ゆっくりと、音を立てないように玄関の戸を開ける。
久しぶりのお家の中はお線香の良いにおいがした。
靴を脱いで持つ。
お母さんは一番奥にある台所にいるようだった。
静かに仏間に回り込む。
お母さんを玄関におびき出すために、戸に向かって靴を放り投げる
安普請の戸は靴が当たって、大きな音を立てた。
立て続けにもう片方も投げた。また大きな音を立てた。
「誰です?」
足音と共に台所から声が聞こえた。
その声は、おじいちゃんだった。
そこに存在することは、あり得ない声。
パニック。
廊下から足音が近づいてくる。
計画通り、とおりすぎる時に脇腹を刺すべきだ。
いやダメだ。
私の中で、私会議が踊る。
足音が通り過ぎた。
早急に次の手を打たなければならない。
あたりを確認したとき、仏壇にお母さんの写真が飾られていることに気が付いた。
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