「山の中でひとり」  第111話
c034553781-1231248159.png  帰り道、おじさんとおばさんが探しに来てくれた。
 二人とも真っ青な顔をしていた。
 おばさんがおじさんのシャツを脱がせて、震えている私にかけてくれた。
「ひどい…。ひどい…。」
 おばさんが泣いている。何か言わなきゃ。
「泣かないで…。私、大丈夫だから。」
「大丈夫なわけ無いじゃない!」
「私、平気です。慣れてるから…」
 猫撫でパンチだったから、顔の腫れは明日の昼にはひくだろう。少し痛いけど我慢。
 口から垂れていた血をサトスのパンツで吹いた。
「ちょっと、何よそれ。まさか、パンツ?きゃっ」
 おばさんがパンツをさわって、思わず手を引いた。
「口を拭うのにちょうど良いと思って…。便利ですよね。パンツって」

 おじさんが電話で村の人を呼び集めていた。おばさんは私を抱きしめて泣いた。
 タカヨシ君はお家に帰ったのだろうか。
「ともかく、二人は家に帰ってください。この前サトシを縛り付けた不審者の件もあるから…、今から村の消防団でサトスを探します。」
「警察を…」
「駐在さんは今、山の中です。好江さん達は家に帰ってください。僕らはサトシを保護します。」
 おじさんがおばさんを制止した。
「おじさん…。大丈夫ですから。何とも思ってないですから…」
「あぁ。何もなかったとも。分かってる。僕らはサトシを保護するだけだよ。2mはある大男の不審者からね。分かってる。分かってるとも。ちょっとそのパンツをくれるかい?」
 おじさんは私からパンツを取り上げて、私たちを家に帰るように言った。
 おばさんと一緒に歩いて帰る途中振り向くと、さっきの場所に沢山の懐中電灯の明かりが集まっていた。

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