「山の中でひとり」  第96話
c992a41f85-1229690991.png  外から二人分の足音がしてきた。おばさん達は気づいていない。
 左 左 右左 左 左 右左
 まるで一人の足音のように規則正しい。無意識の中の規則性。それは、すぐそばまで来た。
「あー。その…。確かに俺は日曜に教会に行かなかったけど…」
 お巡りさんが垣根で目を丸くしていた。そして、おばさんが声にならない悲鳴を上げた。

「弥生ちゃんはかわいいな。うん、似合ってる。可愛いよ」
 駐在さんが、そう言ってくれたから嬉しかった。
 いままで、私はこんなヒラヒラの可愛い服を着れるなんて思ってもいなかった。もしエディカルが見たらなんて言うだろうか。
 それはどんなに願ってもかなわない願い。
 あの人は最期まで優しい人だったから、多分、私を許してくれないと思う。

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