「山の中でひとり」 第60話
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おばちゃんは私から目をそらしてうつむく。すこし様子を見守っておじさんが好江さんに優しく手をかける。 「中学の頃から変わりませんね。先輩…」 おじさんは優しく笑う。 「正直な話、君の言うことを信じることは出来ない。多分、好江さんも同じだと思う。でも、君は真面目な子だとも思う。色々あったことも、うちに帰りたいという思いも本当だと思う。」 好江さんはおじさんの手を握った。 「君を警察に保護してもらうのが僕たちにとって一番早い解決方法だけど、それは君のためにならないと思う。だから君の力で君の家に帰る事を応援したいと思う。だけど…」 おじさんは鼻をつまんでいった。 「鹿の腐った汁が髪の毛とか肌にしみこんだんだね。非道い臭いだ。」 思いがけない言葉に驚いて、顔が真っ赤になる。おじさんは優しく笑う。 「臭いが抜けるまでウチでゆっくりして行きなさい。来週の夏祭り位まで臭いが消えるまでかかると思うよ。」
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