「お風呂場で…」 第22話
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田中さんがのぞき込む横で私は私を見た。 水を吸って膨らんだ顔、少し濡れたシーツ。霜の降りたドライアイスを包んだ布 「死んでる」 分かり切ったことだけど…、死んでる。 「綺麗な死に様とは、いかなかったわね」 「むしろ汚い。でも、私の体だ…」 「そうね。何の感慨もないでしょ?」 「うん…」 私を見て田中さんは少し顔をゆがめた 「ところで…、どうして水着なんですか?なんか、変な形…」 「ん?死に装束は白色が決まりでしょ?」 「でも、これは違うような…」 「だって、白いでしょ?」 「ええ、白いです」 「じゃぁ、問題ないじゃない?」 「あーーー、えっと。そうかもしれませんね」 「うん。やっと納得してくれた。満足してもらえて嬉しいわ」 そう言って死に神さんは笑った。私は目をそらしながら、笑った顔を初めて見たなぁと思った。 |