民家・町屋って何?

京町屋への考察

 近年民家ブームに火がつき、その勢いはりょう原の火のごとく、全国に広がりつつあります。『 民家 』 というものは、どういう物があるのでしょうか。文化的な考察はまずさておき、建築的にのみと考えると、大別に2つの型に分類できると思います。一つは 『町屋型』 であり、他方は 『農家型』 であると思われます。この中で、最近一大ブームになっておるのが京町屋に代表される『 町屋型 』 民家であります。町屋でフランス料理という様な具合で、ノスタルジーを満喫させることで老若男女こぞって、食事に出かけるというような現象が続いております。しかし、この町屋型民家というものを建築学的に考察すると、たいへん耐震性に乏しいと言わざるを得ません。昭和25年に国から既存不適格建造物の認定を受けるに至ったということがありました。建設省の壁量中心主義という片寄った考え方では、この経過が無くても町屋型民家というものは完全にダメであるという烙印を押されたようなものであります。

 しかしながら、壁量中心主義を間違いであると声を上げて訴えるにはやはり木組みが完璧であるという裏付けがなければなりません。すなわち、家は壁でもたしているのではなくて、木を組んで持たしているのであるという裏付けがないといえないことであります。京町屋を代表とする町屋型民家にあってはその点が非常に不安視されるものであります。京町屋での木組みは連台組といいます。『胴差し』 とよばれる通し柱間を結びつける---着物でいうと腰帯に当たる部位が建物の長辺一方にしか存在せず、胴差しの下に入れる 『 差し鴨居』 とよばれる部位も、玄関の一番正面に見かけのみ強調した人見梁が一本存在するのみなのです。また、『足固め 』という普通建築でいう土台に当たる部位は、玄関部の框部のみでしか存在しない。しかも、一つ石の上に柱を乗せる際に、石の形に柱を加工せず(石口を拾わず)石と柱を一点のみに接点を持たすことで 、振り子のようにうまく揺れているという思想で町屋を造っているのです。 このような 『 腰ひも・下帯・帯』 なしで着物を着て歩いてみてください。三歩も行かないまでも着物はバラバラになってしまうでしょう。京町屋は建物において同じことをやっているのです。伝統構法を本当に強いという 、このことを推進している立場の我々からしても、町屋の耐震性には問題ありと云わざるを得ません。

 過去において、いや現在でも、このうまく 『ゆれてやる 』 ことで地震の際の水平応力をうまく逃がしてやる。という考え方が伝統構法であるとおっしゃっておられる伝統構法の一派(実はこの方が多数なのでありますが・・・)に申し上げたいのでありますが、これは耐震設計ではなく 『 免震性』 であり、このことは五重の塔や高層ビル等で免震性が云えることであって、たかだか1階・2階の建物で免震性をもって地震力に対応すると語ること事態ナンセンスであると考えております。伝統構法は 『 四ツ建 』 もしくはその発展型としての『 枠の内造り 』 等を発展発達させて来た 『農家型伝統構法』 と 『町屋型伝統構法』 に区別して、『伝統構法派』 を分けなければなりません。そして私共が主張し続けているのは極めて耐震性に強い『農家型伝統構法 』次回はグリッド構法ともいえる農家型構法について述べていきます。乞うご期待!

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