「山の中でひとり」  第113話
d76367a646-1231492541.png 「ごめんなさい。私のお節介のせいでこんな事になってしまって…」
 帰り道、おばさんが泣きながらいった。
「許してもらえるような事じゃないけど、何て言っていいのか分からない…」
 私の手を握るおばさんの手は弱々しかった。
 サトスを陥れた事に後悔はない。でも、結局私はみんなを傷つけた。
「謝らないでください。多分、私は転んだり、犬に噛まれたりしたんです。」
「そんなこと…」
「そんな事です。もう、何があったか忘れました。だから、思い出させないでください」
「そんな…。いえ、そうね」
 苦しそうにおばさんは言葉を飲み込んで私から目をそらした。それからゆっくりと歩いた。
「お祭りの続きをしませんか?」
 厚かましいと思ったけど、私から切り出した。
「…続き?」
「色々、美味しそうな物があったのに全然食べられなかったから…」
「あぁ、出店の食べ物ね。かき氷があって、焼きトウモロコシがあって…。あと、みたらし団子」
「それにたこ焼き!」
「あはは、たこ焼き好き?」
 おばさんが少し笑う。
「好き!初めて食べたけどすっごい美味しかった!」
「じゃぁ、お義父さんにプレート借りてこないとね」
「やった!…あはは、ごめんなさい。女の子が食い意地張っててはしたないですね。」
「子供は素直が一番」
 少し照れ笑い。おばさんも笑う。
「えっと…、じゃぁ少しわがまま言っていいですか?」
「もちろん!何でも言っていいわよ。」
 お願いばかりして、厚かましいなぁと思う。でもいいかな?
「あの…、また昨日みたいな可愛い服が着たいです…」
「いいわよ。明日はお休みだから高志さんに頼んであげる」
「ありがとうございます!また二人で可愛い服着てみたかったんです!!」
「なっ!!」
 おばさんが叫んだ。

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