Swan 琵琶湖水鳥・湿地センターラムサール条約ラムサール条約を活用しよう | ●資料集第10回締約国会議

ラムサール条約
第10回締約国会議 文書3

日本語訳:琵琶湖ラムサール研究会,2008年.  PDF (155)  Word (62

条約事務局原文: 英語   フランス語   スペイン語 


「健全な湿地、健康な人々」
"Healthy Wetlands, Healthy People"
湿地条約(ラムサール,イラン,1971)
第10回締約国会議
大韓民国 昌原창원),2008年10月28日11月4日

ラムサール条約第10回締約国会議 文書3
Ramsar COP10 DOC. 3

第10回締約国会議(COP10)における締約国による決定の準備と採択の手順

はじめに

1.本文書は、本締約国会議の準備過程に関与する全ての人々と締約国会議に出席する全ての人々、また特にラムサール条約の締約国会議に初めて参加する人々にとって必要な情報を提供する。

2.つまり、次のような人々のためである。

a)締約国会議の採択を求める決議案の準備の面で関与する人々。条約の科学技術検討委員会STRP)、常設委員会、条約事務局、ならびに締約国の条約担当政府機関のメンバーを含む。

b)締約国会議そのものに出席する人々と運営する人々。締約国の代表団、未加盟国のオブザーバー、その他のオブザーバーや招聘される専門家、条約事務局、ならびに開催国の会議準備・運営組織を含む。

3.本文書で提供される情報は、締約国会議の準備や運営にかかる手順や過程のさまざまな側面にわたり、特に締約国会議における締約国による決定の準備と採択の過程と、それにかかる締約国会議自体の運営面に関して、次の段落に示される14の良くある質問をカバーする。

4.それら14の質問は以下のとおりである。

1)締約国会議とは何か? またどのように運営されるか?
2)締約国会議の『決定』とは何か? またその目的は何か?
3)決議案の構造はいかなるものか?
4)誰が決議案を締約国会議に提出することができるのか?
5)いくつの決議案が締約国会議に提出されるか?
6)決議案の準備に対する指導原則はあるか?
7)締約国会議ではどのような文書が締約国に提供されるのか?
8)「ラムサール条約技術報告(Ramsar Technical Report)」とは何か?
9)第10回締約国会議への決議案の準備と提出の時期は?
10)締約国会議のための文書は常設委員会が承認したのち、いつ、どうなるのか?
11)誰が締約国会議に参加できるのか?
12)締約国会議の期間中に何があるのか?
13)どのように決議案は締約国会議中に締約国によって折衝され採択されるのか?
14)誰が締約国会議中の決議案の折衝に加わることができるのか?

1)締約国会議とは何か? またどのように運営されるか?

5.本会合は公式には「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約(イランのラムサール、1971年)の締約国会議の通常会合(ordinary meeting of the Conference of the Contracting Parties to the Convention on Wetlands of International Importance especially as Waterfowl Habitat (Ramsar, Iran, 1971))」であり、一般的に「締約国会議(meeting of the Conference of the Contracting Parties)」と用いられるものである。

6.ラムサール条約は3年サイクルで運営されており、締約国会議も3年ごとに一度開かれる。締約国会議は条約の意思決定機関であり、この会合が締約国にとって条約実施のそれまでの進展を評価し将来の実施のための決定や行動を討議し合意するという重要な過程となっている。そのなかには条約の戦略的方向性の合意や条約の次の3年間の中核予算の採択も含まれる。

2)締約国会議の『決定』とは何か? またその目的は何か?

7.ラムサール条約では、締約国会議における締約国による「決定(decision)」として、「決議(Resolution)」並びに「勧告(Recommendation)」と公式に呼ばれるふたつのものがある。これらの目的は、締約国会議以後3年間およびさらに以降の条約実施の行動や優先事項に合意することである。決議は、条約のもとでの科学的、技術的、政策面、手続き上、ならびに管理運営上の活動を取り扱う。

8.条約の初期においては、決議が締約国と条約機関の将来の行動の義務についての決定でありそれによって締約国会議が行動をとることを決議するものであるのに対して、勧告は他の組織や取り組みによる行動を要請したり推奨したりする決定という、決議と勧告の違いがあった。

9.実際上、近年の締約国会議が採択する決定のほとんど全てのものは、決議の面と勧告の面をともに含んでおり、過去2回の締約国会議は全て「決議」としてそれらを採択し「勧告」として採択されたものはひとつもない。

10.決議の採択に加えて、締約国会議は、その開始当初に締約国会議の「手続き規則」も採択する。この規則は、締約国会議の前回の会合で採択されたものを必要に応じて改正するものである。ここで改正された手続き規則は、その締約国会議の運営と次回の会合の開始時に改正されるまでの以後3年のあいだ適用される。

11.締約国会議と次の締約国会議とのあいだの期間は、条約の常設委員会に条約の意思決定の責任が締約国会議の決定や優先事項の枠組みの範囲内で委任される(常設委員会は条約の地域区分に基づく各地域の締約国から締約国会議により選ばれて構成される)。この典型的なものとしては、各年度の予算の支出と会計の承認のような財政上の問題、科学技術検討委員会や条約事務局の作業計画の承認、条約事務局長の任命、条約の小規模助成基金の対象プロジェクトの採択、ラムサール条約湿地保全賞の受賞者の選定、締約国会議の準備と締約国会議に諮るべき決議案の精査などが含まれる。

3)決議案の構造はいかなるものか?

12.決議案の様式として全ての提案に用いられる標準様式がある。決議本文はつぎのふたつの部分に分かれる。

前文にあたる段落(preambular paragraph)に始まる。ここでは、決議案が扱う問題の情勢や背景が述べられる。例えば以前の決議や勧告などで関連するテキストを適切に盛り込んだり、他の組織で進行している関連の過程を認めたりする。

そのあとに、決議の効力を記述する段落(operative paragraph)が続く。ここは、締約国が将来の実施活動を、また誰がそれに着手するのかを承認する部分である。この効力段落はそれぞれ、能動態の動詞で始まり、決定の強さとそれを誰が行うかによって用いる動詞のタイプが決まる。例えば、締約国会議は『自らに対してある行動を「強く要請する」』[この場合英語では『Strongly urge themselves to take action x』と段落が始まる]こともあろうし、『[条約の機関である]科学技術検討委員会に務めを「指示する」』[同様に『Instruct the STRP to undertake task y』]ことや、『外部の組織に活動に関して条約事務局と協働することを「要請する」』[同様に『Request another organization to work with the Secretariat on activity z』]ことなどがある。[訳注.いずれの場合も主語は締約国会議である。]

13.決議案には、一以上の付属書Annex)を含むものもある。これらは、例えばその決議を実施する上で締約国を導く手引きであったり、決議に関する他の情報を含むものであったりする。このような付属書は決議案の公式な一部であり、決議本文と同様に締約国会議における締約国による折衝と採択の対象である。

4)誰が決議案を締約国会議に提出することができるのか?

14.条約は政府間の条約であるから、条約の常設委員会と締約国のみが締約国会議に決議案(draft Resolution (DR))を提出することができる。その外のものが何らかの提案を望む場合は、その提出を引き受けてくれる国を見つけて協働することが必要となる。科学的・技術的な決議ならびに手引きは、条約の科学技術検討委員会が準備して常設委員会に提出し、常設委員会が締約国会議の討議に諮ることを採択する。条約事務局は、条約の管理運営上、政策面、手続き面の決議の準備において常設委員会を補佐する。

15.全ての決議案は締約国会議の討議より前に常設委員会による承認が無ければならない。常設委員会は決議案ならびにその付属書を締約国会議に諮るかどうかを決定することができる。

16.第9回締約国会議が採択して現在効力を持つ「締約国会議手続き規則」に従い、締約国会議への決議案を保証することを望むいかなる締約国も、その案文を常設委員会に(条約事務局を通じて)、締約国会議に諮ることを承認するその最後の会合の40日前までに提出しなければならない。これは条約事務局が当該文書を会合開始30日前という法定期限までに常設委員会メンバーに配布する準備期間を含む。40日前という締め切り日の後に提出された決議案はいっさい常設委員会に諮られることはない。常設委員会はそしてそれらの決議案についての助言を関係する締約国並びに締約国会議に対して提供する。

17.決議.45の規定のもとに、科学的・技術的内容を含む決議案は[条約事務局から]科学技術検討委員会にも届けられなければならず、同委員会が検討して常設委員会ならびに締約国会議に対してそれに関する助言を提供する。

18.決議案の提出に関してはもうひとつの仕組みが「手続き規則」に確立されている。それは、締約国会議の会期中に(会議委員会を務める)常設委員会は会期前には予見できなかった緊急の問題、あるいは締約国会議における議論から生じた問題に関する「緊急決議案(emergency draft Resolution)」を議題にのせることに合意することが例外的にできるという仕組みである。会議委員会は、締約国会議以前に予見可能であったと考えられ、ゆえに前述の会議前の手続きを通じて提出されるべきと考えられるものについて緊急決議としての提案を認めることは無い。第9回締約国会議(2005年)の高病原性鳥インフルエンザに関する決議.23が緊急決議案の一例である。

5)いくつの決議案が締約国会議に提出されるか?

19.締約国会議に提出される決議案の数やその内容に関する規則は特には無い。徐々に各回に提出される決議案の数は増加してきており、2002年の第8回締約国会議に出された46の決議案が記録になっている。第8回締約国会議ではこれほど多くのさまざまな文書の折衝が締約国会議のプロセスを引き延ばしその限度を超えていると締約国によって認識された。

20.同会合で締約国は従って(その決議.45に)、締約国会議における討論の効率と効果を高めるために、締約国会議に提出される決議案の数を減らすように企図された決議案のプロセスをより単純で能率化する仕組みを強く要請した。そこで、条約事務局と常設委員会は第9回締約国会議に向けてこの指示に十分に対応できるように能率化された[前章4)に示された]過程を開発した。

6)決議案の準備に対する指導原則はあるか?

21.締約国会議で討議される決議案を策定するための指導原則としてこれまでに公式に採択されたものは無く、過去の締約国会議の経験に基づいて概して実際的な一定の手引きを提供できる程度である。常設委員会は(その決定 SC36-1 において)本文書を承認し、このような決議案の準備にかかる手引きを公式化することを提案するかどうかを第10回締約国会議のときまでに検討することにしている。

22.決議の中には、締約国会議のたびに採択を必要とする、条約の次の3年間の運営に欠かせないものもある。たぶん典型的であるのは「財政および予算事項」に関する決議であり、これによって条約の次の3年間の予算が承認される。また、年限を区切った作業計画として過去の締約国会議が採択したものを更新するときはそのための決議が必要であり、例えば条約の広報・教育・普及啓発(CEPA)プログラムや科学技術検討委員会の将来の優先作業に関するものがある。

23.その他の決議案は、過去の締約国会議からの要請に対する応答であったり、条約の将来の実施に重要な面を扱うが条約のそれまでのプロセスで特に要請されていなかった随時のものであったりする。

24.決議案を準備するにあたって念頭に置くべき一般的な原則には、その準備と締約国会議による討議の能率化を確実にするために、以下の事項が含まれる。

ひとつのトピックにかかる決議はひとつだけにすること。複数の同様な決議案が提出されるときは、当該トピックにかかるひとつの決議案にまとめあげるように条約事務局と常設委員会が関係する締約国等と協働しなければならない。

)決議案の視野は次のどちらかである。

a)地球規模(あるいは少なくとも条約の地域区分の一以上の規模)の関連性や範囲があること。すなわち、多くまたは全ての締約国による実施の対象となること。

b)地球規模に満たない範囲にかかる事項について全地球的な視点から締約国会議が総意を表すこと。例えば、地域的イニシアティブの承認、地球規模未満の団体との協力を求める場合、個々の条約湿地で報告された問題に対する助言、開催国への感謝などがある。一般的にはしかし、唯一つの国や単一の条約湿地に関するような決議案は適切ではない。

過去の締約国会議が決議に採択したのと同じトピックにかかる決議案は新たな展開あるいは追加の事項や取り組み方が反映されていること。過去に採択された決議に求められた行動はのちの締約国会議がそれに替わるものを採択するかその廃止を決定するまで効力を持ち続けるため、決議案は同じトピックの過去の決議に採択したことをただ繰り返すだけであったり再確認するだけであってはならない。

決議案が締約国会議のたびに連続して諮られる必要のあるトピックに対しては、決議案は首尾一貫した組織立てや構造を備えていること

過去に決議を採択した主題となっているトピックに関して新たな決議案を提案する際は、その起草過程において関連する過去の決議の全てを綿密に調べること。かつ、つぎの2点を満たすこと。

a)過去の決議の効力段落(あるいは決議全体)を無効にすること、更新すること、あるいはそれに替わるものを提案する場合は、新たな決議案の効力段落に明確に示すこと。

b)過去の決議の関連部分を(前文の段落において)引用する場合は明確に引用すること。

決議案には時限を区切った行動と永続するか終わりを定めない行動を(特に同一の段落には決して)混ぜないこと

)決議案を起草する際(および締約国会議の最中にその修正を検討する際)に、当該決議案の要素が その締約国会議に向けて準備されている他の決議案や検討されている他の決議案、過去の決議と、矛盾無く一致していることを確実にするように点検すること

科学的・技術的な関連のある決議で条約の科学技術検討委員会が直接に準備したものではないものはその全てについて、同委員会の助言と手引きを求めること。同委員会のその助言は、関係する締約国、常設委員会、および締約国会議に届けられる

締約国によって提出される決議案については、複数の締約国、それも条約の地域区分の異なる国々からの共同提案のほうがただ一国による提出よりも望ましい。そのような決議が広い支持を得ているというシグナルとなるからである。

7)締約国会議ではどのような文書が締約国に提供されるのか?

25.締約国会議で参加者に配布される文書はいくつかのカテゴリーに分けられる。

A.決議案(Draft Resolution

26.この文書は「DR」をつけて文書番号が与えられる。第10回締約国会議では、例えば「COP10 DR6」というふうに。決議案(ならびにある場合はその付属書)は締約国会議において締約国が折衝し採択するためのものである。

27.締約国会議によって採択されると、決議案は公式に決議としての番号が振り直される。例えば「決議.6(Resolution X.6)」というふうになる(なお、採択された決議の番号には締約国会議の回数をローマ数字を用いて表すということがラムサール条約では確立されている)。

B.情報文書(Information paper

28.この文書は、その呼び名のとおり、締約国に対して追加情報を提供するものである。これは締約国会議によって折衝されたり採択されるものではない。この文書は「DOC」をつけて、例えば「COP10 DOC. 5」というふうに文書番号が振られる[日本語にするとこの例の場合「第10回締約国会議文書5」と訳出できる]。

29.情報文書が参加者に提供する追加情報にはさまざまなタイプがあり、決議案の主題となっているトピックを支える背景情報や理論的根拠などを含む。

30.そのほかに条約の実施状況の報告を提供するものがあり、例えば条約事務局長や常設委員会および科学技術委員会議長の報告には地球規模での実施状況が、締約国から提出された国別報告を分析して各地域での実施状況が報告される。

C.締約国会議手続き規則(COP Rules of Procedure

31.締約国会議を運営するための「手続き規則」は、その各回の開始時に検討され採択される。そうして、この規則が当該締約国会議の全てのプロセスを律する。さらにその効力はその次の締約国会議の開始時点まで維持される。現時点[第10回締約国会議開始時点まで]の手続き規則は第9回締約国会議によって採択されたもので条約事務局の http://www.ramsar.org/key_rules_cop.htm のページに掲載されているものである[第10回締約国会議文書2(COP10 DOC. 2)にも同会合開始時点で検討し採択するためにそのまま再掲されている]。

D.締約国会議報告(COP Report

32.締約国会議の全体会合の成り行きを「締約国会議報告官(COP Rapporteur)」が毎日の会議報告として原稿を準備して会期のあいだ締約国に配布され、最後の全体会合で検討され採択される(但し、会期最終日の報告は閉会ののちに(任を満了する常設委員会である)会議委員会の議長が承認するという習わしが確立されている)。

33.締約国会議報告には、決議案の文章についてなされた調停や合意と不同意が、締約国による政治上のいかなる声明も決議案に対して締約国が表明したいかなる留保も含めて、まとめられる。このような声明や留保は決議そのものに含めることが一般的に適切ではない。

8)「ラムサール条約技術報告(Ramsar Technical Report)」とは何か?

34.条約の科学技術検討委員会が準備した技術的方法論の詳細な手引きや概論報告は、かつては締約国会議に情報文書として提供されていた。しかし、この仕組みは締約国会議で各国に提供される文書の量を著しく増大させた。またその次の締約国会議の時には前回の文書は条約の「グレーの文書庫」にはいりこんで消えてしまい、探し出すのも容易ではなかった。

35.このような報告書の多くは、条約実施を支えるために引き続き役に立つ重要なものであるため、同委員会が準備したこのように重要な資料を現在は、査読された上でラムサール条約技術報告シリーズに出版され、より広範に長期的に利用できるようにされている。同シリーズはまず英語でPDFファイルに出版され、財政が許せばフランス語とスペイン語でも出版される。

9)第10回締約国会議への決議案の準備と提出の時期は?

36.2008年の科学技術検討委員会と常設委員会の会合予定

37.科学技術検討委員会は、その第14回会合を2008年1月28日2月1日に開き、同委員会が常設委員会ならびに第10回締約国会議に向けて準備した決議と手引きの案文の委員会としての最終合意を図る。

38.常設委員会は締約国会議までに2008年は2回の会合を開く。同年2月下旬の第36回会合と6月上旬の第37回会合である。(そのつぎの第38回会合は締約国会議の場で開く。)

39.第10回締約国会議への決議の案は全て、常設委員会第37回会合が閉会するまでに同委員会の承認を得なければならない。常設委員会へ提出される文書は全て、その会合の少なくとも30日前には条約事務局によって同委員会に提供されなければならない。これは、委員会メンバーが熟考しまた助言を求めるに足る時間を許すためである。従って、科学技術検討委員会はその締約国会議への文書を、常設委員会に30日前までに提供するという時間を見て、2008年4月半ばまでに完成させる必要がある。常設委員会の決定により、財政上の理由により常設委員会の会合のための文書は全て(会合議事日程案を除き)英語のみで提供されることとなっている。

40.締約国によって提出される決議の案は条約事務局に常設委員会が締約国会議への文書を最終的に承認するための会合の少なくとも40日前までに条約事務局に提出しなければならない(手続き規則5)。従って第10回締約国会議に向けた提出期限は2008年4月22日である。

41.前述のとおり、常設委員会はこれら決議案について締約国会議に助言するものである。また、科学的・技術的内容をもつ決議案はいずれも、はじめに科学技術検討委員会により検討され、同委員会は常設委員会にそれについての助言を提供する(決議.45)。

10)締約国会議のための文書は常設委員会が承認したのち、いつ、どうなるのか?

42.常設委員会の承認ののち、すべての決議案(ならびにその付属書)は、条約事務局が編纂し条約の公式三言語(英語・フランス語・スペイン語)のうち残っているふたつの言語に翻訳される。

43.全ての決議案は各言語のものが準備できしだい条約事務局のウェブサイトに掲載される。公式に締約国に提供されるのは、外交ルートを通じて、締約国会議の開始の3か月前、第10回締約国会議の場合は2008年7月27日までに行われる。これは締約国が国内での協議や代表団への指示を締約国会議の前に準備するに足る時間を許すものである。

44.締約国会議のための文書の最後の事前送付は(例えば情報文書などは)それよりも締約国会議に近い日程でも行われる。決議案といった締約国会議での折衝を必要とするものはここまで遅くすることはできない。

11)誰が締約国会議に参加できるのか?

45.締約国会議の完全なプロセスは以下の範囲の組織と人々にのみ開かれている。

A.締約国の公式代表団

46.各締約国は、公式代表団員の氏名とその団長を記した公式な通知をその外務省を通じて条約事務局に提出し、締約国会議資格審査委員会(COP Credentials Committee)の精査に供しなければならない。この公式通知は、国または政府の長、あるいは外務大臣からのものでなければならない。

47.その資格が完全に整った締約国のみが締約国会議の全プロセス(例えば必要になった場合の投票に参加すること)に参加することが許される。締約国により構成される資格審査委員会が締約国会議において設置され、投票に持ち込まれる可能性のある事項が検討されるまでに資格を満たす各国代表団の一覧を作成する。

B.公式オブザーバー

48.締約国会議手続き規則6および7の規定のもとに、ラムサール条約の実施や湿地の保全と賢明な利用に関わりがあるその他の組織はオブザーバーとして締約国会議に参加することができる。条約に未加盟の国の代表や、国連の組織・機関、他の政府間組織、NGO、民間部門や企業等の代表なども公式オブザーバーに含みうる。オブザーバーは投票することは許されないが、そのほかには普通は参加できる。

49.非政府部門には「アジェンダ21」に認められている主要グループ、すなわち、a)女性、b)子供と青年、c)先住民、d)非政府組織(NGO)、e)地方公共団体、f)労働組合、g)商業と工業、h)科学団体や科学技術団体、i)農業者の各グループを代表する組織をラムサール条約では含めている。

50.過去に条約や条約事務局に知られていないNGOが参加を要望する場合は、その取り組みが条約とその目標に関係しているか否かを確認するためにその活動内容についての更なる情報を供給するように、その参加が承認される前に求められることがある。

51.参加が承認された各NGOのCEO/取締役は、その公式代表団員の氏名と団長を列記した手紙を条約事務局に提出しなければならない。

52.締約国会議の全体会合の議場の利用可能スペースの広さしだいで、議場に入場できるオブザーバー団体代表団の人数を制限する必要が生じることもある。

53.締約国会議の開始時に、締約国会議は全オブザーバーの参加を公式に承認しなければならない。オブザーバーは、出席する全締約国の少なくとも3分の1が反対しない限り、その参加が認められる。全体会合やコンタクトグループ[特定の懸案事項について全体会合に委任されて限られたメンバーで折衝をまとめるためのグループ( 段落66)]における議論の際に、その会議の議長がオブザーバーからの発言を許す時間を限る必要が生じることがある。

C.招聘された専門家

54.条約の事務局長の裁量で、追加的に特別な人材の締約国会議への参加を招くことがある。例えば、締約国会議に基調講演を提供する専門家や、科学技術検討委員会の作業に貢献するよう求められた専門家などである。

D.その他の参加の型

55.以上のほかにもいくつか参加の型があるが、その参加は締約国会議の会議場の一部の場所へのアクセスに限られる。これには、報道機関の代表、展示会場への展示の出品者、周囲の催しや活動への地元参加者などが含まれる。

56.これまでに確立されている実際はつぎのとおりである。

)締約国会議の全体への参加は、条約事務局に対して、条約のウェブサイトに設置されるオンラインの事前登録過程を通じて、要望すること。

)各国ならびにオブザーバー団体の参加者と代表団は、本登録が受け付けられる前に、条約の事務局長によりその参加が承認される。

57.もうひとつ確立されている実際として、開催国側の参加者等(例えば報道機関や展示者も含む)については、開催国と地元の運営組織が取り扱うこととなっている。

58.締約国会議は「科学的会合」のような個人の能力に従って誰にも開かれているというものではない。条約の作業分野にある研究者や技術者個々人は、当該の議事に貢献するために特に招かれた場合を除き、前述のタイプどれかのグループの代表団としての場合のみ参加資格がある。

12)締約国会議の期間中に何があるのか?

59.締約国会議の中核業務は、決議を折衝し採択することである。3時間の全体会合を毎日2回、10時から13時と、15時から18時に開いて、これを進める。

60.会期中に、折衝を完了させるためにはさらに時間が必要だということが明らかになった場合は、締約国会議の総裁(COP President)が(通訳者の合意も得て)十分に折衝を完了するように全体会合を延長する、あるいは追加の全体会合を召集する。

61.締約国会議の全体会合は不可侵である! 締約国会議のあいだに催されるその他の活動やイベントは全て、全体会合の二の次である。締約国会議の脇役たる他のイベントや活動は多くあり、次のようなものが含まれる。

62.締約国会議手続き規則により、前回の締約国会議で選ばれた常設委員会は、それから3年間の任務を経て、今回の締約国会議の会期は公式に「会議委員会(Conference Committee)」となる。

63.会議委員会は毎朝、全体会合が始まる前に会合を持ち、当日の議事日程を確認すること(必要に応じてその変更案をつくること)や、その他締約国会議を円滑に運営するために必要となるいかなるプロセスも手続きもこれを決定する役目を果たす。

13)どのように決議案は締約国会議中に締約国によって折衝され採択されるのか?

64.締約国会議の前半に、各決議案が全体会合に紹介される。全く反対意見が無くかつテキストの変更も全く締約国から提案されなければ、その場でその案をそのまま決議に採択し、以後その決議についての議論は行われない。

65.しかし、ここで反対する締約国があったり、テキストの削除・追加・変更の提案があれば、それらの変更についてまずコンセンサスが得られるかその全体会合で追求される。コンセンサスに達すれば、条約事務局がそれらを組み入れて改訂された決議案を準備して締約国会議の後半に公式に採択できるように(例えば「DR6, rev. 1」というように決議案番号が振られて[「決議案6改1」といったように訳出できる])配布される。

66.決議案のテキストに合意が得られない場合、つぎのようにとりうる策がいくつかある。

a)合意しない締約国が二三しか無い場合、締約国会議総裁は、それらの国に、合意を追求するための非公式協議を持ち、その結果を全体会合に報告するよう要請することができる。

b)その決議案のテキストにかなり作業が必要であると理解される場合は、締約国会議総裁は、関心のある締約国やオブザーバーの全てが「非公式作業グループ(informal working group」を形成して協議し新たな決議案のテキストを最終化するよう要請することができる。

c)数多くの国々のあいだでテキストについての意見の相違が著しい場合、締約国会議総裁は、一以上の国が議長を務めるよう要請して、公式な「コンタクトグループ(contact group」を求めることができる。このようなグループに通訳をつけるのはふつう不可能である。

d)特定の重要な文書や問題について検討するために、会議委員会は全体会合にそのための「締約国会議委員会(COP Committee」を設置すべきではないかと提案することを決定することがある。近年の締約国会議では、財政予算委員会や戦略計画委員会が設置された。このような提案は議題(資格審査委員会および他の委員会の任命)のもとに全体会合で検討される。

67.締約国会議委員会やコンタクトグループは、締約国会議の全体会合のあいまに協議する。それは、朝に全体会合が始まる前、2時間のランチ・ブレーク、夕方に全体会合が終わってからである(必要なときには夜通しになることもある)。全体会合に報告できるように合意に達するまで、このような協議が何回も続けられる。合意に達すれば条約事務局がそれを組み入れて改訂した決議案をのちの全体会合の採択に向けて準備する。

68.会合に用いることができる部屋の空きが限られていると、締約国会議総裁が設置する締約国会議委員会やコンタクトグループの会合のための部屋の確保が、例えば参加者の申込によるサイドイベントのような他の用途のための部屋の全てよりも優先されることになる。従って、締約国会議のプロセスをスムーズに運営するためには、多くは無くとも締約国会議委員会やコンタクトグループが利用する可能性を満たす空き部屋を、サイドイベントや地域グループ会合など他のミーティングの要請に応える部屋に加えて確保しておくことが欠かせない。

69.このような締約国会議委員会やコンタクトグループ等による決議案のテキストの折衝は全て、締約国会議の閉会の3日前までに完了させなければならない。これは、条約事務局が改訂された決議案を準備し、条約の三つの公式言語に翻訳して印刷し全体会合に供するに十分な時間を許すためである。

70.条約事務局のこの作業は、締約国会議の現地視察(またはエキスカーション)の日のあいだに完了される。こうして改訂された最新の決議案全てのテキストを締約国が利用できるようになって、締約国会議の後半が開始される。この後半残りの2日間で、それまでに採択されていなかった決議案の全てについて、改訂された最新の案文が紹介され、あれば最後の折衝が行われ、第10回締約国会議の公式な決議としてその閉会までに採択(あるいは不採択)される。

71.それでもなお決議案のテキストにコンセンサスが得られない場合は、つぎのふたつの可能性が残されている。決議案を提出した国(または国々)がその提案を取り下げること。取り下げられない場合のためには、手続き規則はまた投票手続きを持っている(同規則40により、その他の選択枝を全て使い果たしたのちの最後の手段としてのみ発動される)。しかし実際に条約の歴史を通して、決議案のテキストの相違はコンセンサスによる解決がいつも見出されており、投票手続きの発動の要には至っていない。

14)誰が締約国会議中の決議案の折衝に加わることができるのか?

72.厳密に言えば、締約国の代表団の代表のみが決議案のテキストの折衝に当たることができる。が、慣例としてラムサール条約とその締約国会議は、締約国会議のオブザーバー、NGOも含み、また特に条約がその国際団体パートナーの地位を与えている5つのNGO(バードライフ・インターナショナル、国際水管理研究所(IWMI)、IUCN、国際湿地保全連合、WWFインターナショナル)からのインプットやサポートの声も歓迎している。

73.全体会合の議長はオブザーバーからの干渉を取り上げることができる。が、ふつう、会場からの意見を求めるときは、全ての締約国からの発言を初めに求め、時間の許す範囲でそののちにオブザーバーとして参加する国ならびにオブザーバー団体からの発言を求める。

74.もし決議案のテキストの変更をオブザーバーが提案するとすれば、すくなくとも一の締約国がそれを支持し、かつ他の締約国が反対しない場合においてのみ全体会合の検討対象になりうる。コンタクトグループにおいても、全体会合と同じく手続き規則が干渉について適用される。

75.慣例として、全体会合の全ても、締約国会議委員会やコンタクトグループの会合もオブザーバーに開かれている。とはいえ場合によって、締約国会議総裁やコンタクトグループの議長は、その会合への出席を締約国のみに限定することもできる。そのような限定措置は締約国会議を運営する上での規則の範囲内であり、オブザーバーによる異議は認められない。このように会合が締約国のみに限定されることがあるとすれば、それは例えば、格別に微妙な政治上の問題が生じた場合や、オブザーバーが歓迎されざるマナーの振る舞いをなしその振る舞いを正すようにという締約国会議総裁や議長からの要請を尊重しないような場合などに起こり得る。

追加情報

76.ラムサール条約の締約国会議のプロセスや決議案の策定と採択についての更なる情報は、条約のウェブサイト(www.ramsar.org)に見出される。あるいは条約事務局に問い合わせても良い(ramsar ⓐ ramsar.org)。

経済上の理由により、この文書は限られた部数のみ印刷されるが、会議場で配布する予定は無い。会議出席者は各自が印刷して持参し、会議場で求めることの無いようにされたい。


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[英語原文:
ラムサール条約事務局,2008.Ramsar COP10 DOC. 3 "Procedures for the preparation and approval of decisions by Ramsar Contracting Parties at the 10th meeting of the Conference of the Contracting Parties (COP10)", Convention on Wetlands (Ramsar, 1971). http://www.ramsar.org/cda/ramsar/display/main/main.jsp?zn=ramsar&cp=1-31-58-127^19405_4000_0__http://ramsar.org/cop10/cop10_doc03_e.htm.]
[和訳:
琵琶湖ラムサール研究会,2008年5月.]
[レイアウト:
条約事務局ウェブサイト所載の当該英語ページにおおむね従い,目次に相当する段落4にページ内リンクを加えた.]
Swan 琵琶湖水鳥・湿地センターラムサール条約ラムサール条約を活用しよう | ●資料集第10回締約国会議
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URL: http://www.biwa.ne.jp/%7enio/ramsar/cop10/cop10_doc03_j.htm
Last update: 2009/08/11, Biwa-ko Ramsar Kenkyu-kai (BRK).