「山の中でひとり」  第123話
63d5041863-1232802620.png  最後の乗り換えをして、油断した。
 ついうとうとと眠ってしまった。

 それは簡単なお仕事だった。

 そこにいる彼らは社会を否定し、厳格な生活を保ち、周囲からの干渉を避け、質素に暮らし、そこを楽園と呼んでいた。
 彼らは常に外敵の存在に脅えていた。それに彼らが否定する社会システムの便利さも知っていたから、楽園には電気も電話線も通っていた。
 隔絶を望みながら、孤立をおそれ、自分たち以外を否定し全く許容しなかったから、次第に彼らは内側から壊れ始めた。
 エディカルと二人で、楽園に住んでいる人数や地形。建物の特徴を遠巻きに調べた。
 その楽園の人々の足取りは重く、質素ではなく貧しい。それに彼らの言う外敵から身を守るためか、みんな武器を持っていた。
 彼はまるで死地に向かう殉教者のような顔つきをしていたけれど、眼光はいたずらに炯々として不気味だった。
「楽園とは遠き日の落日」
 エディカルは彼らを見てそうつぶやいた。

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