「山の中でひとり」 第129話
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駅前のバス停。もうすぐバスが来る。 「それじゃぁ、ココで一旦お別れね」 「あの…、今まで本当にありがとうございました」 お辞儀をしてから、少しよそよそしかったかと不安になる。 「子供が遠慮しないの!」 おばさんは私の頭をわしわしとしながら笑った。 「いろいろ複雑なご家庭みたいだけどね、少しでもツラくなったら私の家に来なさい。私一人じゃ貴方のお話を聞くくらいのことしかできない。でも、私たちの家族なら、アナタ一人の面倒を見るくらいの器はあるのよ。」 バスが来る。 「あの…、私の名前をまだちゃんと言ってなかったから…」 「今はまだ、弥生ちゃんのままでいいわ。だから、お手紙でも電話でもいい。連絡をしてね。その時に教えてちょうだい。約束よ」 おばさんは最後に私を優しく抱きしめた。 「さぁ、胸を張ってお家に帰りなさい。」
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