「山の中でひとり」  第121話
045650d2b5-1232459246.png 「じゃぁ、お別れ?ですね」
 おじさんとタカヨシ君とお別れして電車に乗った。
 中年女性Aさんも同じ電車に乗ってきた。同じホームで電車を待っていたのだから当然だ。
 乗り換えの駅の売店で彼女は穴子弁当とお茶とお菓子を買っていた。
 そして、中年女性Aさんは乗り換えの電車で私の後ろの席に座った。すでにサングラスは外している。おばさんそっくりだ。
「おっ、穴子弁当ですか?」
 私の真後ろの席の人が中年女性Aさんに話しかけた。
「ええ。付け合わせが沢庵じゃなくて、奈良漬けだから買いました。あたりですね。」
「なかなか通ですねぇ。あそこの穴子弁当はかなり有名なんですよ。私も…、ほら。」
「あらあら」
「あそのこの弁当は湿気を取るためにわざわざ木を薄く切った弁当箱を使っていて…」
「うわっ、さめても美味しい!」
 和気藹々とした食事風景。中年女性Aさんの声もおばさんそっくりだった。いいなぁ穴子弁当…

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