「山の中でひとり」 第53話
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おばちゃんの手はお母さんみたいに綺麗じゃなかった。それにおばちゃんの作業服は私には大きくて、ぶかぶかだった。歩きにくい。でも、隣のおじいちゃんのお手伝いをしていたことを思い出して、嬉しかった。 畑に入るといくつかのスイカが割れていた。驚いて見渡すと、ちょうど大きくなったスイカばかりだった。 「また、やられた。冬瓜もか…」 おばちゃんが呆れたような声で言った。私は袖を引っ張っる。 「あぁ、近所の中学生の悪ガキよ。サトシって言う子。何か、タバコ吸ったから怒鳴ったら逆恨みされたみたいでねぇ」 おばちゃんは虫と熱さで食べられなさそうなスイカを切ってそのまま畑の端に捨てた。 「なんかね、こんな山の村でこの辺一番の不良だって息巻いて、やることがこれだからねぇ。なんて言うか…。哀れな子よ。多分、ヤンキー漫画の読み過ぎね。マンガと現実の区別が付いてないのよ。ほんと、気持ち悪い。まだウチのボンチ子の方がマシね」 割られたスイカを見ると悲しい気持ちになった。どうしてこんな事するんだろう?
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