「山の中でひとり」  第114話
976c0f1a25-1231655876.png  おばさんにビデの使い方を習った。
 一人でお風呂に入って身体を洗って、湯船でぼーっとしていた。
 お風呂から上がって、サトスのことをおじさんから聞いた。

 倒れた自転車の周辺を探っていると、ボロボロになった半裸のサトシ君を発見したそうだ。
 サトシ君は何者かに暴行を加えられて錯乱していた。
 取りあえずサトシ君を保護して、みんなで消防団の詰め所に運び込んだそうだ。
 そこで誰にやられたか聞いたら、私に川に沈められて殺されかけたと言った。誰も納得できなかった。
 だからあのパンツを見せて問い詰めたところ、それからは私がサトシ君を誘った、私に殺されかけたとしか言わなくなった。非道く錯乱していて、今は家に帰したそうだ。
 おそらく、先週にサトシ君を縛り付けた「何者」かが、この事態を見て、逆上してサトシを襲ったのだろうと言うことになった。

   一通りおじさんに聞いたところで、サトシ君のお父さんが訪ねてきた。
 彼は町内を裸足で謝りながらここまで来たのだった。もう足と額が血まみれだった。
 玄関で彼は額を地べたに付けて泣いて震えながら土下座した。
 彼は何度も謝りながら、非道いお願いかもしれないが、息子を警察につきだして欲しいと土下座した。
 忘れたいし、忘れたし、何もなかった。私は犬に噛まれたのだ。
 そう言って私はそれを断った。

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