「山の中でひとり」 第128話
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「このあたりのお土産って、なにがいいの?」 駅前のおみやげ屋さんでおばさんが言った。 「あぁ、それなら隣のおじいちゃんがインディアン印のリンゴタルトって作ってたから、買って上げてください」 「作ってたって、なんで過去形?」 「昔はおじいさんのリンゴ畑で出た傷物のリンゴを使って、お菓子工場と一緒に色々作ってお土産物として売ってたんですけど、何だか有名になって…」 「うわっ、うらやましい話ね。ウチは冬に高志さんが撃ってくる猪とか鹿肉とかの味噌漬けと毛皮で作った小物とか道の駅とかに卸してるけど、小遣い稼ぎ程度よ?」 「無駄に何でも出来る人ですから…。色々あってリンゴ畑は手放したんですが、商標とかは手放してないらしいです。ちょっとした副収入ですね。」 おみやげ屋さんを見渡す。 「へぇ、大した人ねぇ。でも何でインディアン印?」 「だって、アメリカから移住してきたインディアンだから…。あぁ、パッケージもおじいちゃんが描いた絵なんですよ」 おばさんはスゴく驚いていた。何だか不思議な感じ。 「海外実業家って言うのかしら?スゴい人ねぇ。でもなんか、インディアンの人ってどんな絵を描くのか想像できないなぁ」 入り口の所にインディアン印のお土産品コーナーを見つける。 「あぁ、これです。パッケージとか色々あるけど中身は一緒ですよ」 お土産を手渡す。おばさんはスゴく驚いていた。何だか不思議な感じ。 「えっと…、。インディアンの方よね?隣のおじいちゃんって…」 おばさんは箱を何回も見回して、神妙な顔をしてため息をついた。 「うん…。大事なところだからもう一度聞くけど、インディアンの方よね?隣のおじいちゃんって…。何て言うか…、高志さんが大喜びしそうなお土産ね」
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