「山の中でひとり」  第122話
63d5041863-1232717646.png  落ち着け…、落ち着け…。そう何度も言い聞かせた。
 あれはたまたま居合わせた、中年女性Aさんだ。断じておばさんな訳がない。おばさんは用事で出かけているはずだ。
 まさか、用事ってこれ?これなの?
 いやいや、そんな訳がない。落ち着け、落ち着くんだ…
「…おばさん?」
 耐えきれずに、おばさんの前に立っていた。
「あら、バレちゃった。やっぱり、こそこそするのは難しいわね」
「……………。いやぁ、偶然立ち上がらなければ、わからなかったなぁ」
「まぁ、いいわ。こっち来て、お弁当食べなさい。お弁当」
「あれ、娘さんですか?」
 おばさんのお向かいのおじさんが言った。
「親戚みたいなものかなぁ。息子の嫁ね」
「あははは、可愛いお嫁さんだ。丁稚羊羹食べる?」
 タイミングを逃してしまったので、お弁当とか丁稚羊羹とかを遠慮せず頂くことにした。

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