「山の中でひとり」  第108話
82751a1cc8-1230985614.png  サトスを川から引き上げる。
 彼は少しでも息をするために、大きな呼吸をする。
「吸って吸って〜。はいて〜。はいたら吸って〜」
 サトスが息を吸い始めたらすぐに川に沈める。すると空気の代わりに川の水を飲む。飲んだ水は胃袋だけじゃなく、肺にも溜まる。
 首を絞めたときのように、ふっと落ちる様な楽さはない。
 肺の中に水が溜まるせいだと思う。何度呼吸しても、空気が足りない地獄の苦しみ。
 サトスはすぐに、だらんとまともに動けなくなった。
 それから私はサトスを何度も川に沈めた。

 陸にあげられても身体がいう事を聞かず、逃げる事も出来ず、ただ白目を向いて絞り出すように水を吐く。
 おじさんは私をいじめるとき、いつも大笑いしていた。
 あの時、どこか遠くにいるような感覚の中で、おじさんが何故笑うのか理解できなかった。
 でも今ならおじさんを理解できる。
 ズボンとパンツを脱がせてから、髪を鷲づかみにする。サトスは地面にしがみつきながらカエルのような声で泣いた。
「Nao faca o que possa incomodar os outros.」
 サトスを川に戻す。私の声はサトスに届いただろうか?別に届く必要はない。
「さぁ、その報いを受けなさい」

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