「山の中でひとり」 第110話
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「あはははは…」 まるで自分のイビキで目が覚めるように、私は我に返った。 サトシを川から引きずり出して、水を吐かせる。がたがたと震えて縮こまっている。 パンツとズボンと一緒にサトスを持つと、脅えながら許しを請い続けた。 昔好きだった歌をつぶやきながら、堤防の法面にサトシを捨てる。もうボロボロになっていた。でも、それは私も同じだ。 川から道に戻る。 乱暴に自転車を転かして、ハンドルにズボンを引っかける。手と足が震え始めた。 もう慣れたと思ってた。でも、前と一緒だった。 おうちに帰らなきゃ…。はやく、お家に帰らなきゃ…。
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