「山の中でひとり」  第129話
76557d488d-1233837746.png  駅前のバス停。もうすぐバスが来る。
「それじゃぁ、ココで一旦お別れね」
「あの…、今まで本当にありがとうございました」
 お辞儀をしてから、少しよそよそしかったかと不安になる。
「子供が遠慮しないの!」
 おばさんは私の頭をわしわしとしながら笑った。
「いろいろ複雑なご家庭みたいだけどね、少しでもツラくなったら私の家に来なさい。私一人じゃ貴方のお話を聞くくらいのことしかできない。でも、私たちの家族なら、アナタ一人の面倒を見るくらいの器はあるのよ。」
 バスが来る。
「あの…、私の名前をまだちゃんと言ってなかったから…」
「今はまだ、弥生ちゃんのままでいいわ。だから、お手紙でも電話でもいい。連絡をしてね。その時に教えてちょうだい。約束よ」
 おばさんは最後に私を優しく抱きしめた。
「さぁ、胸を張ってお家に帰りなさい。」

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