凡だが、それだけに奇をてらったところがなく、気持がいい。わたしは作者についてはなにも知らないが、おそらく高い文学的教養を持ち、そして自分の職場にちゃんとはまりこんでいる人のように思われる。わたしは文学サークルの仕事にも少し関係しているが、この作者のような人の地味な活躍ぶりにひそかに期待するものである