「山の中でひとり」 第112話
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「ひどい…。口の中がぐちゃぐちゃだ…」 おばさんが切れた私の口の中を確認して言った。 どちらかというとサトスに殴られたことより、サトスのパンツに血を付着させるために自分で噛んだ傷の方が多分非道い。 これでこの村でのサトスは完全に死んだ。 サトスのお母さんは彼の語る言葉と、状況証拠。疑心暗鬼に苦しめばいい。 今さら私が彼を縛り付け、川に沈めたと言っても誰も信じない。今回の件も彼が自ら生み出した居もしないモンスターがやったことになるだろう。 サトスはまた「モンスター」を生み出すのだろうか? それとも私がやったと言うだろうか? どっちでもいい。 私に今できることは集まった懐中電灯の光を見て、サトスに同情してあげることだけだ。
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