「山の中でひとり」 第122話
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落ち着け…、落ち着け…。そう何度も言い聞かせた。 あれはたまたま居合わせた、中年女性Aさんだ。断じておばさんな訳がない。おばさんは用事で出かけているはずだ。 まさか、用事ってこれ?これなの? いやいや、そんな訳がない。落ち着け、落ち着くんだ… 「…おばさん?」 耐えきれずに、おばさんの前に立っていた。 「あら、バレちゃった。やっぱり、こそこそするのは難しいわね」 「……………。いやぁ、偶然立ち上がらなければ、わからなかったなぁ」 「まぁ、いいわ。こっち来て、お弁当食べなさい。お弁当」 「あれ、娘さんですか?」 おばさんのお向かいのおじさんが言った。 「親戚みたいなものかなぁ。息子の嫁ね」 「あははは、可愛いお嫁さんだ。丁稚羊羹食べる?」 タイミングを逃してしまったので、お弁当とか丁稚羊羹とかを遠慮せず頂くことにした。
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