
ラムサール条約 第10回締約国会議
決議Ⅹ.29「国レベルで条約を実施する機関及び関連団体の役割の明確化」
- 日本語訳:
- 『ラムサール条約第10回締約国会議の記録』(環境省 2011年)より了解を得て再録.
- 条約事務局原文:
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- ワード:
- PDF:
"Healthy Wetlands, Healthy People"
湿地条約(ラムサール,イラン,1971)
第10回締約国会議
大韓民国 昌原(창원),2008年10月28日−11月4日
決議Ⅹ.29
国レベルで条約を実施する機関及び関連団体の役割の明確化
1.ラムサール条約の各締約国が、国の条約実施に責任を負う「担当政府機関」という機関を自国の政府内で指定することを想起し、
2.国レベルでの条約の実施を支援するため、締約国に対し、各国特有のニーズに応じて国内委員会を設置及び認識するよう奨励する勧告5.7(1993年)を同じく想起し、
3.情報管理のインフラの調和をはじめ、他の関連条約との協働と協力を図ることを奨励する決議Ⅶ.4(1999年)、Ⅷ.5(2002年)、Ⅸ.5(2005年)、Ⅹ.11(2008年)をさらに想起し、
4.湿地の保全と持続可能な利用に人的資源を充当する上で、教育と訓練が果たす重要な役割に関する勧告4.5(1990年)をさらに想起し、
5.条約の科学技術的作業に対する各国STRP窓口の関与を高めるという、条約事務局とラムサール条約科学技術検討委員会(STRP)の取り組みを歓迎し、
6.第10回締約国会議に向けたアフリカ地域のための予備会合の決定により、関係する各国実施機関と関連団体への付託事項を明確にするよう、事務局が要請されたことを想起し、
7.フランス政府とラムサール条約事務局が資金提供を行った「自然地域に関する技術ワークショップ(ATEN: Atelier Technique des Espaces Naturels)」率いるプロジェクトを通じて、フランス語圏アフリカ諸国のラムサール条約各国窓口及び各国湿地委員会のための教育訓練ツールが作成され、次いで同ツールの英訳のためにスイスが資金提供を行ったことを歓迎し、同ツールが本条約の三つの公式言語で世界的に利用可能になるよう、スペイン語への翻訳に対しても締約国または他の援助機関が同様の資金提供を申し出ることを期待し、
8.条約にとって、国のレベルで関連所轄官庁及びその他の団体の間での条約の実施を調整するために、締約国があらゆる努力を払うことが重要であることを認識し、
9.決議Ⅹ.11でも強調しているように、ラムサール条約その他関連条約のそれぞれの目的を効果的に達成するため、各国の主なラムサール条約実施機関及び関連団体の一般的役割を明確にし、他の関連する多国間環境協定の実施責任を有する機関との調和を図ることを切望し、
締約国会議は、
10.条約において常に確実に締約国を代表する上で、また国レベルでの条約実施に対して、各締約国の指定する条約担当政府機関が担う主たる役割を再確認する。
11.指定担当政府機関の「日常的な連絡先」(daily contact)という文言を「各国の担当窓口」(National Focal Point: NFP)に変更することを決定する。
12.締約国に対し、各々の状況と能力を踏まえた上で適宜、国レベルでの条約実施に考えられるいくつかの領域を示した本決議付属書の基本事項に従うよう、促す。
13.条約の実施を県や州などの地方政府を通じて行うことがきわめて多い締約国に対し、たとえば、こうした地方政府の機関内で担当窓口を特定し、その担当窓口を国内ラムサール委員会やそれに相当する団体に加えるなどにより、地方政府を条約実施に参画させるための仕組みを構築または強化するよう要請する。
14.勧告5.7(1993年)で言及した検討事項に加え、国内ラムサール委員会または国内湿地委員会には、任命された各国の交流・教育・参加・普及啓発(CEPA)窓口及びSTRP窓口を参加させるよう勧告する。
15.事務局に対し、各国の担当窓口、CEPA窓口、STRP窓口、国内ラムサール委員会または国内湿地委員会の能力を強化するために必要なツールの開発に取り組むよう奨励し、適切な援助機関が特に途上国におけるこうした取り組みに関心を持つことを歓迎する。
決議Ⅹ.29
付属書
各国の実施機関及び関連団体の一般的役割に関する概要
1.本付属書は規定を示すものではなく、各国の主要なラムサール条約実施機関及び関連団体の一般的役割について説明するものである。各締約国は少なくとも、担当政府機関、担当窓口、STRP窓口、CEPA窓口を任命するべきである。また各締約国には、国内ラムサール委員会または国内湿地委員会の設立を検討することが勧告される。
実施機関/その他関連団体 | 一般的役割 | 主な出所 |
---|---|---|
担当政府機関 |
担当政府機関(AA)とは、国家政府から国レベルでのラムサール条約実施を委任された各締約国の政府機関である。AAは以下の責任を負う。
何よりもAAは、ラムサール条約の実施を強化するため、湿地その他自然資源の問題に責任を有する他の所轄官庁と連絡を保つべきである。 他の多国間環境協定の各国窓口と連絡を保つことも、もう一つの重要な役割である。 担当政府機関は通常、国のラムサール条約担当窓口を務める者を任命する。 AAの直接的権限の下で、各国の担当窓口は締約国を代表する。そのほか、各国の担当窓口は以下を行う。
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条約条文 各国担当窓口(NFP)の職務説明(本書)及びロードマップ、 NFPに関するパンフレット(2007年) |
各国のSTRP窓口 |
各国のSTRP(科学技術検討委員会)窓口は、広く認められた熱心な湿地の技術的専門家であり、政府またはその他の団体に属し、担当政府機関が任命する。各国のSTRP窓口は、主としてSTRPの地域メンバーやその他の適格な専門家の国内ネットワークと連絡を保つ。 |
決議Ⅶ.2、 決議Ⅷ.28(各国のSTRP窓口への付託事項を含む)、 決議Ⅸ.11、 決議Ⅹ.9、 NFPに関するパンフレット(2007年) |
各国のCEPA窓口 |
各国のCEPA窓口は、交流・教育・参加・普及啓発(CEPA)の専門家として広く認められた者であり、政府機関やNGOで働く。担当政府機関は、各国における政府のCEPA窓口1名と、NGOのCEPA窓口1名、計2名のCEPA窓口を任命する。この2名が共に、特に関心の高い湿地域に対する国のCEPAプログラムや行動計画の策定と実施を、国レベルで主導する。 |
決議Ⅶ.9、 決議Ⅷ.30、 決議Ⅹ.8、 NFPに関するパンフレット(2007年) |
(各国の)国内ラムサール委員会または国内湿地委員会 |
国内ラムサール委員会(NRC)や国内湿地委員会は、条約とCOP決議の国レベルでの実施に関する手引きや助言を提供することを委任される。当該委員会は、STRPの作業とCEPAに関連する国家プログラムのプラットフォームとなることもできる。最も効率よく行動するため、国内委員会には、広く湿地や水その他関連部門の代表を含めるとともに、政策や科学、管理の部門からの代表も含めるべきである。 国内ラムサール委員会(NRC)の構成と体制は締約国によって異なる。 また国内委員会には、各国の他の多国間環境協定の担当窓口や、適当であれば関連資金供与団体との良好な作業関係を築くよう、もしくはそれらを委員に加えるよう、勧告される。 |
勧告5.7、 NFPに関するパンフレット(2007年) |
支援ツール
2.国レベルで条約を実施する際に締約国を支援するため、事務局が有用な「担当政府機関担当窓口覚書」のほか、国内ラムサール委員会の構成・業務例を作成することが考えられる。
3.また、ラムサール条約のウェブサイト上で、各国の担当窓口間のコミュニケーションと情報交換専用のプラットフォームを開発することも考えられる。
4.ラムサール条約と他の関連条約とが共有できるようなツールを開発することも、奨励されるべきである。
- [英語原文:
- ラムサール条約事務局,2008.Ramsar Resolution X.29 "Clarifying the functions of agencies and related bodies implementing the Convention at the national level", Convention on Wetlands (Ramsar, Iran, 1971). [Word] http://www.ramsar.org/doc/res/key_res_x_29_e.doc, [PDF] http://www.ramsar.org/pdf/res/key_res_x_29_e.pdf.]
- [和訳:
-
『ラムサール条約第10回締約国会議の記録』(環境省 2011)[この決議のPDFファイル: http://www.env.go.jp/nature/ramsar/conv/ramsa/ketugi29.pdf ]より了解を得て再録,琵琶湖ラムサール研究会,2012年.]
- [レイアウト:
- 条約事務局ウェブサイト所載の標準的な英語ページにおおむね従う.]
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