「山の中でひとり」 第55話
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タカヨシ君を寝かせて、居間に戻った。おばちゃんとおじさんがテレビを見ながら待っていた。 「さて、家出娘さん。お話ししましょ?」 私は座って二人に向かい合った。予想はしていたし、予想道理だった。 「えっと、私は家出をしていません。」 「あら。ホントに?」 おばさんは少し大げさに言った。カマをかけてきてる。 「長いこと、スペイン語か英語ばかりの話す人たちと一緒にいたから少し日本を忘れてしまいました。ウマく説明できないかもしれません。けど…、私は自分の家に帰るために…、お母さんの元に返るために山を抜けてきました…」 「えっと、外国にいたの?」 「よく分かりません。えっと、小学校には『家庭の事情』で行ってませんでした。だから隣のおじいさんに連れられて、3年生になる前にガールスカウトに入りました。」 「『家庭の事情』って、なに?」 「私にもよく分かりません。ただ、私たちの家族はそのせいでバラバラになりました。えっとガールスカウトではあまり明るい子じゃなかったから、イタリアンスパイダーマンって言われてました。」 身の上話なんてしたことがないから、ウマく説明できるか分からない。ただ、おばちゃん達とのお話はそれまでの自分と向き合う事じゃないかと思った。
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