「山の中でひとり」  第130話
1233867129559.png  おじさん、おばさん、タカヨシ君。駐在さん。サトシ君のお父さん。村の人たち。
 みんな優しい人たちだった。
 最後に出会えた人が、あなたたちで良かった。

 バスが山を登り始める。
 しばらくするとおじいちゃんが手放したリンゴ畑が見えた。
 おじいちゃんはいなくなった私を探して、探して…。探し当てた頃には蓄えをすべて無くした。
 あと3ヶ月、契約に縛られて会社にいなければならなかった私を買うために、リンゴ畑を手放してお金を工面した。
 日本に来て、必死で働いて、跡取りのいない荒れ果てたリンゴ畑を譲って貰って、少しずつ立て直していった大切なりんご畑だったのに…

 バス停は私の家を通り越してしばらく行ったところ。
 私の家にはお母さんの車がとまっていた。
 良かった。お母さんは山から家にちゃんと帰って来れたみたいだ。

   もうすぐ家に着く。
 日本に帰ってきてから、まだ一度もちゃんと家に帰れていない。懐かしい家。

 心残りは守れない約束をしてしまった事と、おじいちゃんの事。
 ごめんなさい。さようなら…

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