「山の中でひとり」  第103話
1230641318981.png  私はサトシ君に言われるままついて行った。途中、あの自転車の後ろに乗せられて10分ほど走った。これはいったい何の罰ゲームだろう。
 途中、中をのぞいた路上駐車の車のうち、軽トラック3台。古いアルト1台の鍵が刺さったままだった。
 あの車を使って、このまま消えてしまおうかと思った。
 でも駐在さんに自分の本名や住所を話してしまっているから、消えられない。
 サトシ君は川に堤防の上の小道で自転車をとめて、乱暴に胸ぐらをつかんで河原まで引っ張った。浴衣の胸がはだけて肌襦袢が引っ張り出される。
 私は考えていた。私はもうすぐお家に帰る。でも、タカヨシ君達はここがお家だ。馬鹿なことは出来ない。
「おい!お前が俺に小便引っかけたのは分かってんだよ!」
「しらない。」
「ふざけんな!おまえ、タカヨシのババアと組んで俺の首締めたんだろが!分かってんねんぞ!!」
「何の事よ?」
「俺だって馬鹿じゃねえんだよ。お前みたいなガキがあんなこと出来る訳ねぇ。でも、俺の首絞めてたのは子供の声だった。おかしいと思ってたんだよ!」
「でもなぁ。昨日おまえんちの前通ったらタカヨシのババアが馬鹿みてえな服着てるのみたんだよ。カワイコぶりやがって!!ありゃ、カワイコぶったタカヨシのババアの声だ!!」
「…ごめん。何言ってるのか、さっぱり理解できない。」
「うるせぇ、白状しろ!!警察につきだしてやる!!」
 そう言ってサトシ君が手を振り上げた。

「殴れるものなら、殴りなさい。でも、あなたの言ってることは間違いよ」
 拳をふるわせて、サトシ君は奇声を上げながら私を殴った。極端に息が荒くなってる。
「手が震えてるわよ?足も…。もしかして、人を殴ったのは初めて?」
 顔をゆがませてサトシ君はさらに2発、私を殴った。口の中に血の味が広がる。私は胸ぐらをつかんだサトシ君の手を優しく握る。
「多分、あなたは私が何を言っても納得しないと思う。私は明日には帰る。そしたらタカヨシ君に非道い事するんでしょ。」
「わかってるじゃねぇか」
 非道く下品に笑った。オーバーアクト気味でとても不愉快だった。
「私はタカヨシ君が好き。だからタカヨシ君をいじめないと約束してくれるなら、あなたが満足するまで私を好きにしてもいいわ。」

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