「山の中でひとり」 第75話
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警察署の近くのショッピングセンターに行った。 「今日は御馳走作らないとね。」 「サトシ君のことでお祝いですか?」 ちょっとドキドキしながら聞いてみる。 「ん〜、ちょっと違うわね。えっと…、ほら。高志さんの事。ちょっといじめ過ぎちゃったかな〜って…、うん。あはは。せめて美味しいもの作ってあげなくちゃね」 照れくさそうにおばさんが笑った。私もつられて照れくさくなって、そして自分が恥ずかしくなって笑う。 沢山の人がいて、色んな人がいて、色んな物を買っている。何だかアニメみたいだ。 下着や服を買ってもらったあと、夕食の食材を買ってもらった。お金を払ってレジを通る。ふと上を見ると、案内板に公衆電話のアイコンを見つけた。 「あの…、電話をしてきて良いでしょうか?」 「保護者の人?」 「えっと…、はい。」 「そこで待ってるから、行ってきなさい。」 そう言って少し後ろでおばちゃんが私を送り出した。私はまた嘘をついた。
「私、山奥で迷ってしまいました。でも何とか自力で下山できたのですが、下山途中に他の遭難者の遺体を見つけました。」
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