おじさん、おばさん、タカヨシ君。駐在さん。サトシ君のお父さん。村の人たち。
みんな優しい人たちだった。
最後に出会えた人が、あなたたちで良かった。
バスが山を登り始める。
しばらくするとおじいちゃんが手放したリンゴ畑が見えた。
おじいちゃんはいなくなった私を探して、探して…。探し当てた頃には蓄えをすべて無くした。
あと3ヶ月、契約に縛られて会社にいなければならなかった私を買うために、リンゴ畑を手放してお金を工面した。
日本に来て、必死で働いて、跡取りのいない荒れ果てたリンゴ畑を譲って貰って、少しずつ立て直していった大切なりんご畑だったのに…
バス停は私の家を通り越してしばらく行ったところ。
私の家にはお母さんの車がとまっていた。
良かった。お母さんは山から家にちゃんと帰って来れたみたいだ。
もうすぐ家に着く。
日本に帰ってきてから、まだ一度もちゃんと家に帰れていない。懐かしい家。
心残りは守れない約束をしてしまった事と、おじいちゃんの事。
ごめんなさい。さようなら…
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